肺炎を防ぐ方法


CT検査で小さな肺炎の痕があるといわれました。

去年のレントゲンでは無かったので、この一年の間にあったことと言われました。

何の自覚もないままに、一体いつそのようなものにかかったのだろうと思いを巡らしても、思い当たるふしもありません。

改めて肺炎とは何か、どのように防げばよいのかを調べてみました。


肺炎とは


肺炎は、細菌やウイルスなどの異物が肺に入ってくることで炎症が起こり、熱・咳(せき)・痰(たん)・だるさ・脱水症状、胸痛、呼吸困難などの症状を引き起こす病気です。

高齢になるほど患者数は多くなる傾向にあります。

感染症の中で最もよく耳にする病気の一つですが、その怖さは意外と知られていません。

早期から適切な治療を行うことで多くの人は元気になっていく一方、日本人の死亡原因の約10%(第3位)になるほど、重症化するとあなどれない病気です。


肺炎の症状

主な症状
・発熱
・激しい咳
・息切れ、息苦しい、呼吸困難

出ることがある症状
・だるい、倦怠感、疲れ、疲労
・胸の痛み
・喉(のど)の痛み
・声が枯れる、声が出ない
・耳の痛み
・吐き気
・下痢
・皮疹、発疹、皮膚にブツブツが出る
・関節の痛み
・鼻水、痰(たん)
・喘鳴(喘息のように息がヒューヒュー、ゼーゼー鳴る)
・意識がもうろうとする、ぼーっとする、錯乱などの意識障害

・特に細菌性肺炎では黄色や緑色の痰が出ることがある

・重症の場合は水分がとれず脱水になったり、呼吸が十分にできず酸素吸入が必要になることもある

・子供や高齢者では、高熱やぐったりする以外に症状がない場合もある

・咳がないこともある


肺炎の検査

(1)問診・診察
(2)体温・血圧などの測定
(3)血液検査・尿検査・培養検査
(4)画像検査


血液検査では、炎症反応を示す数値が上がっていないか、脱水状態になっていないかなどを調べます。

そのほか、肺炎球菌・レジオネラ・マイコプラズマという3つの病原菌に関しては、尿とのどの検査を行えば迅速に結果が得られるため、同時に行われることも多いです。

症状が重いときには痰を培養して、体に細菌やカビがすみついていないかどうかを調べることもあります。

画像検査は、まずはエックス線(レントゲン)撮影を行い、肺にあやしい影があったときにはCT(コンピューター断層撮影装置)検査を行い、より詳しく肺の状態を調べます。


肺炎は原因にもよるが、うつることがある


・感染経路は主に飛沫感染と接触感染
・咳やくしゃみなどで飛び散った唾を吸い込んでうつる(飛沫感染)
・飛び散った病原体が手につき、口に入ってうつる(接触感染)
・飛沫感染予防にはマスクをつけ、咳エチケット(口をティッシュで覆うなど)を守る
・接触感染予防には手洗い・うがいをする
・空気感染はしない(患者に近づいただけではうつらない)
・近づいて話すなどすることで飛沫感染する場合はある
・潜伏期間は短い病原体で数日、長い病原体で数週間ほど
・潜伏期間には症状がないが、周りにうつす可能性がある
・治療で症状が止まったあともしばらくは周りにうつす可能性がある

風邪と肺炎

一般に喉が痛い、鼻水が出る、咳が出る、などの状態を称して「上気道炎」「感冒」または「風邪」と呼びます。

この症状は、肺炎などの初期に現れることもありますが、多くが風邪です。

通常、風邪は数日から1週間ほどでよくなります。

原因はウイルスですが、風邪を引き起こすウイルスには、いろいろあります。

サブタイプをふくめると、数百種類にもなるので、どれが風邪の原因なのか、特定できません。

原因はウイルスなので、抗生剤はまったく効きません。

抗生剤は一部の細菌に対して、細胞を破壊することで効果を発揮しますが、ウイルスには細胞がないためです。

ほかにも大きな違いとして、細菌は顕微鏡で見えますが、ウイルスは電子顕微鏡でなければ見えないほど小さいです。

細菌は自身で増殖しますが、ウイルスは他の生物に入り込むことで増殖する、などがあります。

また、個々のウイルスに効果のある抗ウイルス剤は、抗インフルエンザ剤の他、数種類しかありません。


風邪が治るのは、自分自身の力(免疫力)で治っているのです。

医師が「おそらく風邪でしょう」といっているのに抗生剤が処方されることがあるのは、たとえば扁桃腺炎などの細菌感染を疑っているか、後に肺炎などを引き起こすことがあるので、その予防のためです。


