名古屋市の補聴器の公的助成について


93歳になる義父が、最近とても耳が遠くなり、会話がままならぬようになりました。

去年オムロンの補聴器AK-10を、特に聴こえの悪い右側だけ購入して、使ってもらっているのですが、さらに難聴が進行しているようです。

妻が言うには、補聴器をつけている右側も、かなり大きな声で言わないと、よく聴こえていないようです。

耳が聴こえないと、認知症になりやすいようなので、とても心配です。

補聴器購入に際し、補助金(公的助成)も受けられるようなので、名古屋市について調べてみることにしました。


中程度の加齢性難聴は公的助成が受けられない


「歳を取って耳が遠くなった。補聴器を買いたいが高くて買えない」。

名古屋市で、中程度からの加齢性難聴者に対する補聴器購入助成制度を求める署名運動が広がっているそうです。

名古屋市南区の耳鼻科の医師は「加齢性難聴は、60代後半で3人に1人、75歳以上で7割以上との報告もあり、誰でも起こる可能性がある」と指摘しています。


実際の調査では、難聴者は、日本では65歳以上で約1500万人と推計されています。

また、日常生活に支障をきたす程度とされる難聴者は、70代の男性で5~6人に1人、女性で10人に1人程度との調査結果が報告されています。

「踏切の警報機が聞こえず、電車にはねられる寸前だった」、「台風や地震の緊急警報が聞こえない」と慌てて診察に来た人もいるそうです。

補聴器を勧めても躊躇(ちゅうちょ)する人が多い」と話します。

最大の要因は補聴器の価格が片耳あたり数万円から数十万円と高額なことです。

補聴器を販売している眼鏡店の店員は「年金暮らしの人が多く『安い補聴器』を求める人が多い」といいます。

補聴器メーカーの職員は「低価格の補聴器は必要な人の声だけでなく周りの雑音も拾う。人によって難聴の状態が違うので、調整と訓練が必要になり、高額になる。ぜひ助成制度を」と話します。

現在は助成を受けるのに障害者手帳が必要で、重度の難聴者が対象。片耳だけでは受けられません。

障害者手帳を持たない高齢者に助成している自治体は、県内では北名古屋市だけです。

70歳以上で、医師が身体障害6級相当と診断した人、所得制限なし、補助は購入費6万円以上の場合3万円などとなっています。

名古屋市では2019年6月議会で、日本共産党のさいとう愛子議員が公的助成の創設を求めました。

高齢者の声を紹介し、日常生活を不便にするだけでなく、うつ病や認知症の危険要子にもなると指摘しました

東京都江東区などの助成制度を紹介し、「高齢者の社会参加、交流促進で認知症予防にもなる」と助成制度の創設を強く求めました。

2017年に開かれた認知症予防の国際会議(アルツハイマー病協会国際会議)では、認知症の修正可能な9つのリスク要因の一つに難聴があげられ、難聴により脳に入ってくる情報が少なくなることが脳の機能低下につながり、うつ病や認知症につながる、とも指摘されていると、さいとう愛子議員は市議会で述べました


名古屋市の難聴を含む聴覚障害による身体障害者手帳の交付


難聴を含む聴覚障害による身体障害者手帳の交付対象者は、両耳の聴力レベルが70㏈以上、または一方の耳の聴力レベルが90㏈以上、かつ他方の耳の聴力レベルが50㏈以上とされており、名古屋市では2019年3月末現在6,059人、うち65歳以上は3,998人です。

