後鼻漏の症状は咳き込みや咳払い、むせる、痰がからむ、エヘン虫などの、のどの違和感
後鼻漏
慢性上咽頭炎、膿性痰、口臭、歯肉炎、慢性気管支炎、肺炎、食道炎、慢性胃炎などの原因となります。
後鼻漏(こうびろう)は、のどの奥へ鼻水が流れ込んでくる症状です。
平常時は意識せず鼻水を飲み込んでいますが、粘りのある鼻水が喉の奥を流れる、痰(たん)がからむ咳が止らない、などの不快な症状が出た場合は後鼻漏の可能性があります。
成人の3割に後鼻漏の疑いがあるという調査もあります。
病的な意味での後鼻漏は、副鼻腔炎(蓄膿症)やアレルギー性鼻炎に伴い、粘調なあるいは膿性な鼻水が喉の方へと流れることを言います。
さらには何も流れていないのに流れている感覚や喉に貯まる感覚のみがある後鼻漏感と呼ばれる症状もあります。
耳鼻科外来を受診する患者の内、後鼻漏を訴えるのは16%、実際に後鼻漏が確認できるのは約10%、 視診で確認できない後鼻漏、いわゆる後鼻漏感は約5%であったとの報告もあります。
通常、鼻の中で過剰に分泌された鼻水は、鼻の穴から前方へ「鼻水」となって出ていきます。
後鼻漏は、鼻水が外に出ずに鼻の後方から喉のほうに流れ落ちる症状です。
健康な状態でも、1日作られている鼻水(2〜6リットル)のうち30%(0.6〜2リットル)は鼻から喉に流れ、無意識に飲み込んでいるといわれています。
そのために、後鼻漏自体は自然な症状です。
しかしながら、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などで喉に流れ落ちる鼻水の量が増加したり、上咽頭炎で喉の奥に粘液が張り付いたりすると病的な後鼻漏になります。
鼻の穴をのぞくと、左右に「鼻腔(びくう)」と呼ばれる空洞があります。
鼻の構造
鼻腔は奥でのどにつながっており、周囲を取り囲むように、頭部の骨の中に「副鼻腔(ふくびくう)」と呼ばれる空洞が左右に4つずつ存在します。
口の天井には「軟口蓋(なんこうがい)」と呼ばれるやわらかい部分があり、のどの奥には軟口蓋後端の中央から垂れ下がっている乳頭状の突起「口蓋垂(こうがいすい)」があります。
ものを飲み込むと、軟口蓋との口蓋垂は奥に押し付けられ、のどから鼻腔に通じる道をふさぎます。
のどの内部の空間は「咽頭腔(いんとうくう)」と呼ばれており、入り口から上・中・下と大きく3つの部分に分かれています。
おもに機能するのは食べ物などを飲み込む時で、空気の通り道となる気管につながる空間は「喉頭腔(こうとうくう)」と呼ばれています。
食べ物などを飲み込むときは気管に入ってしまわないよう筋肉や神経が連動し、スムーズに食道へと送り込めるようになっています。
症状
異物感を感じることもあります。
後鼻漏は量が少なければ気にならないものです。
鼻水がのどにからむ
のどに流れ込んでくる入り口で鼻水がへばりつき、不快感や異物感につながって、鼻息が荒くなったり、鼻を鳴らしたりしてしまいます。
つかえた感じがする
唾を飲み込むたびにつかえるような感覚があったり、のどがひりひりして風邪のような状態が続いたりする症状です。
たばこや寒暖差、風邪などで悪化します。
たんがからむ
たんは肺や気管から出てくるものだけではなく、鼻腔から出てくる鼻水がもととなるものがあります。
これにより、のどの奥でたんがからんだような違和感を覚えます。
鼻水がのどをふさぐようにたまってしまうと、肺や気管に異常がなくても、咳が出ます。
後鼻漏も気管の中に入ってしまうと、咳が出てしまうケースがあります。
就寝中にのどに溜まった後鼻漏は粘り気が増し食道へ流れ落ちないために、横向きになって気道を確保しないと苦しくて寝られないという人もいます。
鼻腔や副鼻腔でウイルスや細菌などに感染し、炎症によって副鼻腔に膿が溜まる病気です。
一般的には「蓄膿症(ちくのうしょう)」と呼ばれています。
症状が重くなると、口の中がネバネバする・つばが増えるなどの感じにも悩まされるようになります。
夜、あおむけになって寝ている間に鼻水が鼻の奥から喉にかけてたまります。
そして、たまった鼻水は粘り気が増して喉に張り付くために、朝、起きたときに痰(たん)混じりの咳が多くでるようになります。
炎症で粘膜下の毛細血管が腫れたりすると鼻が詰まってますます後鼻漏が進みます。
口呼吸になって乾いた空気を気管に送り込みますのでのどの乾燥を促し違和感が増すだけでなく、細菌やウイルス、アレルゲンなどの侵入を容易に許してしまいます。
鼻と喉、口は1つにつながっています。
後鼻漏で常に鼻の奥に鼻水がたまっていると鼻や口からいやな臭いが漂うこともあります。
口臭や鼻臭は自分ではなかなか気がつかず、家族に指摘されて初めて気がついたというケースもあります。
不快感がある後鼻漏を放置していると、咳や痰(たん)・喉の痛み・口臭などが常に気になってしまいます。
副鼻腔炎
後鼻漏の原因で主なものは副鼻腔炎です。
もともと狭義の後鼻漏は副鼻腔炎に伴って鼻からのどへ落ちる病的で粘調な分泌物を指していました。
これはほぼ慢性的に常に流れていますのでファイバーなどで鼻腔を観察すると確認できることがほとんどです。
黄色い鼻水で疑われる病気の中では、最も重症化する可能性のある疾病です。
