家族信託契約書の事例
家族信託契約には、必ず記載しなければいけない必須項目と、状況に応じて加筆する任意項目があります。
必須項目
家族信託契約を作成する場合には以下の条項を必ず記載する必要があります。・契約の趣旨
・契約(信託)の目的
・委託者、受託者、受益者の特定
・信託財産とその管理方法
契約の趣旨は、当該契約が、信託契約であるということを明らかにするために記載します。
委託者、受託者、受益者の特定は、誰が当事者になるのかを記載する必要があるので、財産を預ける人(委託者)、財産を預かって管理する人(受託者)、財産から経済的な利益を受ける人(受益者)の氏名を記載します。
一般的には「 委託者=受益者 」として設定し、贈与税を課税されないように注意します。
信託財産は、受託者に信託する財産を列記して、その財産が特定できるようにします。
そして、不動産の場合には登記簿謄本の通りに、財産が特定できるようにします。
信託財産の管理方法は、信託した財産をどのように管理するのかについて記載します。
受託者の権限の範囲についても記載します。
受託者は財産の管理だけなのか、それとも財産の売却まで権限を与えるのか、などの内容です。
また、受託者の財産管理方法は適切か、きちんと契約内容を遵守しているのかを監視・監督する役割を設置することができます。
この役割を担う人を「 信託監督人 」と言います。最後に、信託の終了時期、信託がいつ終わるのかについて定めておきます。
任意項目
必須項目のほか、個々の状況に応じて任意の項目についても記載することになります。ただし、任意項目は将来的に起こりうる事情を考慮して記載することになります。
・受益者に相続が発生した場合、財産権の承継者を誰にするか・受託者の辞任希望の際の手順と、次の受託者を決める手順
・受益者である親の判断能力が無くなった場合に、信託契約の内容を変更出来る受益者代理人の指定
家族信託誓約書の事例(1)
家族信託でよく利用される、認知症で正常な判断能力を失ってしまった時に備えて、子を受託者とする家族信託を行う場合の契約書の具体例です。委託者●●●●(以下「委託者甲」という)及び受託者▲▲▲▲(以下「受託者乙」という)は、令和○年○月○○日、以下のとおり信託契約を締結する。
第1条 信託の趣旨
委託者甲は、受託者乙に対して第2条記載の信託の目的を達成するため、第3条記載の財産を受託者乙に信託し、受託者乙はこれを引き受けた。
第2条 信託の目的
本件信託は次条記載の金融資産(金銭)を信託財産として管理運用及び処分、その他当該目的達成のため必要な行為を行い、委託者甲の判断能力が低下したとしても、受益者の安定した生活の支援と福祉を確保することを目的とする。
第3条 信託の設定及び信託財産
委託者甲は、次条記載の受託者に対し次の金融機関に預託している金銭の全額を信託財産として管理運用及び処分することを信託し、受託者乙はこれを引き受けた。
第4条 受託者
受託者は次のとおりとする。
住所 東京都○○区○○×丁目○○番○○号
職業 税理士
氏名 ▲▲▲▲
生年月日 昭和○○年○○月○○日
第5条 受益者
この信託の受益者は、委託者甲生存中は委託者甲(第一次受益者)とし、委託者甲死亡後は配偶者丙とする。
受益者丙は、委託者甲の死亡により、本契約上の委託者としての権利義務を承継する。
家族信託誓約書の事例(2)
委託者〇〇(以下、甲)及び受託者××(以下、乙)は、本日、以下の通り信託契約を締結する(以下、「本契約」という。本契約による信託を「本信託」という。)。本契約締結の証としてこの家族信託契約書を作成し、正本1通を乙が保管し、写しを甲が保管する。
第1条(本契約の趣旨)委託者甲は、受託者乙に対し、第2条記載の信託の目的を達成するため、第3条記載の財産を受託者乙に信託し、受託者乙はこれを引き受けた。
第2条(本信託の目的)
本信託は、受託者による適切な資産運用及び管理、保全を通じ、委託者甲の判断能力低下後においても、受益者の健康で文化的な生活の安定に寄与すること、及び、本信託を通じ、資産の円滑な承継を図ることを目的とする。
第3条(信託財産)
本契約で定める信託財産は以下のものとする。
~信託財産を記載する~
第4条:受託者
…受託者の住所、氏名、生年月日、職業を記載します。
第5条:受託者の任務終了
…万が一受託者が死亡した場合や、認知症などで判断能力がなくなってしまった場合の任期終了について記載します。
第6条:委託者、受益者
…委託者および受益者の住所、氏名、生年月日、職業等を記載します。
第7条:信託の期間
…家族信託の期間終了日は、受益者が亡くなった時と設定することが多いです。
第8条:事務代行
…信託に必要な事務を特定の人に代行させることができる旨を記載します。
