伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」を読んで
伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」を昨夜読み終わりました。
単行本ではありましたが、かなりの長編で、去年からずっと読み続けてようやく終えました。
その間私の毎日の生活はゆったり、ゆっくりと進んでいるのですが、小説を開くと主人公は首相殺人犯として、走り回り逃げ回っているのでした。
私が今まで読んだ伊坂幸太郎の小説の舞台は、すべて仙台近辺で、この作家の仙台に対する思い入れがとても強いことが感じ取れます。
全てが東京一極集中の現代にあって、このような御当地小説は、名古屋に住む私にとっても共感するものがあります。
小説の流れは、市井の極々普通の宅配人の若者が、ある日突然殺人犯に祭り上げられ、逃亡の日々を送り続けるのですが、周りの人々に助けられて、最後まで警察の追手をかわし逃げ切る展開でした。
常に追われる強迫観念に囚われながら、逃げ続けなければならないとは悪夢のようですが、実際に十数年も逃げ回った逃走犯人の記事をニュースで見たことがあります。
中には無実を訴えながら獄中で一生を終えた人もいたことを考えると、ある日突然、全くの無実であるにも関わらず囚われの身となることも、全くの絵空事ではないのかも知れません。
無実であるのに、更に逃げ続けなければいけない主人公へ寄せる想いが読後感として残る小説でした。