歩きスマホへの当たり屋にご注意

街を歩くと、必ずと言ってよいほど、若い女性が、歩きスマホをしているのを見かけます。

若い人はLINEやゲームをしながらの歩きスマホが多いと思いますが、若者ならずとも地図を見ながらの歩きスマホは最も多いと言われ、心当たりがある人は多いと思います。

歩きスマホはこけたり、交通事故にあったりと危険も多いのですが、最近、当たり屋にあい、犯罪の被害者になることが増えているそうです。

当たり屋は、歩きスマホをしている人にわざとぶつかり、元々壊れているスマホを落とし、壊れたからと修理代を払わせたり、新しいスマホを買わせたりするそうです。

さらに、たちの悪い当たり屋は、ぶつかった際に、高価な時計、貴金属、スマホ、ノートパソコンが傷ついた、割れた、壊れたと騒いで、恐喝まがいに騒ぐことがあります。

歩きスマホをしていた被害者側も、「スマホ操作していたし・・・」という罪悪感があり、当たり屋にペースをにぎられる事が多いそうです。

歩きスマホをしている人はぶつかったときの様子をよく見ていませんから、自分に非があると思ってしまうケースも少なくありません。

しかし、その場で要求された金銭を支払ってしまうようなことをすべきではありません。

歩きスマホの当たり屋による被害は、都会だけではなく、地方にも広がっています。

「2016年2月には、埼玉県さいたま市でスマホ当たり屋行為をした20代の男性が、詐欺未遂の容疑で逮捕されました。」

「千葉県では昨年6月、歩きスマホをしていた男性にわざとぶつかり、『画面が割れた』と言って修理代名目で6000円をだまし取った50代の男2人組が逮捕されています。」

他にも徳島県や埼玉県でも逮捕者が相次いでいます」


当たり屋のやり口

当然のことながら、当たり屋は、歩きスマホをして前方不注意の人を狙っています。

雑踏や人通りの多い場所は要注意です。

第3者を装った仲間がいることもあり、「あんたが悪い」と巧妙に攻め立ててくることもあります。

スマホを壊したと請求してくる当たり屋は、被害者がその場で払える金額を請求してくることが多いようです。

その金額は2万円から3万円位と言われています。

そのような相手として、弱そうな女性などをターゲットとして狙ってきます。

いきなり体当たりされて気が動転してしまい、「修理代の一部」として1万~1万5千円程度を実際に支払ってしまった被害者も多いそうです。

あらかじめ壊れたスマホを持って、歩きスマホをしている人に(互いにを装って)ぶつかって落とし損害賠償を要求する手口です。

警察を呼んでも、物証が壊れたスマホだけなので、双方過失で半額で落着する方向に持っていくように仕向けるのが、当たり屋の本当の狙いです。

高級腕時計を身に着けた状態で転倒をする場合もあります。

まずは時計をバーンと路面に叩きつけて壊して、「これ、どうしてくれるんだ?」という感じで修理費を要求します。

この時、元々壊れた高級腕時計を使います。

ネットなどで、ジャンク品として激安で出品されている、高級ブランド時計を大量に購入して当たり屋詐欺に使います。

そして、オーバーリアクションで転ぶことによって、周りの人たちがふりかえって見るように仕向けます。

「時計が!」と叫んで、いじっている間に、壊れたとする当たったその時間に設定します。

当たり屋は闇雲に当たりに行きません。

狙われるのは、お金持ちに見える人で、首や手首にアクセサリーをジャラジャラつけている人や、高級なスーツを着ている人です。

正面からぶつかると、ある程度自分にも過失が発生してしまうので、全然周りを見ていない人に対し、わざわざ背中を向けて、ぶつかるように仕向けます。

相手が自転車のながらスマホの場合は、相手に過失があるので、正面からぶつけてもらいます。

もし、相手が支払いをしぶっても、「警察に行きましょう!」と、当たり屋が自分から言います。

結局、スマホをいじりながら歩いて相手を転倒させてケガをさせたりすると、「過失傷害罪」になるため、「警察に行って過失傷害かジャッジしてもらおう」という話をすると、相手が面倒くさくなり、その場で示談になったり、互いの連絡先を交換して、後日改めて示談という流れになると、当たり屋は言います。