第9条:信託財産の管理および処分
…信託財産を受益者の生活費や医療費などの支払いに充てる旨を記載します。
第10条:その他
…その他、決めておきたいことがあれば記載します。
たとえば、事務処理や代行費用にかかる支出が信託財産の額を上回った場合、誰がいくら負担するのかなどについてです。
第11条:契約変更
…契約内容を変更したい場合は、当事者の合意により変更できる旨を定めておきます。
第12条:精算
…清算後に残った財産について、誰が引き受けるのかについて記載します。
家族信託誓約書の事例(3)
信 託 契 約 書
委託者:山田太郎(以下「甲」という。)及び受託者:山田一郎(以下「乙」という。)は、本日、以下のとおり信託契約を締結する(以下「本契約」という。)。第1条(本契約の趣旨)
委託者甲は、受託者乙に対し、次条記載の信託の目的を達成するため、第3条記載の財産を信託財産として管理、運用、処分及びその他当該目的達成のために必要な行為をすることを信託し、受託者乙はこれを引き受けた(以下「本件信託」という。)。
第2条(信託の目的)
本件信託は、受託者による資産の適正な管理・保全・運用・処分を通じて、受益者の生活・看護・療養・納税等に必要な資金を確保及び給付するなどして、受益者の生活の安定をはかるとともに、円滑な資産の承継を目的とするものである。
第3条(信託する財産)
本件信託にかかる信託財産は、以下のものを含むものとする。
⑴ 当初信託する財産
別紙信託財産目録1記載の不動産(以下「本件信託不動産」という。)
⑵ 別紙信託財産目録2記載の金銭(以下「本件信託金銭」という。)
⑶ 本件信託不動産の賃貸、売却等の運用や処分により得られる金銭
第4条(信託財産の追加)
1 委託者は、本件信託財産に金銭を追加信託することができる。
2 前項の追加信託をする場合、委託者は、受託者指定の銀行口座(後記信託専用口座等)への入金により行うものとし、当該入金の事実をもって追加信託の合意があったものとする。
3 受託者は、前項の入金を受けたときは、速やかに追加信託を受けた旨の書面を委託者に対し交付する。
第5条(受託者)
1 本件信託の当初受託者は、次の者(乙)とする。
住所 大阪府大阪市中央区高麗橋四丁目5番22号
氏名 山田一郎
生年月日 昭和31年3月1日
2 次の場合には、受託者(乙)の任務が終了し、受託者(乙)があらかじめ書面により指定した者を後継受託者とする。
⑴ 受託者(乙)について、信託法第56条第1項各号に掲げる事由が生じたとき
⑵ 受託者(乙)について、任意後見監督人選任の審判がなされたとき
第6条(受益者)
1 本件信託の当初受益者は、次の者(甲)とする。
住所 大阪府大阪市中央区高麗橋四丁目5番2号
氏名 山田太郎
生年月日 大正14年1月4日
2 当初受益者甲が死亡した場合、次の3名が第二次受益者として受益権を承継取得する。
⑴ 甲の長男 山田一郎(乙)
⑵ 甲の二男 山田二郎
⑶ 甲の三男 山田三郎
上記3名の受益権の割合は、3分の1ずつとする。
第7条(受益権)
本件信託の受益権は、譲渡、質入れその他担保設定等をすることができない。
第8条(委託者の地位)
委託者死亡の場合、委託者の地位は相続により承継せず、本件信託の受益者(信託の清算中受益者とみなされる帰属権利者を含む。)が取得する。
第9条(信託の終了)
本件信託は、次の各号の事由のいずれかが生じたときに終了する。
⑴ 委託者兼受益者甲の死亡
⑵ 受益者と受託者が合意したとき
⑶ 本件信託財産が消滅したとき
⑷ 信託法所定の終了事由に該当したとき
第10条(本件信託に関する登記等)
1 委託者及び受託者は、本契約の締結後速やかに、本件信託不動産について受託者名義に信託を原因とする所有権移転及び信託登記手続をする。
2 受託者は、本件信託不動産から生じる賃料等収益、その売却代金、追加信託された金銭、その他信託財産に属する金銭について、信託口口座又は受託者名義の信託専用口座への移動を行い、またこの信託口口座又は信託専用口座において適切な管理を行う。なお、受託者は、信託財産に属する金融資産について、前記口座以外の金融商品をもって管理運用する場合、同商品の口座ないし保管場所を固有財産の口座ないし保管場所とは別個とするか、同じ保管場所で保管する場合には同商品に信託財産である旨の表示を施すなど他の固有財産等と分別して管理するものとする。
第11条(信託の内容)
1 受託者は、本件信託財産の管理運用を行い、本件信託不動産については、受託者が相当と認めるときは、これを第三者に賃貸し、あるいは売却等の換価処分するものとする。そして、受託者は、本件信託不動産から生ずる賃料その他の収益、換価代金並びに信託財産に属する金融資産をもって、信託不動産等にかかる公租公課、保険料、管理費及び修繕費、敷金保証金等の預り金の返還金、管理委託手数料、登記費用、その他の本件信託に関して生ずる一切の必要経費等を支払う。
