親指の付け根が時々痛くなる時に考えられること
歳をとると、いろいろな所が痛くなるものですが、その痛みが大きな疾患の前兆である場合もあります。
妻が時々、親指の付け根が痛いことがあるというので、調べてみました。
親指の痛みに関連する原因疾患
親指の痛みに関連する原因疾患は実に様々で、その代表的なものは、1)母指CM関節症、2)関節リウマチ、3)手首の腱鞘炎、の3つがあります。最終的には、整形外科を受診し、医師の適切な治療を受けることが大切です。
母指(ぼし)CM関節症
手の指は、小さな骨同士の繋がりで作られ、それぞれを小さな関節が繋いでいます。『母指CM関節』とはその関節のひとつで、親指の付け根の部分を指します。
CM関節は、母指が他の指と向き合ってつまみ動作ができるように大きな動きのある関節です。
その分使い過ぎや老化に伴って、関節のクッションの役割を果たす軟骨部分がすり減ってしまい、痛みに繋がりやすく、進行すると関節が腫れ、亜脱臼してきて母指が変形してきます。
母指CM関節は、主に加齢による関節の摩耗や、使い過ぎによる過度なストレスが原因となることが多いです。
また、女性ホルモンの影響を受けることもあります。
母指CM関節の症状と特徴
| 日本整形外科学会ホームページより |
進行するとこの付近が膨らんできて母指が開きにくくなります。
また母指の指先の関節が曲がり、手前の関節が反った「白鳥の首」変形を呈してきます。そうなってくると、親指を使ってものを摘むなどの動作(例:鉛筆を持つ、ペットボトルキャップの開閉、洗濯バサミをつまむなど)で力が入らなくなってしまいます。
母指CM関節症は男性に比べ女性の割合が高く、特に40歳代から70歳代の更年期以降の女性に多く発症します。
母指CM関節は、過去に親指の怪我をしてしまった人にも多くみられます。
過去に親指の骨折をしてしまった人は、その骨を覆う軟骨に損傷が生じている可能性があります。
母指CM関節の診断
手首の母指側の腱鞘炎(ドケルバン腱鞘炎)やリウマチによる関節炎と区別しなければなりません。
X線(レントゲン)検査でCM関節のすき間が狭く、骨棘があったり、ときには亜脱臼が認められます。
母指CM関節の治療法
痛みの度合いによって薬物療法や痛み止めの注射を併用します。
また、手の使用頻度に応じてサポーターなどの装具を使用します。
痛みがどんどん強くなる場合や、指先の変形が強い場合は手術療法が選択されます。
母指CM関節症の主な原因は親指の使い過ぎによるものですので、痛みが強い場合は、基本的には安静が第一優先です。なるべく動かさないようにし、痛みが強い場合は消炎鎮痛剤の湿布や外用薬を貼って様子をみます。
軽症の場合で手仕事を行う時などはサポーターやテーピングを使用します。
サポーターは軟性装具といい、関節を保護する目的で使用されます。
| 日本整形外科学会ホームページより |
硬めの包帯で親指周りを八の字に巻くテーピングも親指に無理な動きをさせないためには有効です。
安静でもなかなか痛みや腫れが治らない場合や、日常生活や仕事がままならない場合はステロイド注射をすることもあります。
ステロイド注射とは、腫れや痛みなどの炎症症状を抑える効果があり、関節に直接注射します。
改善までの期間には個人差はありますが、おおよそ注射から2~3週間以内に症状が改善することが多いです。
また、注射の持続期間としては3か月~長くて半年ほどで、軽症の場合はほとんどがステイロイド注射と安静で症状が改善します。
糖尿病などの基礎疾患を抱える人の中にはステロイド注射が打てない場合もあるので医師と相談が必要です。保存療法でもなかなか改善が見られない場合や、関節の変形が強い場合には手術が適応となります。