時計が壊れたということで、示談金は10万〜30万くらいになるとのことです。

さらに、大金を分捕るために狙うのが「保険」です。

保険会社がお金を支払う場合があるので、その時は徹底的に支払わせるといいます。

スマホの細かい傷まで全部見積もりを出して、修理費として請求するように心がけていると当たり屋はいいます。

自宅に火災保険が入っていれば、ケガさせた場合、個人賠償責任保険があります。

この元締めの二人組が始めた当たり屋の手口をマニュアル化し、その約20人の子分が、全国で当たり屋家業をしているといいます。


その場でお金を払わない

当たり屋の被害にあったときに、気が動転してしまい、1万~1.5万円をその場で払ってしまう人もいますが、絶対にその場で払ってはいけません。

警察を呼ぶか、最寄りの交番まで行くようにします。


相手の話を録音する

「やられた」と思ったら、すぐにスマホの録音アプリで相手の話をすべて録音します。

当たり屋の話は、必ずどこかで矛盾が出てきます。

ただ、その矛盾が生じたときに証拠が残っていないとこちらも強く主張することができないため、会話を録音するのが一番確実です。

特に、事故直後に話していたことと、警察が来てから言うことに矛盾が生じる場合が多いようですので証拠として残せるように、話を録音します。

相手に矛盾が多いことがわかれば、警察もこちらの言うことに耳を傾けるようになります。


相手に詳細な話をさせる

当たり屋はつじつま合わせの台本は頭に入っていますが、準備していないことを聞かれると、とたんに答えが怪しくなることがあります。

1:どこに住んでいるのか。
2:どこへ行く途中だったのか。
3:なぜこの道を通ったのか。

優秀な警察官であれば、これらはこちらが聞かなくても聞いてくれますが、聞いてくれない場合はこちらから聞くしかありません。

相手に答える義務はありませんが、答えなければ相手が怪しくなるだけですので、どちらにしても聞く価値はあります。

当たり屋は自宅近くよりは、知り合いの少ない地域を選ぶ傾向があり、不自然に遠いところに住んでいる場合はかなり怪しいです。


警察は民事不介入

こんな暴力団関係者に脅されたら、市民はたまったものではありません。

実際には、民事不介入といって、警察が味方になってくれない場合もありますが、常習的な当たり屋であれば、警察と関わることは避けたがります。

しかし警察に行けば助けてもらえると思い、交番に行けば助かると思うかもしれませんが、実は簡単には解決しない場合もあります。

警察は、物損事故「スマホが壊れた、高級靴、鞄が傷ついた、ノートパソコンが壊れた」といったものには、民事不介入の原則で、話は聞いたとしても、損害賠償に関しては、基本的に当事者同士で話し合って解決してくださいとしかいってくれません。

事故の記録はしますが、当たり屋が交番で「数万円弁償してくれ」と横で聞いていたとしても話をスルーされがちです(警察は弱者の味方だと思いますが、意外とお役所的です)

警察で話すと、住所を知られることがあり、家まで押しかけてこられたらどうしようと不安にもなります。

その場で示談してしまえと考え勝ちですが、そのような場合は、弁護士を利用します。


弁護士

歩きスマホをしていたため人にぶつかってしまい、人の所有物を壊してしまった場合、物を壊された側がする金銭請求は不法行為に基づく損害賠償請求です。

不法行為に基づく損害賠償請求は、①請求者の権利又は法律上保護される利益の存在、②被請求者が①を侵害したこと、③②についての被請求者の故意又は過失、④損害の発生及び額、⑤②と④の因果関係を、請求者が全て証明したときに認められます。

また、請求者にも過失がある場合、過失相殺といって、過失割合に応じた賠償をすることになります。

歩きスマホをしているとき、ぶつかってきた側がスマホを落としたため、修理代名目の金銭を請求してくるケースでは、上記①~⑤の様々な要件が問題になります。

このようなケースで金銭請求された場合には、その場でお金を支払うのではなく、弁護士に相談します。

また、悪質なケースでは、金銭請求をすることが恐喝罪に該当しますので、交番に助けを求めます。

交番に行ってもなお請求を続けてくるような場合には、『ここで言い争っていてもはじまらないので、正式に書面で請求してください。弁護士さんと協議のうえで回答します』と伝えて、早急に弁護士を介入させて解決を図るべきです。

実質的に考えても、裁判をするには、自分で訴状を書くのは大変なので、当たり屋としても弁護士に依頼する必要があると思いますが、弁護士も無料ではありません。

5万円を回収するために10万円をかける当たり屋はまずいません。

だとすれば、当たり屋がわずかなお金を狙って、弁護士に訴訟を依頼する可能性はまず考えられません。


「当たり屋」の刑事責任

歩きスマホをしている人にぶつかり、金銭を請求する行為は、その方法によっては恐喝罪になり得ます。

実際に、歩きスマホをしている人にわざとぶつかり、脅迫して金銭を出させようとして逮捕されたという事案も発生しています。

「元々壊れていたものを『今壊れた』と相手を騙す発言をして、それを被害者が信じて錯誤に陥り、金銭の支払いをした時点で詐欺の既遂罪となります。

被害者が騙されることなく支払いをしなくても、詐欺未遂罪となります。

また、歩きスマホをしている人に対して体当たりをして、歩きスマホに対する注意喚起をしようとしているケースも見受けられます。

このような行為は暴行罪に該当し得ますし、万が一、歩きスマホをしている人が転んで怪我をしてしまった場合には、傷害罪に該当し得ます。


予防法

スマホ当たり屋から身を守るには、歩きスマホしている人とはぶつからないようにするのが第一の策となります。

そのためにもまず自身が歩きスマホ、ながらスマホをしないことがもっとも大切です。

スマホに限らず音楽プレーヤーなどの操作や本を読みながらも危険です。

ながら歩きをせず、操作が必要な場合は端に寄って立ち止まって操作をします。

また、どこに行くにも注意を怠らないようにします

詐欺グループはさまざまな手口でお金を巻き上げようとします。

日頃の周囲に気を配る行為が犯罪に巻き込まれない第一歩となります。