マーフィーの法則


マーフィーの法則はよく聞きますが、少しおかしくて、少し悲しい「なるほどなっとく名言集」であると思います。

マーフィーの法則に対する教訓は、「常に最悪の事態に備えて、心構えを作っておくべし」ということでしょうか。

マーフィーの法則とは

マーフィーの法則(マーフィーのほうそく、英: Murphy's law)とは、「失敗する余地があるなら、失敗する」「落としたトーストがバターを塗った面を下にして着地する確率は、カーペットの値段に比例する」をはじめとする、それが事実かどうかは別として、先達の経験から生じた数々のユーモラスでしかも哀愁に富む経験則をまとめたものです。

多くはユーモアの類で笑えるものですが、精神科医や学者の中には、認知バイアスのサンプルとして捉えることが可能なものも少数あるとの見方もあります。

ビジネス本、自己啓発本として出版もされました。

概要

マーフィーの法則とは、"If anything can go wrong, it will."(「失敗する可能性のあるものは、失敗する。」)に代表される「経験則」や、「法則」の形式で表明したユーモアです。

社会学者の小池靖は、ニューソート思想のジョセフ・マーフィーの著作のパロディであると述べています。 

日本でも1970年代前半に小規模な流行があり、1980年頃にはコンピュータ関係者を中心に知られるようになり、1990年代前半に広く流行しました。

アメリカ空軍から広まったものとされますが、原形はよく知られている形とは少々異なっています。 

一面では「高価なもの程よく壊れる」に代表されるような自虐的悲観論を具現化したものと捉えることができますが、その一方で「常に最悪の状況を想定すべし」という観念は今日、システム開発、労働災害予防、危機管理、フェイルセーフなどの分野で現実問題として重要視される考えとなっています。 

1977年に出版された「マーフィーの法則」よりはるか以前に「常に最悪の状況を想定すべし」を警鐘したものとして1929年11月19日に出版された論文に由来する「ハインリッヒの法則」がありました。

ハインリッヒの法則(Heinrich's law)は、労働災害における経験則の一つで、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというものです。

ハインリッヒの法則により、災害防止のための事前の環境整備が進み、多くの事故が免れたと言われています。


由来

「マーフィーの法則」の「マーフィー」はエドワード・A・マーフィー・ジュニアに由来します。

彼はアメリカ空軍による急減速に関する研究プロジェクト「MX-981」に関わっていました。 

MX-981プロジェクトはこの法則の名前の原点としての伝説の他、プロジェクトリーダーのジョン・スタップ自らの志願により人体を使った実験が行われたことでも知られるように、トラブルが大きな危険につながる研究でした。 

アーサー・ブロックに、ジョージ・E・ニコルズから寄せられた手紙の内容に基づく、以下のようなエピソードが伝えられています。 

1949年、エンジニアのマーフィーは、空軍研究所からエドワーズ空軍基地に来て、strap transducer(加速度計)に発生した異常を調べ、ひずみゲージのブリッジにあった(誰かの)配線間違いが原因であるとつきとめました。


その際に、"If there is any way to do it wrong, he will"(「いくつかの方法があって、1つが悲惨な結果に終わる方法であるとき、人はそれを選ぶ」(アスキー出版『マーフィーの法則』(1993)、p. 270 の訳文)、"he"は「間違えた誰か」を指している)と言った、といいます。 

数週間後に、プロジェクトリーダーのジョン・スタップ少佐(当時)が、プロジェクト外の人物も含まれる場でこれについて紹介したのが、プロジェクト外にも広がったきっかけとされます。

その結果、この「法則」は軍部内に広まり、各種技術雑誌から一般雑誌・新聞の話題へと広がって行きました。


そして1977年には『Murphy's Law and Other Reasons Why Things Go WRONG』が出版され、これは全米のベストセラーにまでなり、いまなおウェブサイトや単行本、シンクタンクなどで話題を賑わしている、というものです。 

マーフィーの法則の出版

マーフィーの法則の出版は、ジョーク集として、一般の人に広く受け入れられました。 

マーフィーの法則をまとめた書籍として、『マーフィーの法則』(1993年刊)と『21世紀版 マーフィーの法則』(2007年7月刊)があります。

後者は前者から優れた法則のみを残し、新法則を膨大に追加した原文(英語)併記の最新版です。

日本での「マーフィーの法則」の流行

日本では1970年代前半の石油ショックの頃に(後の1990年代の流行と比較して)小規模な流行がありました。

当時はイギリス式に「Sod's law」(不運の法則或いはショウガナイの法則)とも呼ばれました。

また、1981年の時点で『生きるにも技術がいる-人生工学の発想』にて紹介されていた例があり、1988年には『コンピュータ大辞林』で紹介されているなど、技術者など一部で知られていました。 

1993年7月には、"The Complete Murphy's Law" の訳本『マーフィーの法則』が出版されました。

同書のベストセラー化で、一般にも広く知られるようになり、家庭や学校や職場や地域でも「〜の法則」遊びが流行しました。

1990年代の日本での流行当時は、各々未曾有の政治的・経済的転換点に見舞われ、そこからの先行きが不透明な時代背景がありました。

また、深層心理学の世界では、「 挨拶をトチリそうだと思っている人は本当にトチる」のように、人は自己暗示などによって思わぬ行動に出てしまうことがあることを多湖輝は指摘しており、青木智子もユングの「トリックスター理論」から分析を試みています。 