痛みが強く、亜脱臼を伴う高度な関節の変形や母指の白鳥の首変形が見られる時には、関節固定術や大菱形骨の一部を切除して靱帯を再建する切除関節形成術などの手術が必要になります。変形や病状の程度によって差がありますが、多くの場合は麻酔下で1〜2時間程度で行われます。
術式によってその後の経過は異なりますが、手術の後は、おおよそ3〜4週間ギプスで固定し関節を保護します。
医師の指示に応じてリハビリを行いますが、術後3ヶ月程度は親指を強く握ることは控えます。
通常の生活に戻れるのは、多くの場合が術後3〜4ヶ月程度となります。
軽症の場合は安静と適度なマッサージやストレッチが痛みの緩和に効果的となる場合があります。
手の使用前後や、痛みや腫れが少し改善してきたら、少しずつ行ってみます。
関節リウマチ
関節リウマチとは、自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)のひとつです。本来ウイルスや細菌などの外敵から身を守る免疫機能(めんえききのう)が、何らかの理由で異常をきたし、自分の関節を守る組織や軟骨・骨などを外敵と勘違いして攻撃してしまうために起こる病気です。
このために関節液をつくる滑膜という組織にリンパ系細胞が集まって反応がおこります。そして、滑膜はさまざまな破壊物質の産生工場となって、しだいに自分の軟骨や骨を破壊し、様々な程度の機能障害を引き起こします。
| 関節リウマチの手の変形(日本整形外科学会ホームページより) |
関節に炎症や痛みが生じ関節が動かしにくくなったり、ひどくなると変形を伴ってしまいます。
関節リウマチの症状と特徴
また、右手か左手かのどちらかの関節ではなく左右対称に症状が生じます。
手の関節で症状が起こりやすい部位は、指の第2関節、第3関節、親指の第1関節、手首の関節です。
他の指には症状が起こらず親指に限定された痛みや腫れに悩まされる場合は、関節リウマチ以外が原因となっている可能性が高いです。関節リウマチは、関節だけの病気ではなく全身病ですので、貧血症状がでたり、体がだるくなったり、微熱がでることもあり、こうなると症状が悪化します。
原因は、遺伝的要因や細菌・ウイルスの感染などが考えられていますが、まだよくわかっていません。関節リウマチの治療
関節リウマチでは早期の治療が大切です。
治療は薬物療法が基本であり、抗リウマチ剤と非ステロイド性消炎剤を基本として、症例によってはステロイド剤、免疫抑制剤、生物学的製剤が用いられます。
手や足の周囲だけで比較的軽く経過する場合が多いのですが、長い間に全身の関節に炎症が進み、最後には関節やときには背骨の手術が必要になる場合もあります。
手首の腱鞘炎(けんしょうえん)
手首の腱鞘炎でも、親指付近にまで痛みが及ぶこともあります。腱鞘炎とは、骨と筋肉を繋ぐ腱と、腱を覆うトンネルである腱鞘が使い過ぎや何らかのストレスが掛かり擦れ合って炎症を起こしてしまう疾患です。
しかし、近年ではパソコンやスマホの操作増えた若者にも多くみられるようになってきています。
手首の腱鞘炎の症状と特徴
中でも、母指CM関節症と良く似た親指付近に症状が出るのが、親指の腱や腱鞘の炎症によって起こる『ドケルバン病』です。
ドケルバン病
ドケルバン病は狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)とも言います。親指の付け根あたりにある滑膜性腱鞘(かつまくせいけんしょう)が炎症を起こして生じる腱鞘炎の一種です。
主に母指を伸ばす働きをする腱の一本です。
②長母指外転筋腱(ちょうぼしがいてんきんけん)
主に母指を広げる働きをする腱の一本です。
③腱鞘(けんしょう)
①と②の腱が通るトンネルです。
ドケルバン病の原因と対処法
多くは痛みだけではなく炎症が起きている部分に腫れや熱っぽさもみられます。改善しないときや再発を繰り返す場合は、腱鞘の鞘を開く手術(腱鞘切開)を行います。