自然に治ることを期待できるような場合、肺炎と風邪などを見分ける必要はありません。

自然に治りそうなら検査も治療も必要ありません。

肺炎の原因

肺炎はウイルスや細菌が、肺の中で増殖を始めることで発症します。

気道はふだん、大まかに2段階のバリアー(防壁)によって細菌やウイルスなどの感染を防いでいます。

第1段階は線毛運動です。

粘膜上の線毛が動いて(線毛運動といいます)、体外からの異物を体外へ送り出します。

第2段階は免疫です。

人間には、体外からの異物とたたかう「免疫」といわれる能力があります。

免疫は主に血液中の白血球、リンパ球が主役です。

これらの2段階のバリアーをくぐり抜けたとき、ウイルスや細菌が肺の中で増殖を始め、肺炎を起こします。

なんらかの影響で気道粘膜が傷つくと免疫機能が低下して、肺炎を起こしやすくなります。


肺炎球菌性肺炎

頻度が高く重要なのは肺炎球菌です。

肺炎の約40%は、この細菌が原因です。
現在、肺炎球菌に対する予防ワクチンがあります。

発症をゼロにはできませんが、とくに65歳以上の方は重症化を阻止できます。

治療には抗生剤を使います。

肺炎球菌性肺炎の治療には、脾臓がとても大きな役割を担っています。

脾臓は左脇腹にある臓器で、肺炎球菌は最終的にはそこで死滅します。

何らかの原因で 脾臓がない方や非常に小さい方は肺炎球菌性肺炎になると命に関わるため、注意が必要です。


マイコプラズマ肺炎

激しい咳があるものの、比較的発熱が少ない肺炎です。

一時的に一部の地域で、流行することがあります。

ときどき、家族内感染も起こします。

この肺炎には少し異なった種類の抗生剤が必要です(マクロライド系、テトラサイクリン系など)。

一見治ったように見えても、再び症状が悪化する可能性があり、症状が治まっても2週間以上は内服を続ける必要があります。


レジオネラ肺炎

温泉、土壌などから感染することのある肺炎です。

以前には24時間風呂との関連がマスコミでも話題になりました。

ガーデニングブームの最近は、腐葉土からの感染も報告されています。

進行が早くて重症化しやすく、時に死に至ることもあります。

治療はニューキノロン系やテトラサイクリン系の抗生剤が必須です。

この肺炎は初期の治療がとくに重要なので、関係ないのではと思うことでも、医療者に直近のさまざまな情報(温泉旅行、ガーデニングなど)を伝える必要があります。


誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

食べ物や唾液が誤って気管に入ることを、誤嚥(ごえん)といいます。

とくに高齢者では、食べ物をかんで飲 み込む力が落ちるため、誤嚥を起こしやすくなります。

さらに、気管に入った食べ物を吐き出す力も弱くなっており、肺炎の大きな原因となります。

これが、誤嚥性肺炎です。

睡眠中などに唾液を誤嚥して肺炎に至る可能性もあります。

口から栄養をとるのを中断して点滴をおこない、抗生剤を使います。

予防には、(1)口の中を清潔に保つ、(2)噛み合わせをよくする、(3)睡眠時に上体を30度くらい起こす、(4)誤嚥しにくい食事内容にする、ことが重要です。


ウイルス肺炎

ウイルスで肺炎を起こすことがあります。

最近、とくに問題なのは、麻疹ウイルス(はしか)肺炎です。

かつて麻疹は「かかると命はどうなるかわからない」病気といわれ、「命定め」と恐れられていました。

医学が進んだ現代でも変わりありません。

しかしどう いうわけか、「はしかは軽い病気」「麻疹で死ぬことはない」といった誤った考えがあるようです。

2001年の統計では、27万人がかかりました。

いまで も、1000人に1人が死亡する、重症の感染症です。

麻疹の怖さは、合併症の多さにあります。

とくに麻疹肺炎は小児では死亡原因の多くを占めます。

麻疹には、確立した治療方法はありません。