「マーフィーの法則」の例

「起こる可能性のあることは、いつか実際に起こる。」

「うまく行かなくなり得るものは何でも、うまく行かなくなる。」 

「何事であれ失敗する可能性のあるものは、いずれ失敗する。」 

「何か失敗に至る方法があれば、あいつはそれをやっちまう。」 

「作業の手順が複数個あって、その内破局に至るものがあるなら、誰かがそれを実行する。」

「洗車しはじめると雨が降る。雨が降って欲しくて洗車する場合を除いて。」

「いちど認めた例外は、次からは当然の権利となる。」 

「機械が動かないことを誰かに証明して見せようとすると、動きはじめる。」 

母親は「こんな日もあるさ」と教えてくれたが、こんなにたくさんあるとは聞いていない。 

「人生で楽しいことは、違法であるか、反道徳的であるか、太りやすい。」

乗り物

「満員の時、自分の立っている前の席だけが空かない。 」


「自分が席に座った時、疲れている時ほど目の前にお年寄りの人が乗り込んでくる。」 

「切符を買う時、自分の並んだ列がいつも遅い。」

「あわてて飛び乗った電車は、反対の方向へ行く。」 

「バスは、いつもは予定時刻に来ないが、自分が予定時刻に遅れた時に限って、定刻にやって来る。」 

「バスは、自分が急いでいる時ほど、渋滞にまき込まれる。」 

「20分ごとに来るバスに乗るための平均待ち時間は15分である。」

テレビ

「見たい番組は家を留守にしている時に放送される。」 


「ビデオに撮ってまで見たい番組は、必ず野球中継が延長する。」 

「面白そうな番組は、放送が終了してから新聞の番組欄で見つけることができる。」

試験

「試験開始直前に覚えた部分は試験に出ない。」 


「ヤマは外れ、勉強しなかったところに限って出題される。」 

「択一問題は最後に残った2つの候補のうち、選択しなかったほうが正解である。」

「解答欄の間違いに気づくのは、問題を全部回答した時である。」 

「計算間違いに気がついて、念のためにもう一度計算し直すと、第3の答えを導き出してしまう。」 

「試験時間は問題を解くのに必要な時間よりいつも5分短い。」 

「試験終了後、部屋を出てすぐに、わからなかった問題の解答を思い出す。」


「傘を持って家を出た日に限って、雨が降らない。」 


「傘を持たなくても大丈夫だろうという判断は、たいてい後悔する。」 

「天気予報の雨の予報は、傘を忘れた日に限って的中する。」 

「傘を置き忘れてしまう確率は、傘の値段による。」

コピー

「自分が出力しようとすると、プリンタは故障する。」

「プリンタが故障する確率は、出力しようとする書類の重要度に比例する。」 

「自分が出力している時に限って、紙切れが発生する。」

「紙詰まりを直すと、トナー(インク)が切れる。」 

「コピー機にある紙の枚数は、いつもコピーする枚数より1枚少ない。」 

「普通にコピーする時、裏紙は裏表が逆にセットされている。」 

「両面コピーをする時も、裏紙に出てしまう。」 

「会議で使用する資料をコピーしようとする時、コピー機は壊れている。」

「コピー機が直るのは、会議が始まって15分後である。

「会議が15分遅れて始まる時、コピー機が直るのは15分遅れる。」

仕事

「よし!完璧!と思っていた書類は提出する時になってミスが見つかる。」 


「机の上のお茶は、いつも最も重要な書類のほうに向かってこぼれる。」 

「お客様からのトラブルコールは昼休みの5分前にかかってくる。」 

「仕事にかかる時間は、その見積もり時間の2倍である。」 

「仕事の進捗(進み具合)は90%を越えると極端に悪くなる。」 

「電話は、席をはずした時にかかってくる。」 

「会議(ミーティング)は定刻の15分後から始まり、定刻をはるか越えて終わる。」

「大事な予定がある日に限って残業になる。」 

PC

「USB端子を逆に入れようとしてしまう確率は90パーセント以上 」


「LANケーブルは長すぎるか短すぎる。よって、ちょうど良い長さのLANケーブルは存在しない 」

「パソコンや周辺機器は保証書を紛失した直後に故障する 」

「買って間もないiPhoneほど高確率で地面に落下する 」

「iPhoneを買うと高確率で新しいiPhoneが発表される 」

「スマホにかかってきた電話が大切なものほど、指が濡れていて出ることができない 」

「ネット通販で注文を確定した直後は、もっと安いサイトを見つける確率が高まる」 

「サイトの[よくある質問]には、あなたが求める質問も答えもない」

その他

「あなたの好きなチームにトレードされてきたスーパースター選手は、すぐに目立たなくなる。あなたの好きなチームがトレードに出した役立たずの無名選手は、たちまちスター選手になる。」 


「急いでいるときに限って何かと信号が赤になる。」 

「一つの問題が解決すると、それが原因で新たな問題が発生する。」 

「全ての問題は、より大きな問題とだけ交換することが出来る。」

「どうしても欲しいものは、手に入らない。」

「人は誤解により友人になろうとし、理解により離れていく。」 

「どうでもよいときに絶好調となる。」

「探していない物は、必ず見つかる。」

「落としたトースト」の法則

「落としたトーストがバターを塗った面を下にして着地する確率は、カーペットの値段に比例する」

ユーモアに溢れていて、マーフィーの法則の中でも特に秀逸な「法則」としてしばしば引用されるものです。 

アストン大学のロバート・マシューズは「トーストの転落 マーフィーの法則と基本的定数」という論文を発表しました。

彼はその論文の中で通常のテーブルを使用した時ほとんどの場合にバターを塗った面が下になることを証明し、バターを塗った面を上にして着地させるためには高さ3メートル以上のテーブルを使うべきだという結論を出しました。

マシューズはこの功績により1996年にイグノーベル賞を受賞しました。

バター面が下になる確率が何に比例するのかというと、「カーペットの値段」ではなく、テーブルの高さ(や初動時バター面が上を向いている事や滑り落ち方)ということに成ります。