高齢者の腎臓機能低下


私の義父は93歳の高齢ですが、加齢による腎臓機能の低下が、いつも診てもらっている医師から指摘されています。

歳を取れば、多かれ少なかれ内臓機能の低下はありますが、本人は腎臓透析もやっておらず、傍目では至って元気にみえます。


加齢とともに腎臓の機能は低下

腎臓の機能は若いことが100%とすれば、特殊な病気が無くても年々少なくとも1%ずつ低下しています。

これに生活習慣病の高血圧や糖尿病が加われば、年間2%から場合によっては5%以上下がることもあります。

下がっていった腎機能が10%以下となったら透析療法か腎臓移植を行わないと死を迎えます。


加齢による腎臓の変化

腎臓には毛細血管のかたまりである「糸球体」がたくさんつまっています。

加齢とともに糸球体が硬化し、その結果、濾過機能が低下した糸球体が徐々に増えます。

また、原尿を再吸収する尿細管の細胞膜が肥厚したり、尿細管の間質が線維化するなどの形態的な変化も現れます。

毛細血管には動脈硬化が起こります。 

腎臓の糸球体は、一部が悪くなると他の糸球体が働きを補います。

そのため、腎臓全体の働きは落ちてはきません。

しかし、障害が進むと腎臓の血流量が減り、糸球体での濾過能力が低下するだけでなく、尿の濃縮力も低下していきます。

高齢者が多尿、頻尿になるのは、加齢によって腎機能が低下するためです。

通常、1日に8〜10回以上排尿するような場合を頻尿と呼びます。


サルコペニアと腎臓

年をとると普通に生活を送っていても全身の筋肉が減っていく「サルコペニア」という状態になることがあります。

「サルコペニア」と呼ばれるこの現象は腎臓とも関係していることが、近年わかってきています。

サルコペニアになると体を動かすことがおっくうになってしまい、筋肉がさらに減ってしまいます。

転びやすくなったり、転んで骨折したりして、寝たきりの生活になり、さらに体を動かす機会が減る、という悪循環が起こりやすくなります。

腎臓の働きが低下した人は特にサルコペニアになりやすいとの研究もあります。

サルコペニアの予防と改善には、適切な運動とタンパク質を十分に含んだバランスの良い食事をとることが大切です。


フレイルと腎臓

体力・気力が衰えて日常生活を送りにくくなる現象を「フレイル」と言います。

「年のせい」と言われていたフレイルですが、予防・改善できること、フレイルの進行の速さと腎臓の健康状態は関係していることが近年わかってきています。

腎臓病がある高齢の人は健康な同世代の人よりも、多くがフレイルの状態に陥っています。

腎臓病が進んでいる場合、タンパク質の量を抑えた食事にする必要があるため、筋肉が減りやすいことなどが原因の一つと考えられています。

フレイルは早期に発見して、適切な対処で改善すれば、体力・気力の向上が期待できます。

フレイルを改善するには、日ごろからよく体を動かし、栄養バランスの良い食事をしっかりとることが大切です。

また、これらの対処法はフレイルの予防法でもあります。


腎臓の働き悪化時の症状

尿が出にくくなり、むくみやすくなります。

余分な水分がうまく排出できず、血圧が上がりやすくなります。

また、薬の成分が排出されにくくなって血液中に溜まってしまい、思わぬ副作用が起きることがあります。

腎臓の働きが低下すると、クレアチニン値が高くなります。

逆に、筋肉が減ってしまうとクレアチニン値が低くなることがあります。

クレアチニン値が低いままであれば、腎臓の働きが低下していることに気づけないかもしれません。

クレアチニンは、筋肉を動かすと発生する、体に不要なものの一つです。

クレアチニンは尿以外では体の外に排出されないため、血液中のクレアチニン値が高い場合は、腎臓の働きが悪くなっている目安になります。


慢性腎臓病

eGFR(推定腎濾過率≒腎機能 )が60以下となると慢性腎臓病ということになります。

60以下の人は今後の生活態度如何で将来透析をする可能性が高いということになります。

30以下では定期的に医療機関の通院が必要です。

15以下となると透析を受ける準備期間となり、8以下で透析療法導入となります。


尿毒症

腎臓の糸球体が減少することにより、血液中の尿素窒素や尿酸、クレアチニンなどの値が上昇します。

その結果、尿毒症と呼ばれる一連の症状を併発することがあります。

尿毒症の典型的な症状は、食欲不振や悪心などの消化器症状です。

また、中枢神経症状として意識障害や幻覚が生じたり、末梢神経症状として知覚障害が生じたりすることがあります。


腎性貧血

貧血とは、血中の赤血球の数が少なくなる症状です。

赤血球は骨髄と呼ばれる組織で作られていますが、何らかの原因によって骨髄内における造血量が減少すると、腎臓から造血ホルモンが分泌されて貧血を回避する仕組みになっています。

ところが腎機能が低下すると、この造血ホルモンの分泌量も減少します。

その結果、腎性貧血と呼ばれる貧血症状が現れることがあります。


ネフローゼ症候群とタンパク質制限

糸球体に異常が起こり、大量のタンパク質が尿に出てしまう疾患をネフローゼ症候群といいます。

タンパク尿、低タンパク血症、浮腫、脂質異常症の4つが典型的な症状です。 

ネフローゼ症候群では、以前はタンパク質制限食厳守でしたが、最近ではその症状により、制限がかなり緩やかになっています。

ネフローゼ症候群の時にタンパク質の摂取を制限するのは、次の理由からです。 

私たちの身体のタンパク質はもともと肝臓で作られていますが、ネフローゼ症候群では、そのタンパク質が腎臓からどんどん出て行ってタンパク質が足りなくなってしまいます。

そこで肝臓では、次々にタンパク質を作ろうと無理を重ねます。

その時にタンパク質の製造と一緒に脂肪が作られたり、アンモニアの分解が滞ったりします。 

そのため、以前は肝臓に無理にタンパク質を作らせないように、その材料としてのタンパク質の摂取を制限しました。

しかし、最近では、タンパク質摂取制限による副作用を考慮し、あまり厳しく制限しないようになってきています。


透析患者の死亡原因

透析患者の死亡原因で最も多いのは「心不全」で、他に「脳血管障害」や「心筋梗塞」などが挙げられます。

大きな原因とされているのが「血清リン値」の上昇で、長期に渡る透析の影響が心血管系の病気の遠因となっている疑いがあります。

血中リン濃度が高い状態が続くと、二次性副甲状腺機能亢進症(骨がもろくなり、骨が痛んだり関節痛が起こる病気)や、深刻な動脈硬化を引き起こす可能性があります。

特に後者は深刻で、異所性石灰化によって心臓の弁、血管、肺などに石灰成分が沈着し、血行が悪くなったり、手足の先といった末端部に届く血液が少なくなったりすることがあります。


腎臓病に対する「植物酵素」の改善効果に関する研究

鈴鹿医療科学大学の研究チームによると、マウスを使った腸機能の増加による腎機能回復の研究で、「植物酵素」を投与したマウスは、投与しなかったマウスに比べて尿タンパクの数値低下が認められ、腸機能の増加と栄養吸収によって生じる腎機能への負担軽減につながり、衰えていた腎機能の回復に寄与することが分かりました。

「植物酵素」による腸内環境の最適化が腎障害の改善に著しい影響を与えるだけに留まらず、糖尿病性腎症への病状進展も抑制する証拠も確認できたことから、腎障害の改善に「植物酵素」がとても有用であることが分かったそうです。