数年前に結婚したはずの姪が改製原戸籍謄本から除籍されていないことがある
子供のいない夫婦が、遺言公正証書を作成するに際し、兄弟の甥姪に遺産を相続するために、関係性を示す資料として、兄弟に依頼して甥姪が記載されている原戸籍を発行申請し取り寄せる必要があります。
手元に届いたその原戸籍を見て、数年前に結婚したはずの姪が除籍されていないことを知り、まだ入籍していなかったのか、数年間も事実婚状態であったのかと驚くことがあります。
ところが、これは間違いです。下図は平成改製原戸籍の謄本の見本です。
消除という見慣れない語彙があります。
これは、この原戸籍が平成の戸籍改製によって平成22年8月3日に消除されたものであること、平成6年の法務省令を根拠に平成22年8月3日に新しい戸籍へ移行したのでこの戸籍が消除され(消されて)ました、といった意味になります。つまりは平成22年8月3日以前の記録であることを示しています。
この平成6(1994)年の法務省令による改製原戸籍の消除の時期は、自治体により異なります。
この見本では、長女の由美は、平成5年4月17日に婚姻により除籍されていますが、もしこの原戸籍が消除された平成22年8月3日以降に結婚していると、この原戸籍には婚姻の記録も記載されず、除籍(×の表示)もされないことになります。
従って、長女の由美が除籍されている戸籍を見たいのであれば、平成22年以降に発行された現在の戸籍でなければなりません。
この改製後の現在使用されている戸籍を「現在戸籍」といいます。
「現在戸籍謄本」=戸籍謄本=「戸籍 全部事項証明書」です。
単に原戸籍を申請すると、通常はこの平成改製原戸籍が発行されます。
「現在戸籍謄本」=戸籍謄本=「戸籍 全部事項証明書」は、電子化され、書式も縦書きから横書きに変更されています。
兄弟の戸籍謄本(戸籍 全部事項証明書)を依頼すれば、結婚したはずの姪が除籍されていないということは起きません。
但し、ここでもう一つ注意しなければいけないことがあります。
戸籍筆頭者が転籍して本籍地を変えている場合には、婚姻して除籍された子供は戸籍謄本から削除されているので、転籍する前の本籍地の自治体で戸籍謄本(原戸籍)を取り寄せる必要があります。
戸籍筆頭者が、転籍を繰り返すと、その度毎に改製原戸籍謄本がつくられるので、何通も存在することがあります。
場合によっては、婚姻して除籍された子供を確認するためには、除籍された時の本籍地を辿って改製原戸籍謄本の発行申請をする必要があります。