アニメ短編映画「落としもの/The Lost Thing」


オーストラリアの絵本作家ショーン・タンの同名絵本をアンドリュー・ルヘマン氏とショーン・タン氏の共同監督でアニメーション化した2010年の作品です。

第83回アカデミー賞・短編アニメ映画賞を受賞した作品です。

15分の非常に短い作品ですが、独特の世界観を描いています。

見えないけれど、そこにある、誰もが目を向けようとしなくなった不思議な世界を、愛らしくも寂しげな、奇妙な形をした生き物とともに描いています。

あらすじ

舞台は近未来、オーストリアのメルボルンです。

ある日、海辺で趣味の王冠を集めていた主人公のショーンは、カニの爪のような腕を持ち、ボイラーのような形をした胴体から軟体動物のような手足が突き出た不思議な形をした生き物に出会います。

その生き物はとても人なつこくて、ショーンはビーチボールで遊んでやります。

ショーンは、それが迷子になっていると思い、どこから来たのか一緒に探してあげることになりました。

しかし、周囲の人々はまるで無関心、大人たちは忙しすぎるのか、その生き物の存在にすら気付いていません。

その生き物に同情したショーンは、その“帰るべき場所”を探し続けます。

友人のピートに相談して、色々調べてもらいますが結局分かりませんでした。

ショーンはその生き物を家へ、連れて帰ると、母さんは、家が汚れると文句を言い、父さんは何かに感染すると心配し、元の場所に返してこいと言われました。

とりあえず物置に隠すことにしましたが、いつかは見つかってしまいます。

ショーンは、テレビを観ていて、国家ハンパ・ガラクタ管理局のことを知ります。

ショーンはお役所へ出かけて行き、その生き物を預けようとします。

灰色の窓の無い暗い建物の中へ入っていくと、受付で、山のような書類を渡されます。

そこにいた長い尻尾を持った奇妙な掃除夫に、「それが大事なら、ここに置いていってはいけない、ここは忘れ去られた物の墓場だ」と警告され、矢印の付いたカードを渡されます。

そのカードと同じ矢印の付いた看板を辿って、街の方々を歩き探し回りました。

たどり着いた先は、名も無い路地の薄暗い隙間にあって、中へ進んでいくと、行き止まりの暗がりの中に蝶型の鍵があります。

ショーンが、鍵をひねると、下の小さな出入口が開いて光が射し、小鳥が飛び出してきて、ショーンたちを確認するとすぐに戻っていきました。

しばらくすると、目の前の大きな重い扉がゆっくりと上へせり上がっていき、その向こう側には光り輝く別世界が広がっていました。

そこは様々な不思議な形をした生き物たちが住むユートピアのようでした。

ショーンは、とうとう奇妙な形をした生き物がいられる場所を見つけたのでした。

その生き物とそこで別れを告げて以来、ショーンは街で風変わりで寂しげで悲しそうな生き物を見ることたびに、あの奇妙な生き物のことを思い出すことがありました。

しかし、最近はそのような生き物たちを、あまり見なくなりました。

迷子の奇妙な生き物たちが減ったのか、ショーンが気がつかなくなってしまったのか。

ショーンが忙しすぎる毎日を送るようになってしまったからかもしれません。