排尿障害でぼうこうの収縮機能が落ちて排尿できなくなる


排尿障害

多くの男性は加齢にともない前立腺が肥大し、尿が出にくくなります。

前立腺がなぜ大きくなるのかは、実はよくわかっていません。

ただ、男性ホルモンのテストステロンの分泌量が減ると、前立腺の肥大が起こりやすくなります。

血流の低下も一因で、心臓や血管の病気がある人には前立腺肥大症が増える傾向があります。

個人差はあるものの、加齢に伴ってテストステロンの分泌量は減り、血流も滞りがちですから、高齢男性には前立腺肥大症が起こりやすいのです。

前立腺が肥大すると、その圧迫によって膀胱や尿道括約筋が刺激され、日中や夜間の頻尿が起こります。

さらに肥大が進むと、尿道が圧迫され、尿が出にくくなります。トイレに行っても尿がスッキリと出きらず、残尿感が生じることが多くなります。

ばい菌を含んだ尿が滞った状態を放置していると、尿路感染症を引き起こし、排尿時痛や血尿が出ることもあります。

残尿の量が多くなると、膀胱の筋肉が伸びきってしまい、排尿機能が衰えます。

すると、膀胱にたまりきった尿が尿道のすき間からもれ出す「溢流性尿失禁」が起こります。

そして最終的には、まったく尿が出なくなる「尿閉」という恐ろしい状態になるのです。

ここにいたると、尿道から膀胱にカテーテルを入れ、強制的に尿を出すしかなくなります。

加齢とともに、膀胱排尿筋の収縮力低下や、膀胱出口の抵抗が大きくなることなどにより、排尿困難に陥ります。

萎縮膀胱といって膀胱の変形が進み、壁が硬くなってしまうこともあります。

尿がでにくくなる状態を排尿障害と言いますが、重症になると、膀胱に尿がたくさん溜まっているのにも関わらず、自分で尿を全く出せない尿閉になってしまいます。

自分で排尿した後に膀胱内に残っている尿のことを残尿と言います。

残尿は50ml以下が正常ですが、300ml以上たまっている状態を残尿過多といいます。

また、高齢者では、蓄尿障害と排出障害が同時に生じる場合が多くなります。

蓄尿障害とは、文字通り「ためておくことができなくなる」障害です。

これは、膀胱排尿筋の過活動や、膀胱出口の抵抗が弱くなる、尿道閉鎖圧が低下するといったことが原因となり、尿失禁や頻尿が生じます。

蓄尿障害の主な症状は尿失禁であり、日本の高齢者のうち約400万人が抱える症状です。

また、尿失禁を自覚している高齢者は、女性が男性の倍以上となり、高齢女性にとって深刻な問題となっています。

重度の糖尿病がある人、寝たきりの状態で活動性が低下した人、脊髄疾患や脳血管疾患の後も、膀胱の機能が低下し尿閉になることがあります。

排出障害には大きく2つの症状、残尿感(ざんにょうかん:排尿後、膀胱内に尿が残っている感じ)と、排尿後尿滴下(はいにょうごにょうてきか:排尿直後に不随意に尿が出てくる)がみられます。

これらは、膀胱がきちんと収縮しないため、尿を排出できない「膀胱収縮障害」と、何らかの原因により尿路が狭くなり、尿が排出できない「尿路通過障害」よりみられる症状です。

中でも前立腺肥大症は、高齢男性の尿排出障害でもっとも頻度の高い原因疾患です。

加齢とともに増え、70才以上の男性の約70%に前立腺肥大症があるといわれています。

治療として薬物療法や、外科的な治療があります。

膀胱に大量の尿が貯留し排出できない状態が続くと、膀胱尿管逆流を起こしたり、腎臓に尿がうっ滞して水腎症を発症する恐れがあります。

また尿を作る腎臓に負担がかかり、腎不全(尿毒症)の状態となり、最悪命に関わる場合もあります。

したがって、溜まった尿を体外に出すための治療が必要です。 

治療には一般的に薬物治療、手術治療(内視鏡下前立腺切除術)、自己導尿(自分で尿道に細いカテーテルを挿入し排尿する)が選択されますが、薬物治療が効かない場合も少なくありません。