臭うような鼻水であれば副鼻腔炎(ちくのう症)が疑われます。
急性副鼻腔炎の場合は青っぱなのようなうみの混じった鼻汁がよく見られ、慢性期には白い粘調な鼻水が多く認められます。
薬物療法
アレルギー性鼻炎
ほこりやダニ、花粉症などで、鼻腔内で炎症が起こり、くしゃみ・鼻水・鼻づまりが症状として出ます。
舌下免疫療法は舌の下にアレルギーの原因である「アレルゲン」を含む治療薬を投与し、身体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげる治療法です。
加齢性変化
主にウイルス感染が原因で風邪をひき、この状態で細菌感染が起こると副鼻腔炎が発症します。
主な症状は、鼻づまりや鼻水、せきなどです。
これはアレルギー性鼻炎に特徴的な透明でさらさらした鼻水との鑑別点にもなります。
急性の副鼻腔炎によく認められる症状ですが、ほっぺたや両眼の間の痛み、額などの頭痛などが起こることがあります。
慢性の場合にも額を中心とした頭重感などはしばしば認められ、風邪をひいた時に額の痛みを反復するような事があれば副鼻腔炎の可能性も少なくありません。
また、眼の近くの副鼻腔に高度の炎症が起こると眼痛や視力障害をきたすこともあります。
慢性副鼻腔炎は、副鼻腔炎が慢性化したもので、慢性的に炎症が起きているため膿汁が副鼻腔内に溜まり、頭痛を感じることもあります。
副鼻腔炎の治療
手術、洗浄、抗生剤投与などによる副鼻腔炎およびアレルギー性鼻炎の治療で改善します。
また、鼻うがいも効果的なことがありますが、耳鼻咽喉科医の指導の下に行う必要があります。
慢性副鼻腔炎は、副鼻腔炎が慢性化したもので、慢性的に炎症が起きているため膿汁が副鼻腔内に溜まり、頭痛を感じることもあります。
黄色い鼻水が1ヶ月以上続くようでしたら、耳鼻咽喉科で検査を受ける必要があります。
急性の副鼻腔炎では抗菌力の強い抗生剤で比較的速やかに後鼻漏が改善する場合が多いです。
副鼻腔炎が3ヶ月以上も続く慢性副鼻腔炎になるとマクロライド系の抗生剤を少量で数カ月服用する治療法が一般的です。
少量ですので長期間の服用でも副作用は起こりにくいとされています。
また、少量投与の場合は抗菌力よりもサイトカインの抑制などによる副鼻腔粘膜の正常化を促す作用が高くなります。
ネブライザーネブライザー・鼻洗
鼻にたまっている鼻汁を掃除した後に抗生剤などの薬液を霧状にして鼻から吸引するネブライザー療法はもっとも一般的な外来処置です。
ただ高度な副鼻腔炎の場合は効果がでにくいこともあります。
また、生理食塩水で鼻腔を洗浄する方法もセルフケアとしては有効です。
手術
慢性副鼻腔炎で症状が重く、日常生活に支障がある場合には、手術の検討をします。
鼻内副鼻腔手術を行い、必要に応じて鼻粘膜焼灼や粘膜下鼻甲介骨切除を行って鼻腔内の空気を通りやすくします。
現在は鼻副鼻腔疾患に対して、内視鏡を用いて治療を行っています。
以前は上唇をめくり歯茎を切ったり、顔の皮膚を切ったりして鼻副鼻腔の手術をしていましたが、現在ではほとんどの症例で顔の皮膚を切らずに内視鏡を用いて鼻の中から手術することができるようになりました。
アレルギー性鼻炎
ほこりやダニ、花粉症などで、鼻腔内で炎症が起こり、くしゃみ・鼻水・鼻づまりが症状として出ます。
アレルギー性鼻炎の場合はさらさらとした鼻水が前の方に流れるのが一般的です。
アレルギー性鼻炎は鼻汁の量が多く、粘り気を伴うムチンという物質が増える事も知られています。
特にアレルギー反応が強く起こると下鼻甲介が腫れ、下鼻甲介の後方で分泌された鼻水が前方が塞がっているために後方へと流れて後鼻漏になる場合があります。
近年ではアレルギー性鼻炎による後鼻漏の頻度が高まっていると報告されています。
アレルギー性鼻炎の治療
薬物療法
アレルギー性鼻炎の治療としてよく用いられるのは抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬などの飲み薬や血管収縮剤やステロイドを含んだ点鼻薬です。
アレルギー性鼻炎の治療としてよく用いられるのは抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬などの飲み薬や血管収縮剤やステロイドを含んだ点鼻薬です。
血管収縮剤は速効性がありますが長期連用すると逆に薬剤性鼻炎となって鼻詰まりが悪化する場合もあります。
ステロイド点鼻薬はその心配はほとんどありませんが、速効性には乏しく、点鼻そのものが刺激となってくしゃみを誘発する場合もあります。
免疫療法
花粉症やダニアレルギー性鼻炎に有効とされています。
舌下免疫療法は、アレルギー性鼻炎に対する根本的な治療が期待できる免疫療法です。
高齢になると腺分泌の低下,粘膜の萎縮,線毛機能の低下鼻粘膜の過敏性充進などで鼻が乾燥傾向になり,粘性を増した鼻汁が咽頭へ流れやすくなります。
同時に高齢者では後鼻漏を訴える症例でも,他覚的に後鼻漏を認めない“後鼻漏感”を訴える症例も少なくないと報告されています。
高齢者における後鼻漏の対応は困難ですが、唯一行いうる対応は,口腔咽頭の乾燥を改善することであり、唾液分泌促進作用のあるニザチジンや漢方製剤の麦門冬湯などは比較的使用しやすいとされています。