映画「パンズ・ラビリンス」


「パンズ・ラビリンス」は、メキシコ人の鬼才ギレルモ・デル・トロ監督による、1940年フランコ政権下のスペインの片田舎を舞台にしたダーク・ファンタジーの異色作だそうです。

ファンタジーなのにダークとは頭を傾げますが、映画を観て納得しました。

「パンズ・ラビリンス」は世界各国で数々の映画賞を受け、第79回アカデミー賞では撮影賞、美術賞、メイクアップ賞を受賞し、外国語映画賞では次点となりました。

スペイン内戦のリアリズム表現と少女が空想する幻想世界の特殊撮影が同時進行の物語として描写されています。

「パンズ・ラビリンス」の時代背景、舞台背景も、普通一般のファンタジー(おとぎ話)とは異なります。

最初に暗い画面で、少女が血を流して横たわり、今まさにこと切れようとしているシーンから物語が始まるのもファンタジーとしては異色です。

内戦で仕立て屋の父親を亡くした少女オフェリアは、妊娠中の母親と共に、再婚相手であり独裁政権陸軍のビダル大尉に引き取られ、森の中に軍が
駐留する家屋に移り住みます

少女オフェリアは、森の中で、昆虫に姿を変えた妖精に導かれ、謎めいた迷宮へと足を踏み入れます。

すると迷宮の守護神パンが現われ、パンは、オフェリアに「あなたは本当は魔法の王国のプリンセス。3つの試練を果たせば王国に帰れます」とささやきます。

彼女は王国に帰るための3つの試練を受けることになります。

この守護神パンが、映画「エイリアン」をほうふつとさせるようなグロテスクな姿をしています。

オフェリアを導く妖精が、カマキリから、ティンカーベルのような姿に変わるのですが、これも目鼻のはっきりしない、グレーでぬめっとした姿形です。

オフェリアがパンから言われた試練のために、泥だらけになりながら、大きな木の根元から入っていくのですが、その中の光景は虫嫌いな女性がみたら卒倒しそうです。

また地底に住む目のない怪人に、オフェリアを導く小さな妖精が食べられてしまうシーンも、とてもリアルで、これは小さな子供向けのお話ではないのだと納得します。

オフェリアが幻想の世界を訪れている間にも、現実ではビダル大尉による容赦のない掃討が繰り広げられ、
残忍で目をそむけたくなるような拷問の場面も描かれています。

結局、母親はオフェリアの弟を生んで亡くなり、パンにそそのかされて、オフェリアは弟を抱えて、迷宮へ逃げ込みます。

そして地底の世界の入口で、パンに弟の血を注ぎ込むよう命じられますが、オフェリアは頑なに拒みます。

直後に追ってきたビダル大尉に弟を取り返され、オフェリアはその場で
ビダル大尉に銃で撃たれ倒れます。

それが映画の最初のシーンでした。

ビダル大尉は、レジスタンスの兵士に銃撃されて死にますが、弟は助かりました。

オフェリアは、自らの死という犠牲によって、最後の試練を乗り越え、地底の王国の王女に戻ります。

この最後の映像が、ポスターにきらきらしく描かれたシーンでした。

確かにめでたしめでたしと単純には喜べない、ダーク・ファンタジーでした。