車のエアコンの構造

 車のエアコンが故障した時には、コンプレッサーだけではなくて、他の部分も不具合がある場合があるようです。

エアコン修理の見積もりを見ても、どこの部分か、どのような機能の部品なのか想像できないこともあるかもしれません。

エアコンの構造


エアコンガスを圧送する「エアコンコンプレッサー」

役割としては、エバポレーター内で気化した冷媒ガスを高圧状態に圧縮することです。

この時は高温ですがまだ気体の状態です。

エバポレーターから来た低圧のガスを圧縮して送りだすので、太い配管(低圧)と細い配管(高圧)が接続されています。

また、動力はエンジンベルトから取りますので、エンジンの側面あたりのアルミ配管を探すとわかりやすいです。

コンプレッサーによって圧縮された冷媒(エアコンガス)は高温高圧の半液体の状態でコンデンサーに入ります。

忘れてはならないのがコンプレッサーオイルの存在です。

これは別名エアコンオイルとも言いますが、このオイルは冷媒ガスと一緒にエアコンサイクル内をぐるぐると回りながらコンプレッサー摺動部を潤滑しています。

摩擦を少しでも低減するためにコンプレッサーオイルが使われていますが、いずれは摩耗して圧力不足を起こします。

特にコンプレッサーの摺動が悪いと焼き付きが起こり鉄粉が発生します。

この鉄粉は、何メートルもある配管やコンデンサーやエバポの細い配管まで回り、それらの機器の動作不良の原因となります。

エアコンガスを冷却する「コンデンサー」

冷媒はコンデンサーでコンデンサーファンの風によって冷却され、さらに液化が進みレシーバーへ送られます。

圧が高い状態で温度を下げてやれば低温高圧の液体にすることができます。

ただし冷たくなるわけではなく、温度は60℃程度です。

コンデンサーは、エバポレーターやラジエーターと同じくフィンがたくさんあり、ラジエーターの全面に配置されています。

アルミ製のフィンを使用し、放熱効果をさらに高めています。

バンパー付近に設置され、走行時に自然風を活用して効率的に冷却します。

コンデンサーにゴミやホコリが詰まると冷媒の冷却が十分に行えません。

そうなるとレシーバータンクから適切な量の液冷媒がエキスパンションバルブに送ることができず冷却能力の低下を招きます。

たまには洗車の際にでもしっかりと洗ってみるのも有効です。

ただし同じような症状でもクーリングファンの故障ということもあります。


エアコンガス内のゴミを取り除く「レシーバー&ドライヤー」

レシーバーでは液化できなかった僅かな冷媒を液冷媒と分離して、乾燥剤やストレーナによって水分や不純物が取り除かれます。

実際にコンデンサーで冷媒のすべてを液化できるわけではないので、このタンクに貯蔵されながらに冷えた冷媒も液化していきます。英語ではリキッドレシーバーとも言います。

レシーバードライヤーとは乾燥材のことですが、これはエアコンサイクル内に侵入してきた水分を除去する役割があります。(具体的にはストレーナーで管内を除湿します)

エアコン内の水分はエアコンにとって故障の原因となります。

この部品は不純物や水分を取り除くためのろ過機能が主な役割になりますので、このフィルターが目詰まりを起こせば冷媒ガスが流れ難くなります。

また、ドライヤー(フィルター)が破損することもあります。


エアコンガスを霧状にする「エキスパンションバルブ」

液冷媒はエキスパンションバルブ(膨張弁)の微小なノズル穴からエバポレーター内へ噴射され一気に気化します。

この部品は圧縮された液状の冷媒ガスを霧状に噴霧させる役割を持つため、中には弁が入っています。

その弁によって噴霧量をコントロールしています。

部品は、高圧配管と低圧配管を接続するためのポケットが2つあるのが特徴です。

エキスパンションバルブの摺動部(ピン)は数ミリ程度の開け閉めによるものです。

ここにエアコンオイルのスラッジやコンプレッサーから発生した鉄粉や水分などが密集することで詰まることがあります。


冷気を作る「エバポレーター」

エバポレーターでは冷媒が気化し、周囲の熱を奪って空気を冷やします。

冷媒の気化に伴い熱を奪うことで、効率的に冷風が作られます。

除湿機能も持ち、車内の湿気を取り除く役割を担います。

エバポレーターの表面で結露が発生し、水滴となって排出されます。

エバポレーターを出た冷媒はコンプレッサーに戻り再び圧縮されます。

エバポレーターの温度によって、エキスパンションバルブの噴射量を調整したり、電気的にコンプレッサーの作動をON/OFFしたり等、適正な冷房能力を維持する為さまざまな制御がなされています。

エバポレーターは、エキスパンションバルブで噴霧された冷媒ガスが気化するための場所です。

この部品は、室内ユニットに該当するためカーナビやエアコンコントローラーの奥の方に配置されています。

そのため、この部品を交換するためには電装部品の多くを取り外す必要があるため工賃が高額となります。

見た目はラジエーターやコンデンサーのように無数の回路とフィンが付いた形状をしており、これは霧状態の冷媒が気化しやすいように表面積を増やせるように設計されています。

そしてここにブロアファンによって空気が送られ、フィンに触れた空気が気化熱によって熱が奪われて冷たい空気になります。そしてエアダクトを通って室内に届けられるようになっています。

カーエアコンでは、液化されたエアコンガスをエバポレーター内で蒸発させることにより、気化熱によりエバポレーターを冷やし、そこに空気を通過させることで、冷たい空気を室内に入れています。


エアコンの嫌なニオイの原因は、エバポレーターに花粉や埃・塵が付着蓄積し、結露した状態と相まって、カビやダニが繁殖しやすい環境が作り出され、カビ菌やダニの死骸が発生するからです。

エアコンを切るとエバポレーターは外気と当たらず、湿気によりカビが繁殖しやすい環境となります。

また、結露による水滴はエバポレーターを腐食させ、わずかな穴が開けばそこから冷媒ガスが漏れることになります。


サービスポート(低圧/高圧)

エアコンにはサービスポートが配管に設けられています。

これはエアコン配管への接続ポートですが、ここから冷媒ガスを充填したり、抜き取ったり、配管内圧力を測定することができます。

サービスポートは主にコンプレッサー手前の低圧側に一か所とコンデンサー後ろの高圧側に一か所が設けられています。

通常はキャップを閉められており、L(低圧)またはH(高圧)と銘記されています。


エアコンガスのメンテナンス 

エアコンガスは長期間の使用で不純物が混ざることがあります。

定期的なガスのリフレッシュを行うことで、エアコンの効き目が向上します。

専門機器でガスを回収し、再充填することが一般的です。

ガスの充填不足は冷房効果を低下させるため、定期点検がお勧めです。

劣化したガスオイルの交換は、システム全体の保護にもつながります。