真藤順丈の「宝島」を読んで
真藤順丈の直木賞受賞作品「宝島」を読み終わりました。
541ページ以上の大作ですが、その重さは戦後沖縄が担ってきた時の重さを伝えます。
中心となる3人は、戦果アギャーのリーダー格であるオンちゃんの弟レイ、親友のグスク、恋人のヤマコです。
「宝島」は1952年から本土返還の1972年に渡り、沖縄を舞台にした3人の若者たちが英雄を追って駆け抜けた20年間の物語です。
中心となる3人は、戦果アギャーのリーダー格であるオンちゃんの弟レイ、親友のグスク、恋人のヤマコです。
作中では、ヤマコの名前がヤマ子であること以外、オンちゃん、グスク、レイの本名は明かされません。
作中、この4人が渾名で通されることで、かえって特別な存在として浮き上がります。
戦果アギャーとは、文字通り「戦果を上げる」という意味ですが、米軍基地に忍び込み、物資を略奪する者達のことです。
しかし、ある夜、嘉手納基地に忍び込んだオンちゃん、レイ、グスクとその仲間らは米軍に狙撃され、グスクは逃げおおせますが、レイは投獄され、「生きて帰るのが最大の戦果」と言っていたリーダーのオンちゃんは行方不明となります。
当時、オンちゃん20歳、グスク19歳、レイ17歳で、ヤマコは3人に近い歳というだけで明かされていません。
その後、グスク、レイ、ヤマコは必死にオンちゃんを探し続けます。
グスクとヤマコはオンちゃんの情報の聞き込みを続け、オンちゃんが密貿易団クブラに脅されていた情報を得ます。
グスクは、クブラとオンちゃんのことを知っているという謝花ジョーが、沖縄に一つしかない刑務所に入所しているという情報を得て、オンちゃんの消息を聞き出すために自首します。
オンちゃんが基地を脱出したことは確認できましたが、オンちゃんが「予定にない戦果」を持ち帰ったと、謎の言葉を残して、ジョーは息を引き取ります。
やがて留置場で、看守たちの受刑者たちへの不当な暴力などに対する改善を求めた暴動事件が起きます。
暴動の最後の一触即発の場面で、受刑者たちを煽るレイと、生きて還らなければいけないと説得するグスクは、相対します。
暴動は鎮圧され、やがて先に刑期を終えて出所したグスクは、警察学校で学び、琉球警察コザ署の刑事となります。
ヤマコはAラインと言われる店で女給として働きながら、夜学で学び、教員試験に合格して小学校の教諭になります。
そしてグスクに遅れて出所したレイは、やくざの頭領にかつて人々から英雄と言われた男の弟ということで、重用されます。
3人は英雄と言われたオンちゃんの意思を継ぎ、それぞれの道で英雄となる努力を始めます。
その間も3人はそれぞれの方法で、オンちゃんの消息に迫ろうとするのですが、色々な事件が周りで起きてきます。
ある日、レイの前に混血の孤児が現れます。
子供は口をきくことができませんでした。
子供は何を言ってもニコニコして、どこまでもレイについてきました。
その子供は、教師となったヤマコの前にも現れ、やがて孤児たちへの絵本の読み聞かせにじっと聞き入るようになります。
ヤマコの放課後のそのようなボランティアを通じて、その子供は孤児の施設に入り、やがて自らをウタと名乗るようになります。
授業中だったヤマコは必死に避難しましたが、目の前で小さな子供達が助けを求めながら焼け死んでいく惨状に強い衝撃を受けます。
この米軍機による大惨事の後、ヤマコは米軍施政下での不当な法案成立に反対する教職員組合のデモに参加するようになり、やがて沖縄基地本土並みを掲げる本土復帰運動にも積極的に参加するようになります。
ヤマコはオンちゃんがもういないことを受け入れ、島に住む子供達を守るために行動するようになります。
一方、戦後の沖縄では、暴力組織が基地周辺の利権をもつコザ派と、最大都市の那覇派で激しく対立していました。
コザで育ったレイはコザ派に属していましたが、那覇派のリーダーである又吉世善と親しく付き合うようにもなります。
