腎臓の悪い人は食事療法が大切


高齢になると、色々な臓器の機能が低下します。

特に80歳、90歳にもなると、相当機能が低下して、腎臓が弱っていると、透析をしないまでも、医者から毎日の食事について注意を受けることもあります。


慢性腎臓病(CKD)

腎臓の機能が低下したり、たんぱく尿などの腎臓の異常が続いたりする病気である慢性腎臓病(CKD)の患者数は、日本国内に1,330万人(成人の8人に1人)、世界で9.1%が罹患しているとされ、非常に多い疾患です。

CKDの重症度分類(CKD診療ガイド2012)

原疾患ステージ蛋白尿区分
GFR区分(ml/分/1.73m2)G1正常または高値>=90
G2正常または軽度低下60~89
G3a軽度~中等度低下45~59
G3b中等度~高度低下30~44
G4高度低下15~29
G5末期腎不全<15

出典:日本腎臓学会-エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018より抜粋
URL:https://cdn.jsn.or.jp/data/CKD2018.pdf

G2までであれば、生活改善や適切な治療によって回復する可能性が高くなります。

G3以上になると、治療によって悪化を防ぐことはできますが、完全に回復することは難しいと言われています。


透析

さらに腎臓の機能が正常の10%以下に低下すると、尿から老廃物や水分が適切に排泄されなくなり、尿毒症・水分過多による心不全等の症状が出てくる危険性があり、老廃物・余分な水分を除去するために透析療法が必要になります。

自分の腎臓で自分のからだを浄化しきれなくなると、老廃物が蓄積して全身のむくみ、倦怠感、食欲低下、嘔吐、頭痛、手足のしびれ・むずむず、視力障害(目がかすむ)などの尿毒症状が出現したり、心不全や呼吸困難、重度の高血圧、肺水腫を起こし、息切れや呼吸苦が出現しやすくなり、放っておけば命にかかわってしまいます。

クレアチニン(Cr)が5〜7 mg/dLあたりになると透析の導入が検討されます。

クレアチニン(Cr)7.0 mg/dL、血中尿素窒素(BUN)80mg/dLといった急性腎不全では透析導入となることが多いです。

透析導入基準(案)によれば、臨床症状、腎機能(検査値)、日常生活障害度、年齢によって腎機能障害のスコア化を行い、60点以上となったら透析導入を行う、と定めています。「腎機能:血清クレアチニン(クレアチニンクリアランス)の数値/点数=8mg/dl以上(10ml/min以下) 30点/
5~8mg/dl(10~20ml/min未満) 20点/
3~5mg/dl未満(20~30ml/min未満) 10点」

透析導入をできるだけ遅らせるため、降圧薬による血圧コントロールや食事療法がおこなわれます。


慢性腎臓病の食事療法

慢性腎臓病、特にステージ3~5における食事療法について、腎機能障害が進行してきた場合には、蛋白制限、塩分制限、カリウム制限などを行うことにより、腎機能障害の進行を抑え、慢性腎臓病の合併症を予防します。


蛋白制限

食事蛋白は老廃物の一種である窒素代謝物を作ります。

正常の腎機能であれば、それを処理するのに十分な糸球体があります。

しかし腎機能が低下していると、残った糸球体1つ1つがその能力を超えて処理をしようとします(糸球体過剰濾過)。

この状態は長くは続かず、徐々にそれぞれの糸球体の濾過機能も落ちてきてしまうと考えられています。

その負担を軽減するために行われるのが食事蛋白の摂取制限です。

日本腎臓学会のガイドラインでは、標準体重当たり0.6~0.7g/日が推奨されています。

ステージ別たんぱく質摂取目安量

G1~2 1.3g×標準体重(kg)/日

G3a  0.8~1.0g×標準体重/日

G3b  0.6~0.8g×標準体重/日

G4   0.6~0.8g×標準体重/日

G5  0.6~0.8g×標準体重/日

蛋白制限を行うと、その分の摂取カロリーが減ります。

カロリー不足になると、人間は筋肉から痩せていきます。

筋肉は蛋白質であり、それが分解されるということは「自分の肉を食べている」(蛋白異化亢進)ことになり、むしろ窒素代謝物が増えて(BUNが増えます)、上述の糸球体過剰濾過に拍車をかけてしまうことになります。

そこで、蛋白質以外の栄養素である「糖質」と「脂質」でカロリーを補給します。

(ゼリーやビスケットなど)も使うことも奨められます。

具体的な目標摂取カロリーは、標準体重(身長m×身長m×22)当たり30~35 kcal/日です。


塩分制限

人間の体の60%は電解質(塩分やカリウム)などを含んだ体液からできています。

その体液量を調節しているのが塩分であり、その排泄を担っているのが腎臓です。

したがって、腎機能が低下すると塩分の排泄機能が鈍り、塩分を摂りすぎると排泄できずに体に溜まります。

もともと塩分は水と一緒になるので、それが「体液(塩水)」として体に溜まり(体液過剰)、むくみ(浮腫)、高血圧をもたらし、さらに進めば、心不全、肺水腫にもなります。

