歳をとってこれ以上耳を悪くしない耳に優しい生活習慣


歳をとると、どうしても耳が遠くなってきます。

従来あまり意識してきませんでしたが、耳に優しい生活習慣とは何だろうと、改めて考えてみました。


加齢と難聴

加齢による聴力の低下は一般的に高音域から始まります。

60歳代になると、「軽度難聴」レベルまで聴力が低下する音域が増え、聞こえが悪くなったことを感じる人が急激に増えてきます。

さらに70歳をこえるとほとんどの音域の聴力が「軽度難聴」〜「中等度難聴」レベルまで低下してしまいます。

65-74歳では3人に1人、75歳以上では約半数が難聴に悩んでいるといわれています。


音を感知する細胞

加齢以外に特別な原因がないものを「加齢性難聴」と呼びます。

加齢性難聴は音を感じる部位が障害される感音難聴です。


主な原因は、加齢によって、蝸牛(かぎゅう)の中にある有毛細胞がダメージを受け、その数が減少したり、聴毛が抜け落ちたりすることです。

有毛細胞は、音を感知したり、増幅したりする役割がありますので、障害を受けると、音の情報をうまく脳に送ることができなくなります。




また、内耳の問題以外にも、内耳から脳へと音を伝える神経経路に障害が起きたり、脳の認知能力が低下することも影響している可能性があり、さまざまな原因が複数組み合わされて発生すると考えられています。

単なる「加齢性難聴」ではなく、中耳炎などによる「伝音難聴」、騒音やウイルスなどによる「感音難聴」を発症していたり、難聴をさらに進行させていたりする事もあります。

その場合は、投薬治療や手術などで治療できる可能性もあります。

年に一回は聴力検査を受けることが推奨されます。

難聴の進行を遅らせる、加齢以外の原因を避けるという意味での予防は十分に可能です。


騒音・大音量を避ける

耳の中にある有望細胞を守ることが大事です。

有毛細胞は、毛が束になったような形をしていて、音の振動を感じて脳に伝える働きがあります。

騒音や大きな音を長時間聞いていると、有毛細胞が傷んだり、「毛」が抜けたりします。

それによって難聴が起きます。

まずは騒音や大音量を避けることが重要です。

騒音の多い工事現場で働く人、ライブハウスなどで大音量に長時間接する人、絶えず大きな音がする娯楽施設にいる人など、騒音を伴う職業や環境にいる場合は、業務ごとに不便や危険を伴わない範囲で、耳栓をしたり1時間ごとに大きな音から離れ耳を休ませるようにします。

幹線道路や線路のすぐそばなどに住んでいる程度では問題になりません。

家の中にいて、騒音を聞き続けなければ大丈夫です。


イヤホン・ヘッドホン

イヤホンやヘッドホンで音楽を長時間聞くのは耳にとってよくありません。

WHOの調査では、イヤホンを長時間使用すると難聴になりやすくなるということが確認されています。

コロナ禍でリモート会議やパソコンで動画を見る時間が増え、イヤホンやヘッドホンを使う機会が増えています。

今後難聴の人が増えていくことが心配されます。

「60・60セオリー」というのがあります。

音楽プレーヤーやパソコンなどの音量設定の60%以上で、60分以上連続してイヤホンなどを使っていると、難聴になるリスクが上がるといわれています。

60分ごとにイヤホンを外して耳を休ませるなどの対策を取ることが必要です。


生活習慣病

耳鼻科の名医として知られる山岨達也医師(東大病院耳鼻咽喉科教授)も、難聴を悪化させる要因として動脈硬化や生活習慣病を挙げています。

聴力を守るためにも動脈硬化の予防が大事で、そのためにカロリーオーバーや喫煙は避け、よく体を動かすのがよいということです。

日本には、ウォーキングの生活習慣病予防効果を明快なデータにした世界的疫学調査があります。

東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利博士(運動科学研究室長)らによる「中之条スタディ」です。

その要点は「1日8000歩、うち20分速歩きでウォーキングをすると生活習慣病が防げる」ということですが、動脈硬化予防の目安は7000歩とされています。

生活習慣病や喫煙は、動脈硬化を進行させて血流が悪くなります。

血流の不足により、有毛細胞に酸素や栄養が届かなくなり、耳の聞こえにも影響します。

糖尿病、高血圧、脂質異常症の生活習慣病がある場合は、適切な治療を受けて重症化しないように心がけることが大切です。

血流をよく保つには、「適度な有酸素運動」「栄養バランスのとれた食事」「ストレスをためない」ということが重要です。

ストレスは血管を収縮させて血流を悪化させます。

趣味などでリラックスする時間を作ることも大切です。

騒音で急に難聴になった場合は、早期に治療すれば回復する場合もあります。


耳鳴り

耳鳴りは難聴に伴って起こることも多い症状です。

耳鳴りが気になったら、自己診断をしないで専門医の診断を受けることが大切です。

耳鼻科では、耳鳴りの処方として利尿剤を処方することがあります。

メニエール病のように内耳に水がたまったり、水分代謝が悪くなったりしている場合に、その「水はけ」をよくするためです。

メニエール病には、積極的に水を飲む「水分摂取療法」も効果を上げています。

その第一人者は北里大学医学部の長沼英明教授(新世紀医療先端部門神経耳科学)です。

長沼教授らが2000年に始めた水分摂取療法は、毎日、男性なら2~2.5リットル、女性なら1.5~2リットルの水を飲む方法です。

メニエール病の患者122人を対象にした初期の調査では、95%の人がまったくめまいを起こさなくなったということです。

また、この治療法は聴力の改善にもつながり、35%の人の聴力が改善し、65%の人が聴力を維持、聴力が低下してしまった人は5%にとどまったと、長沼教授は報告しています。

内耳の水分代謝は、脱水状態のときにも悪くなりがちです。

そのために耳鳴りが起こっている場合は、水分摂取療法が有効だと思われます。

一度に大量の水を飲むのではなく、こまめに飲むことがポイントです。

耳鳴りの多くは原因不明ですが、大きな悪化要因として動脈硬化があります。

動脈硬化に代表される生活習慣病を防ぐ暮らし方が、耳鳴りを改善します。


食生活

耳鳴りの治療では、メチコバールなどのビタミンB12製剤がよく処方されます。

ビタミンB12には、神経の働きを助ける作用があり、傷ついた末梢神経の修復にも関わっています。

耳鳴りや難聴には、内耳の神経機能が低下しているケースが多いので、ビタミンB12が治療に使われています。

ビタミンですから、日常の食事から、栄養素としてバランスよく取るのが望ましいです。

ビタミンB12は水溶性ビタミンですが、下の表のように、動物性食品に多いのが特徴です。

肉類、魚介類のたんぱく質と結合する形で含まれています。

しじみ、あさり、レバー、さんま、めざしなど、ふだん食べている食材に豊富に含まれているので、比較的、摂取しやすい栄養素ではあります。

また耳の健康を保つには、ビタミンやミネラルが多く含まれる黒ゴマ、ほうれん草、海草類などを摂るのが良いです。

耳の複雑な骨の構造を維持するためには、鶏肉、えんどう豆、しらす干しなどの食材から十分なカルシウムの補給も必要です。