コザ派と那覇派の攻防はさらに強まり、又吉は島から身を隠す必要があり、コザ派に狙われるようになったレイも又吉に同行しある島へ逃れることになりました。
そして島の老人から娘を返せと迫られたレイは、レイに似た風貌の男が過去に島に来て、老人の娘が世話をしていたことを知ります。
レイはそれが探し求めていたオンちゃんであったと知ります。
老人から、米軍がクブラの潜伏を知り、島に攻撃をかけてきた時に、クブラに捕らわれていたオンちゃんが娘と船で逃げ出し、米軍のロケット砲で攻撃されて亡くなったことを知らされます。
バラバラになった舟から老人が引き揚げた遺品の中に、オンちゃんがいつも肌身離さず持っていたサメの歯で作った首飾りがあるのを見つけてレイは涙します。
それはレイがまだ小さい頃、海でレイがサメに襲われた時に、オンちゃんがレイを救ってくれ、その時のサメの歯で作ったものでした。
また一方、グスクは身に覚えのない容疑をかけられて、沖縄で暗躍している本土の日本人・ダニー岸から拷問を受けます。
その容疑とはキャラウェイ高等弁務官の暗殺でした。
グスクは手下達の隙をついて、ダニー岸から辛くも逃れます。
しかし又吉と沖縄から別の島に逃げてきたレイが、又吉たちとキャラウェイ高等弁務官の暗殺を企てていることを知ります。
結局、グスクの機転で、キャラウェイ高等弁務官の暗殺は未遂に終わりました。
那覇派の人間の多くは検挙されましたが、レイは主犯格の刑務所の中で仲間だったタイラに、無鉄砲であることが帰って危ういとして、計画実行直前にメンバーから外されました。
その後、レイは行方不明になっていました。
しばらくして、戦果アギャーの噂が立ち、あちらこちらで多くの贈り物が家の軒先に置かれるようになりました。
そしてある日その中に、ガスマスクが忍び込まされるようになり、米軍基地で、有毒ガスが漏れて、米軍に被害者が出た噂が出ました。
米軍基地を襲ったのはレイとその仲間たちでした。
レイは貧者の核爆弾と言われる、猛毒のVXガスを手に入れます。
米軍基地を襲った時に、VXガスを合成できる人間をさらって作らせたのでした。
グスクは暴動の中で、数年ぶりにレイの姿を見ることになりましたが、レイはその時にVXガスで米軍基地を襲う計画を実行しようとしていました。
VXガスをレイから奪い、阻止しようとするグスクは、取り返そうと追うレイから、広大な嘉手納基地の中を逃げ回ります。
そして米軍基地を襲撃しようとしたレイに、自らついて来てしまったウタが、レイとグスク達を取り囲んだ米軍に発砲したために、一斉に銃撃されます。
レイとグスクはウタを抱えて嘉手納基地の外へ逃れますが、ウタは既に亡くなっていました。
彼女は臨月の体で嘉手納基地の金網を超え、基地の中に残されたある神聖な場所である「ウタキ」で我が子を産み落としました。
それは、オンちゃん達、戦果アギャーが嘉手納基地に忍び込んだ夜の事でした。
オンちゃんは米兵に追われて逃げる途中でその赤ん坊を見つけ、抱きかかえて基地の外に逃たのでした。
「予定にない戦果」とは、ウタ、つまり物ではなく、小さな赤ん坊の命でした。
ウタは、米兵と沖縄(ウチナー)の女性との間に生まれた子供でした。
米兵は戦争が終わり、必ず戻ってくると約束して帰国したのに、二度と彼女の元に現れませんでした。
彼女は臨月の体で嘉手納基地の金網を超え、基地の中に残されたある神聖な場所である「ウタキ」で我が子を産み落としました。
それがウタでした。
母親は、その出産で出血多量のため、そこで亡くなりました。
母親は、その出産で出血多量のため、そこで亡くなりました。
オンちゃんは、アメリカ軍が攻撃したあの島から、からくも逃れて、沖縄に何とかたどり着くも、既に傷を負っていたために力尽きて亡くなったのでした。
オンちゃんは、ウタが小さい頃に隠れていた洞窟で、白骨となって見つかりました。
