美味しいアップルパイ

洋菓子で好きなもののうちで、アップルパイがあります。

よくアメリカのテレビ等では、家庭でも良く作られるようですが、日本ではケーキの一種として洋菓子店で買うことが多いようです。



アップルパイとは

アップルパイ(英: apple pie)とは、砂糖煮にしたリンゴを詰めてオーブンで焼いたパイのことです。 

アップルパイは国により形状や味が様々であり、オーストリアではパイ生地でロールケーキのように巻かれ、アプフェルシュトゥルーデルと呼ばれます。

日本におけるアップルパイのステレオタイプ的な円形に成形され、パイ生地に包まれたアップルパイはアメリカのものです。 

アップルパイにアイスクリームを添えて供されるものは、アップルパイ・ア・ラ・モード(apple pie à la mode)と呼ばれます。



アメリカのアップルパイ

アップルパイはアメリカを代表するデザートで、「アップルパイのようにアメリカ的だ ('As American as apple pie') 」という慣用句があり、日本人にとっての味噌汁同様に「おふくろの味」を連想させます。



ヒットしたアメリカのコメディ映画(青春映画)にも『アメリカン・パイ』という作品があり、英語学習用の教材にもケイ・ヘザリ『American Pie』シリーズ(日本放送出版協会)があります。

いずれもアップルパイを想定して名称がつけられています。 

アップルパイは国民的アイデンティティの一部であり、愛国心の象徴でもあります。

2008年度にアメリカ人を対象に行われた好きなパイについての調査では、19%の方がアップルパイと回答し、パンプキンパイを抜いて1位となっています。

ちなみに、5月13日はナショナル・アップルパイデー(National Apple Pie Day)に制定されています。

アメリカでのアップルパイの歴史は、イギリスからやってきたピルグリムがリンゴの種を蒔いて育て、収穫したリンゴでアップルパイを作ったことにさかのぼります。

アメリカ東海岸から西へリンゴの種を蒔きながら移動したジョニー・アップルシードの伝承も有名です。


リンゴは環境への適応が比較的強く、生水が危険で飲めず、小麦が貴重品だった当時はリンゴは重要な飲料水と炭水化物の摂取源であり、貴重な小麦を嵩増しできるアップルパイは貴重な主食だったと言います。

感謝祭には、七面鳥の丸焼きやコーンブレッドの他にアップルパイを出すことが多いです。 

19世紀にアメリカ西部に乗り出した開拓者たちの間で、リンゴを使わずにアップルパイのようなものを作る方法が考え出されました。

これはモックアップルパイ mock apple pie と呼ばれて、これをナビスコのリッツクラッカーを使って作るレシピが1930年代に広められました。

この菓子は本物のアップルパイには及ばないものの、レモンやシナモンを使っており、リンゴを使って作ったものと近い味を出すように作られています。

アップルパイという名称こそ付いていますが、クッキーなどをパイ生地の代わりにするレシピとは別物です。


アップルパイの種類

一口にアップルパイと言っても、円いホールタイプからスクエア型・一人一個食べられるサイズのものまで種類は様々です。

見た目もまるっとアップルフィリングを生地で覆い隠しているものから、網目状に生地をかけて隙間からリンゴが覗いているもの・細かく砕いたビスケット状のものが載っているものなど様々です。

世界には形状や材料・製法によって色々なタイプのアップルパイが存在していますが、使用する生地によって大きく折りパイと練りパイの2つに大別することが出来ます。


折りパイ

日本でパイと言われて連想されることが多いのが、ヨーロピアン式とも言われている“折りパイ”と呼ばれる方法で作られたパイ生地です。

冷凍パイシートなどもこの“折りパイ”タイプの生地がほとんどで、薄くパリパリの生地が何層にも重なっていることが特徴です。

イギリス英語ではPuff Pastry、アメリカ英語ではFlaky Pastryと呼ばれています。

呼び名の通り“折りパイ”は小麦粉に水やバターなどを加えて練った生地を伸ばし、その中央にバターの塊をのせて折り込む(包み込む)ことで作ります。

バターを包んだ生地を平たく伸ばし、生地を三つ折りにして休ませる→再び伸ばして三つ折りにする→休ませて伸ばして三つ折り…という流れを6回くらいやります。

よく「パイ作りは時間も手間もかかって大変」と言われますが、このパイは“折りパイ”の作り方を指していると思われます。


練りパイ

練りパイは折りパイと比べると作る工程が少ない事が特徴で、呼び名のとおり生地を作る時に「バターも練り込んでしまう」という作り方です。

ミルフィーユ層になっていることでパリパリ&サクサクした食感を楽しめる折りパイに対して練りパイの方は一枚生地、クラッカーに近いサックリ感が特徴です。

塩のみか砂糖を入れるかでも変わってきますが、基本的に“練りパイ”を作る時は粉と水分が結合しないようにすることが特徴です。

小麦粉とバターをすり合わせるようにして混ぜてから水分を加える、もしくはバター・砂糖・卵を混ぜ合わせてから小麦粉を加えることで、グルテンの粘りが抑えられる+熱でバターが浮き上がって独特の触感を作っています。

こちらの作り方のパイ生地はフランス語でパート・ブリゼやパート・シュクレとも呼ばれますが、世界的にはアメリカンタイプもしくはアメリカン・パイで通じることが多いです。

呼び名の通りアメリカのパイ料理に多用されている生地ではありますが、フランスのお菓子やヨーロッパのアップルパイにも使われています。

タルト・タタンやタルト類にもこちらの練りパイ生地が多く使われています。


歴史
アップルパイという食べ物についての最も古いレシピは、イギリスで1381年にリチャード2世王の料理人が記したとされる『The Forme of Cury』というレシピ本です。