 具体的に、塩分は1日6g以下を目標にします。

ちなみに、日本人の一日の平均摂取量は男性で11.0g、女性で9.2gですので(平成27年国民健康・栄養調査)、この目標はなかなか厳しい数値です。


カリウム制限

腎臓の機能が低下すると、体内のカリウムを排泄する機能も低下します。

体内のカリウムが増え高カリウム血症になってしまうため、カリウムの摂取量を制限する必要があります。

高カリウム血症を放置して悪化すると、不整脈による突然死の危険性も出てきます。

常に血液検査で確認する必要があり、血清カリウム値として、4.0〜5.4(mEq/L)の範囲内で管理することが推奨されており、一般的に5.5以上はカリウムの血中濃度が高い高カリウム血症といわれます。

7.0以上を超えると、不整脈などを引き起こしやすくなるという専門家の意見もあります。

血清カリウム値5.5mEq/L以下を目標に1日カリウム摂取量を1500mg以下に制限します。

ステージ別カリウム摂取目安量

G1~3a 基本的には制限はありません

G3b   2000mg/日以下

G4   1500mg/日以下

G5   1500mg/日以下

なお、カリウムは細胞の中に存在し、水やお湯に溶けるので、野菜などは小さく切って「湯でこぼし」「流水にさらす」などを行い、カリウム成分を少しでも除くことができます。

また、果物は缶詰から取り出した実はカリウムが少なくなっています。


リン制限

リンはとりすぎると血管が障害されます。

たんぱく質を制限すれば自然と制限されるミネラルの1種ですが、最近はリンが含まれている食品添加物が増えているので、加工食品にも注意が必要です。

肉や魚などに含まれている有機リンは摂取しても半分ほどしか吸収されませんが、食品添加物の無機リンは摂取するとほとんどが吸収されてしまいます。

加工食品を利用する場合は、成分表示をよく見てリンを避けるようにします。


食事療法

カリウムの多い食品

果物バナナが最も多く、なつみかん、メロンなどが続きます。干し柿、100%ジュースも多く、注意が必要です。
野菜・いもいも類は全体的に多く、特に里芋が一番多く含みます。かぼちゃ、にら、水菜、なす、白菜、セロリ、キャベツも比較的多く、切干大根やかぶなども多く含みます。
肉・魚すべて比較的多く含まれます。特にお刺身などは注意が必要です。
主食麺(茹でたあとに湯きりをします)
海藻類などとろろ昆布、干しひじき、納豆
調味料黒砂糖、だし
乳製品牛乳
お菓子スィートポテト、あんみつ
飲み物トマトジュース、野菜ジュース、豆乳、日本茶(玉露)、黒ビール ペットボトルのお茶やスポーツドリンクはそれほど多くありません。


食品の重さが軽いので、100g食べるのが困難だったりするので、一般的な食べる量でカリウムが多いものを列挙すると下記の通りです。

食品名目安量カリウム含有量
ほうれん草80g552mg
春菊80g368mg
さつまいも中1/5個(約50g)235mg
里いも中1個(約50g)320mg
じゃがいも中1/2個(約50g)235mg
トマト1個(約150g)315mg
キウイフルーツ大1個(約150g)435mg
バナナ中1本(約100g)360mg
アボガド1/2個(約70g)504mg
牛乳200g300mg
大豆(乾燥)20g380mg
あずき(乾燥)20g300mg
納豆1パック(50g)330mg
枝豆(ゆで)15さや(約40g)228mg
ひじき(乾燥)5g220mg
和牛もも(脂身なし)1切れ(約120g)420mg
さけ1切れ(約100g)490mg
まぐろ(めばち)刺身5切れ(60g)252mg
あじの開き(焼き)中1尾(約60g)240mg



カリウムは水に溶けやすい性質があるため、茹でたり水にさらしたりすると、カリウムの量を減らすことができます。

カリウム除去率の目安

ごぼう・にんじん 20~50%減

ほうれんそう・キャベツ 約46%減

かぼちゃ・オクラ 14~40%減

きのこ類 約30%減

いも類 約15%減


低カリウムの野菜

アルファルファのカリウム含有量 55㎎/100g

茹で もやしのカリウム含有量 70㎎/100g

カイワレ大根のカリウム含有量 99㎎/100g

もずくのカリウム含有量 2㎎/100g


おやつ=腎臓病の間食

・おせんべい

揚げせんべい、焼きせんべいなど色々と種類がありますが、基本的にはお米からできているのでタンパク質は少ないです。

・わらび餅・くず餅

わらび餅やくず餅の原材料は一般的にはさつまいもでん粉・くず粉などのでんぷんです。

そのため、100g当たりのタンパク質は0.1gであり、タンパク質が少ないお菓子です。

きな粉にはカリウムが多く含まれるため、かけ過ぎに注意します。

・寒天ゼリー

寒天はその殆どが「食物繊維」です。

そのため、タンパク質は殆ど含んでいません。

牛乳寒天などは要注意ですが、市販の粉で寒天を作ってフルーツ缶を添えれば、ボリュームもありますし、カリウムも抑えられます。

・水ようかん


1食分で若干1gを超えているものが多いですが、タンパク質は少ない方のお菓子といえます。

あずきが豆なので、カリウムが気になるところですが、水ようかんは、あんこを水で薄めているので商品にもよりますが、気にするほどの量ではありません。

・ういろう

ようかんと似たお菓子で、1食若干1gを超えているものが多いですが、「ういろう」もお勧めです。

米粉などに砂糖や湯水を練混ぜて蒸した和菓子であるため、タンパク質が少ないお菓子です。

あずきや栗が入っていないシンプルなものがおすすめです。