遠野遥の「破局」はラグビーと筋トレで鍛えた体育系大学生が、公務員試験の最後の面接試験を無事終えて結果を明日に控え、恋愛のもつれから刹那の凶暴性により空回りをして堕ちていく話


遠野遥の「破局」を読み終えました。

主人公の陽介は法学部の大学4年生です。

物語の最初の出だしは、知らない者にとっては少し分かり難いラグビーの話です。

その話の展開から、主人公はラグビーのコーチかと想像します。

高校のラグビーチームの顧問である佐々木の家で肉を食いながら、延々とラグビーの試合の話が続きます。

そこまでで、これはラグビーを舞台にしたスポーツ小説かと思ってしまいますが、次の章でガラリと話の展開が変わります。

陽介の友人である膝から携帯へ届いたメッセージ、スズメの話を起点として、彼の日常が描かれていきます。

陽介は友人である膝に誘われて、彼の落語サークルでの最後のライブに出かけていきます。

そこで、18歳の新入生である灯と知り合います。

陽介には、恋人の麻衣子がいて、彼女は政治塾に通い、時々父親のつてで知り合ったという議員の手伝いもしていました。

彼女は、いつかはどこかの議員に立候補し、政治家になる夢を持っていました。

途中、陽介への膝からのメッセージが挿入され、膝がエントリーシートを書き始めた話が書かれていて、大学生活の終盤の雰囲気が描かれています。

陽介は公務員試験の筆記試験を首尾よく終えて、試験の後に合うことを約束していた麻衣子へ、久しぶりに連絡をします。

麻衣子は、陽介との約束よりも、50代半ばの小山議員との関わりを優先し、将来のためとはいえ、一体どこまで小山の要求を受け入れるのか、危うさを感じさせます。

そこへ、灯から電話があり、二人は一緒に食事をして、灯と度々合うようになると、やがて麻衣子とは別れます。

陽介は次第に灯との関係を深めていきます。

ある夜、午前1時過ぎに麻衣子が訪ねてきます。

その夜の麻衣子の一切の躊躇が感じられない習熟しているように見える性に、いろいろと想像をめぐらされます。

陽介は、公務員試験の筆記試験を、無事突破します。

この後、陽介は麻衣子と大学のカフェテリアで会い、麻衣子から彼女が小学生の頃、男に追われた夢を最近よくみるという話を聞きます。

そして陽介は、面接試験も無難に済ませてあとは結果を待つだけでした。

陽介は、他を受けるつもりはなかったので、これで就職活動は終わりでした。

大学の期末試験までまだ余裕があったため、陽介は灯と北海道旅行をし、さらに距離がつまっていく二人の関係が描かれています。

再び高校のラグビーチームで厳しい指導をする陽介が描かれ、練習後に偶然入ったファーストフード店で、チームメンバーの陽介への悪態を耳にしていまい、陽介には苛々がつのります。

膝からメッセージが来て、あれから何社も受けまくって、今日初めて内々定が出たと言ってきます。

しかし、もう一度お笑いを一から勉強して、今度こそお笑いで勝負したいと言います。

膝は飛ぶ降りるかどうするか、揺れる気持ちを陽介に話し、陽介に明日わかる試験の結果が出たら連絡をくれと伝えてきます。

灯の部屋に泊まった翌日、二人で駅の近くのカフェへ行きます。

そのカフェで、灯は陽介に麻衣子と偶然会った話をします。

灯は近くのカフェで麻衣子と話をして、麻衣子から少し前まで陽介と付き合っていたという話を聞き、さらに麻衣子が今は広告代理店で働く人と結婚を視野に入れた付き合いをしていると聞きます。

そして別れ際、最後に、麻衣子は、この前終電を逃して、陽介の家で休ませてもらったのだと微笑みます。

灯は、陽介のことを許せないと言い、席を立って、駅とは反対の方向へ歩き出します。

灯は陽介の手を払い、歩く速度を速めます。

灯が駆けて行った先に、スポーツウェアを着た筋肉質な大学生風の男が立っていて、陽介を遮ります。

陽介は男ともつれあい、拳を固め、あらん限りの力で、男の顎を殴り飛ばしました。

男は、陽介が肩を叩いたり体を揺すったりしても何の反応もありません。

視界の端に若い女が立っていて、どこかへ電話していました。

やがて、女の向こうから若い警官が2人やってきて、陽介を取り押さえました。

警官の後ろに灯が立っていて、仰向けになっていた陽介を黙って見下ろしていました。

しばらくして、灯は陽介に背中を向けて脇道に入っていきました。