14世紀のイギリスではミートパイが大人気であり、そのアレンジとしてアップルパイが作られたのではないかと考えられています。


まだ当時はアップルパイとは呼ばれていませんが“For To Make Tartys in Applis”として記載されているものが最古のアップルパイレシピとされています。

当時はまだ砂糖の入手が困難であったことから、この最古のアップルパイレシピでは砂糖を使用しません。

しかもコフィン(cofyn)というのは小麦粉を固めて容器状にしたものですが、食べることを想定しないものだったという見解が主になっています。

砂糖が登場して料理の幅が広がった16世紀半ばに出版された女性のためのレシピ本『A Proper newe Booke of Cokerye』に“To make pyes of grene apples”として記載されているレシピでは、リンゴ以外の果物の記載がなくなり、サフランとバター・シナモン・生姜・砂糖が使用されています。

お祭りの時のお祝い料理としてもアップルパイが食べられていたようです。

エリザベス1世もアップルパイを好んだという逸話が伝えられています。

現在でもBritish Pieと呼ばれているような、伝統的なイギリス式のパイは深皿に入れて焼くのが定番です。

容器に沿わせるように生地を押し付けた中に煮リンゴを入れて生地で蓋をして焼きます。


オランダのアップルパイ

アップルパイの歴史が古い国としてイギリスと共に名前が挙がるのがオランダです。

オランダ最古とされるアップルパイのレシピは1514年に料理本『Een notabel boecxken van cokeryen』に登場するものです。

この料理本に記載されているアップルパイのレシピはイギリスで作られたものからアレンジされ、リンゴに生地を被せて焼いた後にトップクラストを切ってシナモン・ナツメグ・生姜・カルダモンなどのスパイスを加えた蜂蜜や砂糖と共にスプーンでかき混ぜ、もう一度オーブンで焼くというものだったそうです。

このレシピは現在のアップルパイにより近いものと評されています。 

後の17世紀に発刊されたレシピ本『De Verstandige Kok』になるとアップルパイだけで6種類のレシピが掲載されており、18世紀にかけてアップルパイはオランダの食文化に欠かせないものとなっていきました。

加える香辛料や製法の違いを更に細分化すれば、17~18世紀ころのオランダには多種多様なアップルパイ・アップルタルトが存在していたと推測されています。

しかし、まだ当時はアップルパイ=上流階級の人々のためのものと言う部分が大きかったのだそうです。

オランダではアップルパイとコーヒーをセットで食べることが多いそうですが、これも当時の上流階級の人々の流行から生み出された伝統であるようです。

オランダ式アップルパイとしてはリンゴの上にかけるトップクラストに網目模様が入ったラティストップ・パイ(lattice-top pie)と、細かく砕いたビスケット状の生地をリンゴの上に敷き詰めたクランブルトッピング・パイ(crumble topping pie)の2つのタイプがあります。

網目模様のラティストップ・アップルパイは日本でもオーソドックスと言って良いくらいに見かけます。

日本人にとってはアメリカンな印象を持っていたりしますが、アメリカで「Dutch apple pie(オランダ式アップルパイ)」と言えばクランブルタイプのものを指すのが一般的なようです。

フランスのタルト・タタン

一般的なアップルパイとは別物ですが、アップルパイの一種にはフランス菓子のタルト・タタン(Tarte Tatin)も数えられています。

フランスで伝統的に食べられてきたお菓子のような印象のあるタルト・タタンが作られるようになったのは1880年代です。

19世紀もほぼ終盤ですから、アメリカのアップルパイと同じかそれ以上に歴史の浅い種類であると言えます。

タルト・タタンの考案者として定説になっているのは、パリの南にあるラモット=ボーヴロンという町で“Tatin”というホテルを営んでいたステファニー・タタンと言われています。

彼女はホテルで提供する調理のほとんどを担当しており、アップルパイも定期的に作っていました。

しかし、ある日ステファニーはバターと砂糖で炒めるリンゴを時間を間違えてしまい、焦げたような匂いがしてきたことで慌てます。

彼女は焦げかけてしまったリンゴをなんとかしようと、リンゴを炒めていた鍋の上にタルト生地をのせてそのままオーブンに入れたと伝えられています。

生地が焼けた頃合いを見計らってオーブンから鍋を取り出し、お皿の上にひっくり返すようにして出してみると良い具合になりました。

この逆さまのタルトは大変出来が良く、お客さんに出してみると大人気となりホテルの名物料理になりました。

作り方も周辺地域に伝わり、世界で最も有名なレストランとも称されるフランスの超高級店Maxim’s(マキシム)の経営者ルイ・ヴォーダブルの耳にも届くまでになりました。

彼はこのタルトを自分のレストランのメニューに加え、彼のレストランMaxim’sが有名になるのと合わせてタルト・タタンも世界的に知られるフランス菓子の一つとなっていったそうです。

アップルパイの失敗から生まれた菓子はホテルの名物へ、そして国を代表するお菓子となりました。


日本におけるアップルパイ

りんごの生産量が日本一の青森県弘前市ではアップルパイを用いたイベントが行われています。 

巨大アップルパイでギネスに挑戦する会 「りんごのまち弘前」PRを目的に、巨大アップルパイでのギネス認定を目指しています。

アップルパイの食べ比べ 弘前市には、地元産素材使用のアップルパイを焼く店が多数存在し、毎週土日にはアップルパイの食べ比べがルネスアベニュー内で行われていましたが、ルネスアベニューが2017年3月31日をもって閉店したことにより、現在は実施されていません。