自身の抵抗力が 頼りです。

麻疹に対しての抵抗力(病院で検査できます)がない人は、きちんとワクチンを受けて予防することが重要です。


肺結核

「治りの悪い肺炎が実は肺結核だった」ということがいまだにあります。

肺結核は過去の病気と勘違いされがちですが、日本では、現在も1日に70人以上が発症し、6人が命を落としている感染症です。

早期に発見し、治療を受ける必要があります。

当然、免疫力が低下している可能性のある人は要注意です。

免疫力が低下している可能性のある人
・65歳以上の高齢者
・糖尿病
・膠原病、リウマチ等でステロイドホルモン、抗TNF製剤の投与を受けている人
・腎臓病
・慢性肺疾患
・免疫抑制剤投与を受けている人


予防

(1) 休養(睡眠)をとる
(2) 栄養をとる
(3) 規則正しい生活
(4) 禁煙
(5) うがい、手洗い、マスク

風邪の予防は、手洗いがとても重要になります。

素手で眼をこすったり、鼻腔を触ったりしない習慣を身につけることです。

また、せめて風邪の季節には、家庭内でもタオルの共用は避けるべきです。


ワクチン

予防手段として、インフルエンザワクチンがあります。

残念ながら、このワクチンで発症の確率をゼロにはできません。

ただし、日本の研究では、65歳以上 の健常な高齢者については約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったとされています。

インフルエンザ後の肺炎を予防する上でも、イン フルエンザワクチン接種は重要です。

効果は、接種後2週間目ごろから4~5カ月といわれています。毎年接種する必要があります。

肺炎球菌ワクチンも発症をゼロにはできませんが、重症化しやすい肺炎球菌肺炎による死亡率を低めることがわかっています。

ただし、このワクチンの効果は5年程度といわれ、日本では一生に1度の接種しか認められていません。



CT検査

CT画像で影が見えた場合には、

①細菌などによる炎症によるもの、

②炎症の痕(肉芽腫あるいは器質化肺炎という)、

③肺のなかのリンパ節、

④肺がん、

の4つのケースが考えられます。

①~③は良性のものです。

ただし、ミリ単位程度の影では、このうちどれなのかの判断がまずつきません。

そのため、経過を見て手術まで含めた診断が必要かどうかを考えるのが、一般的です。

①や②の場合は、炎症が静まれば消えますし、細菌の繁殖が盛んになると大きくなります。

③は、感染によってリンパ節が腫れて濃く映ることもあります。

古いCT装置の場合は画像を1センチ刻みで撮影するものがあります。

そうすると、数ミリの影は検査時によって、映ったり映らなかったりすることがあります。

最近は、ヘリカルCTでの検査が多く、ミリ単位での撮影ができるため、このような問題も減ってきています。

日本CT検診学会のガイドラインでは、画像の影の状態と大きさに応じた、経過観察の判定基準を示しています。

具体的には、

(1)10ミリ未満のすりガラス状の影の場合は、3カ月後にCTの再検査、

(2)10~15ミリ以下の影ですりガラス状内に濃い影が混ざる場合は、1カ月後、

(3)10~15ミリ以上で濃い影の場合は、急に大きくなる場合があるので、要注意扱い、

となっています。

また学会では、経過観察のうえで、大きくなる場合や変化がない場合は、組織をとって生検を行うことを推奨しています。

ただし、ミリ単位の小さいものは、大きくなるまでCT検査で経過を見ることになります。

通常、10ミリに満たない影については、3カ月から半年の間様子を見るのが一般的です。


肺がん血液検査

血液検査については、CEAなどに代表される腫瘍マーカー検査があります。

しかし、肺がんの診療においては、術前の検査で値の高かった場合を除いて、再発に関する判断材料にはなりにくいとされています。

比較的早期の肺がんの多くは、腫瘍マーカーが正常なのです。