両耳の聴力レベルが40㏈から70㏈未満の場合などの中等度の難聴者は、身体障害者手帳の交付対象とされていないため、人数は不明です。



身体障害者手帳の発行

身体障害者手帳は身体障害者のための制度やサービスを利用するための手帳で、申請により交付しています。

聴覚機能に障害がある方も対象になり、名前や住所のほか障害の種類や程度(2級から6級)が記載されます。

受付は、区役所福祉課・支所区民福祉課で行われています。

申請には、指定医師診断書が必要となります。

主治医が指定医師になっているか、まずは区役所福祉課に尋ねる必要があります。

また、申請時には写真(4×3cm)や印鑑、マイナンバーが確認できるものも必要です。

以上が公告ですが、聴覚障害で障害者手帳を交付してもらう時には、福祉課などに問い合わせて申請の旨を伝え、その後医師に診断書を書いてもらいます。

印鑑や証明写真、マイナンバーが確認できるものなど必要書類を診断書と一緒に申請して、審査の結果を1か月半程度待ちます。

身体障害者手帳の等級表

加齢が原因となる難聴を老人性難聴と呼んでいますが、老人性難聴は障害者手帳の交付対象です。

老人性難聴も含む難聴での障害者手帳の交付対象基準は、両耳で70デシベル以上です。

70デシベルは大声、90デシベルは怒鳴り声レベルと言われています。

つまり70デシベルの音が聞き取れない状態では日常的な会話も難しく、生活に不便を感じることも多いため、障害者手帳の交付とされます。

片耳が90デシベル以上、もう片方が50デシベル以上も対象です。

上記で紹介した障害者手帳の基準は6級で、さらに聞こえが悪いと4級、3級と級数が上がっていきます。

なお、日本は難聴での障害者手帳交付基準がやや高く、海外では40デシベル以上で障害者手帳交付基準となる国もあります。


聴覚障害には2級、3級、4級、6級の等級があります。

指定の耳鼻科で、聴力検査または語音明瞭度検査を行い、その結果で診断書を発行してもらい、診断書と必要書類を居住地の市町村障がい福祉担当課に提出します。

県の審査を経て、該当する等級の身体障がい者手帳が交付されます。

級別 障害の程度
1級 該当なし
2級 両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう)
3級 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの)
4級 1 両耳の聴力レベルが80デシベル以上のもの(耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの)
2 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50%以下のもの
5級 該当なし
6級 1 両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40cm以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの)
2 一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの



補聴器の支給 

1.指定の耳鼻科医にて補聴器支給の意見書を交付してもらいます。


2.自立支援法対応の補聴器専門店に補聴器の見積書を書いてもらいます。

3.下記の3つの書類と耳の障がい者手帳を一緒に、障がい福祉担当課に提出し、補聴器の申請を行います。

(1)申請書(障がい福祉担当課) 
(2)補聴器支給の意見書(指定の耳鼻科医)
(3)見積書(自立支援法対応の補聴器専門店)

4.補聴器支給の適否について判定後、補装具(補聴器)費支給券が郵送されます。

補装具の申請は障がい手帳の等級や補聴器、日常生活用具などで金額は変わるのですが、利用者は1割負担(所得に応じて変わります)で購入もしくは、さらに高額の補装具を購入する場合は、その金額を補助として差額を利用者が支払う制度となります。

5.補装具(補聴器)費支給券と印鑑を、指定の補聴器専門店に持参し、補聴器を受け取ります。

長い道のりですが、福祉で補聴器の申請がおりると、5年に一度は補装具費の再交付も受けれます。

そして補聴器が故障したときも修理代金なども補助してくれます。

ただし紛失、破損、盗難などは対応ができないことがあるので要注意です。


補助金で購入できる補聴器

補聴器の種類は主に耳かけ形補聴器になります。

耳あな型オーダーメイド補聴器も支給される対象になりますがほぼ出る事は無く、仕事上でヘルメットの着用、マスク着用などの理由がある方には支給される事があります。

難聴の程度により判定された障害等級からそれに応じた補聴器の基準の価格が定められています。

補助金で購入できる補聴器は総合支援法取り扱いの補聴器で高度難聴用耳かけ型と重度難聴用耳かけ型のどちらかが一般的です。


補助金で買える福祉の補聴器は高度難聴用で片耳43,900円で重度難聴用で67,300円です。
補助金で購入できる補聴器は比較的性能は最低限の会話を補えるようになっています。

