夜、車で走るときに注意すべきこと
長いこと運転しているから、大丈夫と思う過信は禁物で、常に初心の謙虚さをもってハンドルを握るのが安心安全にとって、最も大切です。
夜間の運転は昼間よりも危険性が高くなるので、より慎重に運転することが肝要です。夜間は昼間より死亡事故が発生しやすい
令和元年における昼夜別の人身事故発生件数をみると、昼間は278,509件、夜間は102,728件と昼間のほうが3倍近く多いのですが、死亡事故件数については、昼間は1,569件、夜間は1,564件とほぼ同数です。これを人身事故1,000件当たりの死亡事故件数で比べてみると、昼間の約4.5件に対して夜間は約15.2件と3倍以上も多く、夜間は昼間に比べて死亡事故が発生しやすいことを示しています。
夜間は危険の発見が遅れる
夜間は周囲が暗いため、昼間に比べると危険の発見が遅れます。夜間はライトに照らされている範囲の前方視界に集中してしまいがちです。
そのため左右の歩行者や自転車に気づきにくくなります。
危険の発見が遅れればその分、事故は起こりやすくなります。
横断歩道を渡る歩行者との接触事故が多く発生するのも夜間です。
自転車は無灯火のこともあるので、こちらも注意が必要です。
夜間は速度を出しやすい
夜間は周囲が暗くて見えにくいため、速度感が鈍り、速度超過になりやすいといわれています。日中と同じスピードで走っているつもりなのに、夜間だと知らず知らずのうちにスピードが出ていることがあります。
しかも、夜間は昼間に比べて交通量も少ないことから、一層速度を出しやすくなります。
ただでさえ周囲が見えづらく視野が狭くなっているなかスピードを出しすぎてしまうと、歩行者などの不意な飛び出しに対する反応が遅れて大きな事故につながる危険性が高くなります。
車が衝突したときの衝撃力は、速度の2乗に比例して大きくなりますから、速度を出しやすい夜間は死亡事故が発生しやすくなります。
夜間特有の危険な現象がある
自車と対向車とのヘッドライトで、センターライン付近にいる歩行者が見えなくなってしまうことがあります。このような現象を「蒸発現象」或いは「グレア現象」といいます。
グレア現象とは、対向車と自分の車のヘッドライトが重なり合うことでお互いの光が反射し合い、間にいる歩行者などが見えなくなってしまう現象を指します。直前にならないと歩行者が発見できないことが多く、ほとんどノーブレーキで衝突することになりますから、死亡事故につながりやすくなります。
とくに市街地の交差点などでは、対向車のヘッドライトがこちらを向いた瞬間に、横断歩道を渡る歩行者が見えなくなることがあります。一方、歩行者の方は自分がヘッドライトに照らされているため、当然、車からは見えていると思っています。
信号が変わりそうなタイミングだと歩行者が無理な横断をしようとしていることもあり、非常に危険です。
さらに雨の日の方が乱反射は多くなるため、グレア現象が起こりやすくなります。
センターラインや停止線などの道路標示が確認しづらくなることもあるので要注意です。
速度をチェックする
夜間は危険の発見が遅れるので、昼間よりも速度を落として走行することが基本ですが、その際には、走行速度を感覚に頼るのではなく、スピードメーターでしっかりチェックするようにします。特に夜間のカーブでは、カーブのきつさがわからないことがありますから、速度を十分に落としているかどうかを必ずスピードメーターで確認します。
夜間はスピードを出しすぎていないか、常にスピードメーターを確認することが大切です。高速道路や交通量の少ない道路ではとく注意します。
しっかりと制限速度を守り、急ブレーキなどの動作にも備えておきます。
視線をできるだけ先のほうへ向け、ハイビームとロービームを使い分ける
危険を少しでも早く発見するために、視線はできるだけ先のほうに向けます。また、ヘッドライトも交通量の多い市街地や対向車や先行車がいるときを除いて、上向きにして歩行者などを早めに発見するよう努めます。
ヘッドライトの照射範囲は、ハイビームは前方100m、ロービームは40mです。
一方、車の停止距離は60km/hでは約44m、50km/hでは約32mと言われています。
つまり、ロービームかつ時速60kmで走っていると危険を察知してブレーキをかけても間に合わない計算になります。
そのため夜間の走行は法律や道路交通法では「原則ハイビーム」と決められています。
ただし、対向車の多い市街地でのハイビームはほかの車や歩行者が眩しく感じやすく迷惑になってしまうこともあります。
前を走っている車にとっても、後ろからハイビームで照らされるとバックミラーやサイドミラーにライトが当たって眩しく感じます。
そのため対向車が来たときや前の車に続いて走行するときはその都度、ロービームにする必要があります。また、霧雨が降っているような日はライトの光が乱反射しがちなのでフォグライトを点灯させた方が視界は見えやすくなります。
周囲の状況によってハイビームとロービーム、フォグライトなどを適切に使い分けましょう。
対向車のライトを直視しない
対向車のヘッドライトの光を直接目に受けると、何も見えない状態となります。これを「眩惑(げんわく)」と言います。
眩惑されると回復するのに数秒を要します。
その間は目を閉じて走行しているのと同じ状態となり極めて危険です。
対向車のヘッドライトの光が眩しいと感じたときは、視線を少し左側に移して眩惑されるのを避けます。
また、対向車があるとき、センターライン付近に何か動くものの気配を感じたときには「蒸発現象」かもしれないと考えて、前方の状況に十分注意します。
無理な左折・右折をしない
夜間、左折時は歩行者や自転車が確認しづらくなるため、いつも以上に巻き込みに注意が必要です。サイドミラーを見るだけでは不十分なことも多いので、しっかり目視して確認するようにします。
右折時は右側から来る歩行者などにはヘッドライトが当たらないため、見落としに注意します。対向車の間を縫って走ることに気を取られたり、グレア現象が起こったりすることもあるので、こちらも丁寧な確認を心がけながら慎重にハンドルを切ります。
右左折時は無理をせず、歩行者や自転車、対向車などをやり過ごしてから曲がることを心がけます。
見通しの悪い交差点などではヘッドライトを点滅させる
見通しの悪い交差点やカーブを走行するときは、ヘッドライトを点滅させるなどして、相手に自車の接近を知らせるようにします。明るい場所での落とし穴に注意する
夜間に暗い道路を走行していても、コンビニなど明るい場所にさしかかることがよくあります。その場合、ドライバーの視線は明るい側に向きがちで、反対側への注意が薄れてしまい、反対側からコンビニに行こうとして横断してきた歩行者などを見落としてしまうことがあります。
明るい場所にさしかかったときは、歩行者などの通行も多いと考えて速度を落とすとともに、道路の両側の状況を十分に確認します。
十分な車間距離をとっておく
夜間は前方の車の状況がつかみづらく、前方車の急ブレーキにすぐに反応できない可能性もあります。万が一前方車が急ブレーキをかけても対応できるよう、車間距離は日中以上に十分にとるようにします。
夜間は集中力が途切れがちになったり、眠くなってしまう時間帯です。
夜間の運転では眠気対策にも気を配りつつ、眠くなりそうなときの深夜の運転などは控えるといった決断も必要です。