2 受託者は、受益者の要望に応じ、受託者が相当と認める受益者の生活・看護・療養・納税等に必要な費用を、前記信託不動産の賃料等収益、換価代金並びに信託財産に属する金融資産の中から受益者に随時給付し、また受益者の医療費、施設利用費等を支払う。
3 受託者は、前2項の事務(以下「信託事務」という。)につき、事務遂行上必要と認めた場合、第三者にその任務を行わせることができる。
第12条(受託者の権限及び義務、信託の計算)
1 本件信託不動産の保存及び管理運用に必要な処置、特に当該不動産の維持・保全・修繕等は、受託者が適当と認める方法、時期及び範囲において行うものとする。
2 受託者は、本件信託不動産に付する損害保険については、速やかに受託者を契約者とする手続又はそれに準じた手続をす
るものとする。
3 本件信託不動産については、受託者の裁量で第三者に賃貸することができる。
4 受託者は、信託の目的に照らして相当と認めるときは、本件信託不動産を売却等により換価処分することができるものとする。
5 前4項に伴い発生する一切の諸費用につき、本件信託不動産から生じる果実、換価代金その他本件信託財産に属する金融資産から支払いに充当することができる。
6 受託者は、本件信託不動産から生じる賃料等収益、その換価代金等、その他信託財産に属する金融資産について、信託口口座又は受託者名義の信託専用口座において管理運用するほか、リスクの比較的少ない金融商品(預貯金、公社債、投資信託、金貨等を含む。)で管理運用することができる。
7 受託者は、本件信託開始後速やかに、信託財産目録、信託財産に関する帳簿等を作成し、本件信託期間中はいつでも受益者の請求に応じて閲覧に供することができるように保管するものとする。
8 本件信託にかかる計算期間は、毎年1月1日から同年12月31日までとし、計算期間の末日を計算期日とする。但し、最初の計算期間は、本件信託の効力発生日からその年の12月31日までとし、最終の計算期間は、直前の計算期日の翌日から信託終了日までとする。
9 受託者は、1年ごとに、各計算期日における信託財産目録及び収支状況報告書等を作成して、その内容を受益者に報告する他、受益者の求めがあるときは、いつでも速やかにその求められた事項につき報告する。
10 受託者は、信託事務に必要な諸費用(旅費を含む。)を立替払いしたときは、これを本件信託財産から償還を受けることができる。
11 本件信託が終了したときは、受託者は、現務を終了して最終計算書を作成して、信託財産及び関係書類等について後記清算受託者に引き渡し、事務引継を行う。
第13条(信託の変更)
本件信託の目的に反しない限り、受託者及び受益者が協議し、両者の合意により、本件信託の内容を変更をすることができる。
第14条(清算事務)
1 清算受託者として、本件信託終了時の受託者を指定する。
2 清算受託者は、信託清算事務を行うに当たっては、本契約条項及び信託法令に従って事務手続を行うものとする。
第15条(残余財産の帰属)
本件信託終了時の残余の信託財産は、次のとおり帰属させる。
⑴ 甲が生存している場合は、甲に帰属させる。
⑵ 甲が死亡している場合は、信託終了時の受益者に帰属させる。なお、受益者が複数存する場合は、均等の割合で帰属させる。
第16条(その他)
本契約に定めのない事項については、受益者及び受託者が協議の上決定するものとする。
令和○○年○○月○○日
住所 大阪府大阪市中央区高麗橋四丁目5番2号
氏名 山田太郎 ○印
住所 大阪府大阪市中央区高麗橋四丁目5番22号
氏名 山田一郎 ○印
1 不動産
⑴ 所 在 大阪市中央区高麗橋四丁目
地 番 5番2
地 目 宅地
地 積 100.01㎡
⑵ 所 在 大阪市中央区高麗橋四丁目5番地2
家屋番号 5番2
種 類 居宅
構 造 木造瓦葺平家建
床面積 1階 30.03㎡
2階 29.92㎡
2 金銭
金200万円
注意すべき事項
信託財産の目録に金銭について記載する場合は「金銭 金○○円」と記載し、口座番号などの情報は載せません。
なぜならば、 金銭を口座番号で特定しようとすると、金銭ではなく銀行に対する預金債権を信託したものと見えてしまうから です。
預金債権は譲渡禁止債権であることから、信託そのものができないというのが理由です。
つまり、委託者の口座番号については信託財産として名義だけを変更して受託者が引き継ぐことはできないということも意味しています。
そのため受託者は、 信託財産を管理するための口座を別途開設し、委託者がその口座に送金して資金を移すことで信託をスタートする必要 があります。
