アニメ短編映画「Nullarbor」は、ナラボー平原をひた走るハイウエイを舞台にしたカーチェイスコメディー
本作は、南オーストラリア州 ナラボー平原の広大で不毛な風景を横切る大人向けのアニメーションロードムービーです。
ビクトリア&スクリーンオーストラリアと、ランプシェードコレクティブによってプロデュースされ、複数の賞を受賞しました。
上映時間は11分です。
あらすじ
男は30代くらいで、痩せて無精髭を伸ばし、いかにも荒んだ容貌です。
男はタバコを取るために、無謀にもハンドルから手を放し、後ろの座席をさぐり、脇見運転をします。
男は、前の車と衝突しそうになったため、慌てて急ブレーキを踏みますが、口にくわえたタバコを飲み込んでしまいます。
急停車した車の中で、男はサイドウィンドウを降ろす間もなく嘔吐します。
怒った男は、衝突しそうになった車を猛然と追いかけます。
最初その車には、誰も乗っていないように見えました。
近づきよく見ると、一人の老人が乗っていました。
つまりは、老人は道が単調に真っ直ぐ続いてるのをよい事にして、周りの事など全く無頓着に、とんでもない姿勢で脇見運転をしていました。
渋い顔をした老人は、鋭く細い目をして、男をじっと見ますが、顔色一つ変えません。
その時、男は老人の車のダッシュボードにタバコの缶らしきものを見つけます。
男は手のしぐさで、タバコをくれとジェスチャーをします。
しかし老人は、座席に座り直し、男を無視して、スピードを上げ走り去ってしまいます。
男は老人に気を取られていたため、今度は正面からトラックが来るのに気づきませんでした。
急ハンドルを切り、看板を突き破って急停車しました。
タイヤがパンクし交換するのも頭にきて八つ当たりをします。
車のスピードを上げて近づき、車を並走させ、無謀にも窓から老人に尻を向けて侮辱します。
老人はちらっと男を見ますが、男の嫌がらせにも、全く無表情で顔色一つ変えません。
男は老人の車を追い越し、うっぷんを晴らして、したり顔をします。
それから、男は無人のガソリンスタンドに寄りました。
男はコインを入れ、タバコが出てくるのを待ちますが、故障して出てきません。
益々逆上した男は、自動販売機を足でけり、穴が開いて足が抜けなくなってしまいます。
足を抜こうとすると、自動販売機が倒れて下敷きになってしまいました。
男にとっては踏んだり蹴ったりでしたが、自業自得ではありました。
老人の車が、クラクションを鳴らしながら通り過ぎていきました。
男は地面を手で叩いて悔しがります。
再び車を走らせた男は、老人の車を猛然と追います。
そして追いつくと、車を並走させて、手のしぐさでタバコをよこせと示します。
老人は無視をしてスピードを上げますが、男はなおも追い、並走します。
その時、左方向から列車がやってくるのに気づき、男は急ブレーキを踏んで踏切直前で急停車します。
老人の車は、一瞬早く踏切を渡り切り、走り去りました。
列車が通り過ぎるのを踏切前で待つ男は、老人に再びしてやられシートを叩いて悔しがります。
再度、車を走らせ、老人の車に追いついた男が、並走させようとすると、老人は急ブレーキを踏んで止まりました。
老人がダッシュボードの上にある缶を取り、これかと示すと男は頷きます。
男はスタートダッシュで勝ったら、タバコを渡すということかと解して、ニンマリとします。
男の車は前方へ猛烈なスピードで飛び出します。
しかし、老人の車は止まったままです。
勝ったと歓喜に沸く男の表情がみるみる変わります。
男の車はコントロール不能になり暴走して、発火の上、部品が分解して次々と飛び散り、遂には大破してバラバラになります。
ハンドルを握ったままの男は、信じられないといった表情で、茫然としています。
男は車からゆっくり降りて、崖っぷちまで歩き、腰をおろします。
老人の車が近づいてきて、後ろに止まります。
目を見開き、呆然とした表情で、海原を見つめる男に、老人がタバコの缶を放り投げます。
結局その缶にはタバコではなくガムが入っていました。
すると、サイドブレーキの引きが甘かったのか、老人の車がゆるゆると進み出します。
老人は、慌てて車の後を追いますが、車はそのまま大海原にダイブしました。
男はその様子を、目を白黒させて見ていますが、もう何が何だか分からないといった表情です。
夕暮れ過ぎて暗くなった幹線道路で、男がヒッチハイクをするために手をあげますが、トラックが無情にも通り過ぎていきます。
男の傍らには、むすっとした顔の老人が立っていました。
傍若無人な荒くれ男が、嫌がらせ煽りの挙げ句、車を失うという天罰を受けるのですが、終始冷静沈着な老人も最後に車を失うという、「こういうこともあるさ」とばかりに、ひとひねりしたシニカルなストーリーの結末でした。