ロバート・A・ハインラインの「夏への扉」を読んで
ロバート・A・ハインラインの「夏への扉」を読み終えました。
ハードカバーの表紙にネコの絵が描かれているのが、目を引きます。
ネコと主人公の心温まる話と思いきや、読み進んでいくと、そうではありません。
見開きページの時代背景が1970年12月となっています。
主人公のダンこと発明家のダニエル・ブーン・ディヴィスは、婚約者ベル・ダーキンと友人であり、仕事上のパートナーであるマイルズ・ジェントリーに嵌められて、ダンの会社を乗っ取られてしまいます。
破れかぶれになったダンは、保険会社のコールド・スリープにより、愛猫ピートと伴に30年後に再生して、共謀して裏切ったベルとマイルズを見返してやろうと考えます。
ところが、最後にベルとマイルズに恨み言の一言も言いたいと出かけたところ、逆上したベルに一服盛られます。
マイルズの制止にも関わらず、ベルは、ダンに何でも従うようになる注射を打ち、ダンはもうろうとした状態となります。
邪魔者を消し去りたいベルによって、ダン一人がコールド・スリープのカプセルに送リ込まれました。
30年後、目覚めたダンは、技術の進歩に目を見張りますが、コールド・スリープを契約した保険会社は倒産しており、彼の委託した財産もすべて無くなっていました。
1970年から30年後にコールドスリープから目覚めたダンは、色々な新しい技術に目を見張ります。
小説中の2000年12月13日に実現しているだろうと作者が想像した技術は、残念ながら2023年の現在でも実現していない事が多いのですが、SFとして想像の世界として読み飛ばしていきます。
ダンは、彼を陥れたベルと再会しますが、彼女は、30年歳をとって厚かましい中年女性になっていました。
ダンは、彼女から裏切り者のマイルズが、ダンのコールドスリープの2年後に亡くなったことを聞きます。
リッキーの行方については、祖母と一緒に住むと言って出て行ったきり、彼女は知らないと答えます。
それだけ、聞くと、ダンは、引き留めるベルを振り切って、彼女とは2度と会わないと言い捨てて出ていきました。
そして、ダンは色々な手立てを使って、リッキーの行方を調べたところ、彼女が20歳の時にコールドスリープに入り、ダンが目覚める少し前に目覚めてサンクチュアリを出たことを知りました。
美しく成長したままコールドスリープから目覚めたリッキーと、どうしても再会したいダンは、あともう少しのところで、そのチャンスを逃してしまいます。
しばらくして、役所の記録からリッキーが結婚したことを知り、失望します。
ダンは、タイムマシンを発明した老学者を騙して激高させ、タイムマシンを起動させて、再び1970年に戻ってきます。
再び1970年に戻ったダンは、ベルとマイルズがダンを貶めダンを会社から追い出す1年前に戻ってきて、まだ2人に明かしていない彼の発明品の自動製図機と試作途中であった万能ロボットの試作品の完成を急ぎます。
そして、彼の友人となった弁護士に特許化を依頼します。
マイルズの屋敷で、ベルがダンに注射を射たれて朦朧としたあの夜、ベルを引っ掻いて外へ出てきたピートをダンはなだめて車に乗せて屋敷を離れます。
奇妙なことに、屋敷の中にはもう一人のダンがいました。
その後、ダンが発明に没頭している間、ピートの面倒をよくみてくれていた、女の子リッキーを訪ねることにします。
まだ11才の彼女は、マイルズが再婚して亡くなった妻の連れ子でしたが、ピートを可愛がり、ダンにもよくなついていました。
リッキーは、戸籍上は、継父マイルズの子供でしたが、マイルズと結婚したベルをひどく嫌っていました。
ダンは、ガールスカウトのキャンプに参加しているリッキーに会いに行きました。
そして、彼女が21歳になった時に、お掃除ガールズ社の株を譲渡することを約束して、これから愛猫のピートと30年のコールドスリープに入ると説明します。
11歳のリッキーはなんと、その時に30歳であったダンに30年後のコールドスリープから目覚めた時に自分と結婚してくれるかとダンに聞きます。
リッキーは、ガールスカウトのキャンプの後、祖母に迎えに来てもらい、マイルズの元へは帰らず、祖母の元で成長します。
リッキーは美しく成長し、21歳になった時に、ダンの約束通り、お掃除ガールズ社の株を受け取り、ダンの目覚める時に合わせてコールドスリープに入りました。
そして、コールドスリープから目覚めたダンは、リッキーの眠るサンクチュアリに尋ねて行き、そこのドクターにリッキーを目覚めさせてもらいます。
リッキーは、予めダンが訪ねてきた時に、自分を目覚めさせてくれるよう、ゴールドスロープを運営する保険会社と契約していました。
こうして、ダンとリッキーは結婚します。
自分の歴史を書き替えたダンの話は、ハッピーエンドで終わりました。
ダンがタイムマシンで戻る原因となったリッキーの結婚の相手はダン自身でした。
小説中では、多次元世界で説明していますが、話が堂々巡りしているようでもあります。
あの時、リッキーが結婚したのがもう一人のダンであったことをダンは知っていたのか、もし訪ねていき、2人のダンが対面したらどうなってしまうのか、このようなタイムスリップの矛盾は尽きません。