信じられない動きをする推力偏向ノズル搭載のジェット機

推力偏向ノズルは、ジェットエンジンの排気ジェットの向きを変えることによって、推力の向きを偏向させることができます。

これを使用すれば、補助翼や方向舵に頼ること無く機体の姿勢制御が可能になり、フライ・バイ・ワイヤによる制御と組み合わせると、運動の幅を増すことが可能になります。

スラスト・ベクタリング (thrust vectoring, TV,又はthrust vectoring control,TVC) またはベクタード・スラスト (vectored thrust, VT) と呼ばれることがあります。

Su-57(ロシア)

3次元推力偏向ノズル装置を搭載しています。

ピッチ方向に16度、ヨー方向に20度に偏向可能なノズルを持ち、高い機動性を実現しました。

また、同様のノズルがSu-57よりフィードバックを受けたSu-35にも搭載されています。



F-22(アメリカ)

2次元式のパドル式推力偏向装置を装備しています。

ピッチ方向に±20°まで偏向可能なパドルを備えています。

これにより運動性が高まり、Jターンやコブラ、クルビットといった機動も可能です。




J-10B(中国)

珠海航空ショーでJ-10B検証機に推力偏向ノズル型エンジンWS-10Bを装備し、展示飛行を行ってコブラやフック等の飛行を行い観衆を驚かせました。

WS-10Bの推力偏向ノズルは、先端部が15枚の独立したノズルで構成され、その内側にさらに可動式ノズルが配置されている。まず内側のノズルを稼働させ、それに続いて外側ノズルを内側のものより大角度で稼働させるとみられています。




-31(アメリカ、ドイツ)

アメリカがドイツなどと共同で開発し、ロックウェルが製造したパドル式推力偏向装置を備えた実験機です。

パドル式は3枚のパドル(板)によって推力偏向ノズルより簡便な動作でピッチ方向とヨー方向に推力を偏向することができます。




-2(日本)
日本の防衛省技術研究本部が三菱重工業を主契約企業として開発している先進技術実証機です。

双発機でX-31と同様に各3枚のパドルによって推力偏向を行います。

残念ながら、派手な運動性展示飛行試験などはありませんでした。




MAST Asia 2019に参加している防衛装備庁は、日本が開発した次期戦闘機用エンジン「XF9-1」に装着可能な推力偏向装置「XVN3-1」のモデルを展示し紹介しています。

防衛装備庁が今回展示した「XVN3-1」は、ノズル式の推力偏向装置で、最大20度の角度で推力を偏向することが出来るといいます。

防衛装備庁の担当者は、来年2020年にはXF9-1に、推力偏向ノズルの「XVN3-1」を統合し、テストを行う予定だと話しています。