雑音の抑制なども全くダメな訳でもありませんが価格帯の上がる、一般的な補聴器に比べるとどうしても差があります。

補聴器の性能や快適性は価格により左右されます。
補聴器の補助金制度で理解しておかなければならないのは現金が補助される訳ではないということです。

補聴器購入の金額が支給されるのですが、現金での受け渡しができず補聴器との引き換えになります。

補助金の金額は全額出ることもあるのですが、自己負担額がある場合もあります。

自己負担額は原則1割りの負担ですが、所得に応じて例外も出てきます。


各種割引や補聴器支給

障害者手帳を持つことでのメリットは税金控除、交通費割引などの生活的な面の支援から補聴器支給まで多岐にわたっています。


障害を持っていることが原因で暮らしにくい点を改善するために、このような割引制度などが設けられています。

等級程度、そして各自治体の制度によって多少の違いはありますが、何らかの金銭的な割引は受けられます。


車の運転などにデメリット


障害者手帳を持つことのデメリットには、車の運転などが難しくなることが挙げられます。

聴覚障害者は完全に車の運転が制限されることはありませんが、警音器の音が聞こえるかどうかのチェックの他車種の限定、特定後写鏡の設置など条件があります。

もし高齢で自動車免許証を返上している場合は、当然デメリットになりません。

ローンや就職に関しても不利となりがちですが、老人性難聴の場合はすでに退職している人も多いので、デメリットは少なめです。


耳あな型補聴器の申請

一般的に福祉で助成金がおりるのは耳かけ型タイプと箱型タイプの2種類となっています。

耳あな型オーダーメイド補聴器を希望するは指定医の許可が必要になります。

耳あな型補聴器を申請するには、耳あな型でなければいけない理由が必要です。
医師に判断された場合のみに適応されます。
例えば仕事で常にヘルメットなどの着用があり耳かけ型補聴器を使うのが難しいケースや、多汗症により耳かけ型タイプであると故障の頻度が高いなどです。

自分のこのみだけで耳あな型にすることはできません。
先生に説明するのが難しい場合は、補聴器専門店のスタッフに耳あな型で申請した理由をよくご説明します。

補聴器店のスタッフもそれを聞いて、先生宛に紹介状(情報提供書)を渡すときに理由を記載してくれます。
耳あな型オーダーメイドは学生や未成年は優遇されますが、社会人になると申請のハードルは高いです。

老人性難聴に骨伝導の補聴器

老人性難聴の治療は、基本的に回復は困難とされているため、補聴器で聴力を補う方法がとられます。

しかし、老人性難聴は感音性難聴も合わせて発症している場合が多いために補聴器の効果がそれほど得られないこともあります。

骨伝導の補聴器というものがあります。

普通の補聴器は音を増幅させる方法で音を聞き取りやすくするものなのですが、骨伝導の補聴器は骨に振動を与え、その振動が内耳に伝わることで音が聞こえるようになるという仕組みです。


骨伝導補聴器のメリットとして、雑音などが増幅されない、音量が大きくなりすぎないなどがあり、音質もわりにクリアであることが多いため、音を増幅させるものより聞き取りやすさが上とうことがあります。

デメリットとしては、サイズが大きいということです。

老人性難聴は感音性難聴と伝音性難聴が合わさっていることが多いです。


したがって伝音部分に損傷が大きい人は骨伝導補聴器を使う意味はあるかもしれませんが、感音部分に損傷が大きい人はあまり意味がないかもしれません。


骨導式眼鏡型の申請

骨伝導型補聴器は外耳や中耳を経由せず、内耳に音を伝えることができるので、外耳や中耳に障害があっても、その影響がなく音を聞くことができます。

内耳に障害が起きてしまった感音性難聴には効果がありませんが、外耳や中耳に障害が起きた伝音性難聴には聞こえの改善が期待できる補聴器です。

その為あまり適応する人がいないので申請はごくまれです。

骨伝導式を申請するには伝音性難聴であること、骨導閾値が適応内であることです。

通常の耳かけ型補聴器ではなく、骨導式でなければならない理由があれば申請することができます。

適応されるケースとしては小耳症などが骨導式眼鏡型に該当します。

小耳症とは耳の一部があるタイプは「小耳症」、耳が完全に欠損しているケースは「無耳症」とよびます。

耳の穴がふさがっているケースがあり(外耳道閉鎖症)伝音性難聴での聴力低下があります。

約6,000から10,000人に1人の確率で発症します。

骨導式メガネ型補聴器は取扱メーカーが非常に少ないです。