また高齢のため手術治療が受けられない場合や、自己導尿を行うことが難しい患者もいます。

その場合、尿道カテーテル(尿道バルーン)を挿入し尿を出す治療がやむを得ず選択されます。


自己導尿

カテーテルを使った導尿は、手術後、体を動かせない場合に回復まで行われている一般的方法ですが、自己導尿は、1日に数回、患者自身が尿道からカテーテルを入れて1日4〜6回程度尿を取る方法です。

間欠導尿とは、膀胱容量が500mLを超えないように一定時間ごとに導尿することです。

経過とともに残尿が減少し、自己導尿の回数を減らしたり、中止できたりする場合もありますが、自己判断せず、必ず専門医の判断に従います。

自己導尿回数の設定の目安は、残尿量が、200ml以上で1日5回~6回、100~200mlで2~4回、50~100mlで1~2回、50ml以下で導尿中止となります。

自己導尿は、”尿をためてから出す”という膀胱本来の運動を再現できるため、膀胱機能の回復が見込めることもあります。


尿が残ってしまうと膀胱はいつも広がった状態になり 膀胱本来の筋肉がうまく働きません。

自己導尿をして膀胱の中を空っぽにすることで膀胱本来の筋肉の運動を 再現できるので膀胱機能の回復を見込めます。

尿道カテーテルを入れっぱなしにしたり、採尿バッグを接続したままの生活とは異なり、自己導尿では身体の動きが妨げられないため、普段の生活への制限が無く社会参加も可能です。


尿道カテーテル


尿道カテーテル法とは膀胱に溜まった尿を、カテーテルを通じて体外に出す方法です。

バルーンカテーテル、あるいは膀胱留置カテーテルともいいます。

カテーテルはラテックスもしくはシリコンで出来ています。

長期間留置されていると詰まってしまったりするため定期的(通常2週から4週)に交換が必要となります。

尿道カテーテルは尿を確実に体外に出すことができる治療ですが、患者の苦痛やカテーテルに関連したトラブルが多いのが問題です。

尿道カテーテルが挿入された場合、以下のトラブルが生じる可能性があります。

「尿道や膀胱の痛みがある」

「カテーテルが詰まってしまう」

「カテーテルが繋がっており、日常動作に制限が出てしまう、外出が億劫になる、旅行に行きたくない」

「カテーテルが引っ張られ、尿道が傷ついてしまう」

「ばい菌感染がおきて尿が汚れてしまう」

「定期交換が痛い・つらい」

このようなカテーテルのトラブルが生じた場合、「尿道ステント」を挿入することで、それらの悩みから解放される可能性があります。


尿道ステント

尿道ステントとは、前立腺の中を通る尿道にステントを挿入し、尿の通り道を開通させ、排尿できるようにする治療法です。

尿道ステント治療は医療保険が適用されます。また高額療養費制度が利用可能です。




尿道ステント治療の合併症

尿道の痛み・違和感

尿路感染症

肉眼的血尿

尿失禁

ステントへの結石付着

排尿困難

尿道ステント挿入後数日で改善しない場合は、痛み止めや抗生物質の投与を行います。

重症の感染症が生じた場合は入れたステントを抜かなければならない可能性もあります。

尿が無意識に漏れることがあります。

その場合は尿道ステントの位置を修正する可能性があります。

膀胱の収縮機能が悪い場合には、尿を我慢する括約筋にステントを通し、わざと尿が漏れるようにすることがあります。

その場合、オムツでの対応が必要になってきます。

尿道ステント挿入後も、うまく排尿ができない場合があり得ます。

その場合、ステントの位置や長さを変えるなどの方法を試みますが、やはりうまく尿を出せない可能性があります。

その場合はやはり尿道カテーテルを再度入れなければなりません。


膀胱瘻

膀胱瘻(ぼうこうろう)とは、何らかの理由で自力で排尿ができない場合に、下腹部の皮膚から直接膀胱まで、尿道カテーテルを入れる方法です。


排泄は、腹部の開口部ストーマ(Stoma)から行う事になります。

尿は垂れ流しになってしまうので、ストーマから出る尿を溜めるストーマ用装具を使用します。

通常専用の袋(パウチ)を下腹部に貼付して膀胱の機能をこれで補います。

ある程度の尿が溜まった時点でコックを開け排泄します。

膀胱瘻は、男性の場合、尿道カテーテルと較べ、尿道にカテーテルが通らないため、感染症のリスクが減ります。

膀胱瘻は、男性のみに起こる尿路感染として前立腺炎と精巣上体炎が避けられます。