ホンダ・ジェイドの自動ブレーキ
ホンダ・ジェイドは、私にとってお気に入りのデザインですが、自動ブレーキの仕様がどうであったか調べてみました。
ホンダ・ジェイド
ジェイド(JADE)は、本田技研工業が製造・販売していたミニバン(またはステーションワゴンに分類)です。中華人民共和国では2013年から2020年まで(現地名:「杰德」)、日本では2015年から2020年まで生産・販売されました。
日本国内及び香港・マカオの各中華圏特別行政区向けは、埼玉製作所狭山完成車工場(通称:狭山工場)にて生産されました。
概要
ジェイドは、中国市場に主眼を置きつつも他地域への投入も視野に入れて開発されたグローバルカーです。ホンダの開発担当者は、開発の初期段階から先々代(3代目)・先代(4代目)オデッセイとストリームを統合した車種と位置づけて開発したとしています。
2015年2月から日本でも販売を開始しました。
日本仕様車は当初は3列シート車のみの設定で、パワートレインは販売開始当初、LEB型エンジンをベースにした「SPORT HYBRID i-DCD」を採用したハイブリッド専用車種として発売されました。
日本でのグレード体系は標準仕様の「HYBRID」と上級仕様の「HYBRID X」が用意されました。
インテリアについては2列目シートのセンター側に固定式の大型アームレストを採用し、左右斜め内側にシートが後退する「Vスライド機構」を採用した「2列目Vスライドキャプテンシート」を全車に標準装備しています。
過去にアコードエアロデッキやアヴァンシアに採用されたルーフエンドのウィンドウを採用しました。
デザインに個性を持たせるだけでなく3列目シートの開放感の向上に貢献し、さらに3列目の頭上空間にゆとりをもたせることを実現しました。
3列目シートは5:5の分割床下格納機構が備わり、ラゲッジスペースを拡げることも可能です。
装備面では安全運転支援システム「Honda SENSING」(ホンダ センシング)が採用されています。
「Honda SENSING」は衝突軽減ブレーキ(CMBS)・アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)・車線維持支援システム(LKAS)・路外逸脱抑制機能・誤発進抑制機能・先行車発進お知らせ機能・標識認識機能で構成されています。
フロントエンブレム裏に設置したミリ波レーダーとフロントウィンドウ内に設置した単眼カメラの2つのセンサーを備えています。
同年5月には日本仕様車にガソリン車「RS」を追加しました。
「RS」は5代目ステップワゴンに搭載されたガソリン直噴 1.5L VTEC ターボエンジンであるL15B型を採用しました。
直噴システムに加え、小径タービンやデュアルVTC(連続可変バルブタイミング・コントロール機構)などを採用しています。
低回転域でのターボ効果の向上を図ったことで乗用域でHonda車の2.4Lエンジン並みのトルクを発生しています。
併せて、吸気量をきめ細かくコントロールできるターボエンジンの強みを最大限に活用し、燃焼効率の良い領域を維持・拡大することでJC08モード燃費で18.0km/Lの低燃費を実現し、「平成32年度燃費基準」を達成しました。
加えて、クランクシャフトとそれを支えるベアリングキャップの剛性を向上するなどしてノイズや振動の伝達を抑制し、静粛性も実現しています。
トランスミッションは小排気量ターボエンジンに合わせて新たに開発されたパドルシフト(7スピードモード)付CVTを採用しています。
さらに、サスペンションはハイブリッド車よりも剛性を高め(フロントで15%、リアで20%向上)、スプリングやダンパーなどに専用セッティングを施しました。
ブレーキ制御を活用した電子制御システム「Agile Handling Assist(AHA/アジャイル・ハンドリング・アシスト)」を採用しました。
アンダーフロアパネルに補強部材のトンネルブレーズを追加してフロア回りの剛性も強化しました。
2018年5月の日本仕様のマイナーモデルチェンジにおいて、2列シート5人仕様が新たに設定されました。
2列シート5人乗り仕様では、2列目シートが大型リアセンターアームレスト付の6:4分割可倒式ベンチシートとなり、ドリンクホルダーやポケットを備えた反転テーブルも装備されました。
2018年5月17日のマイナーチェンジ
マイナーモデルチェンジ(5月18日発売)。
「Honda SENSING」は、歩行者事故低減ステアリング機能が追加された上で、全タイプ標準装備化されました。
本変更に伴い、「RS」は「RS・Honda SENSING」、既に標準装備済みの「HYBRID X」は「HYBRID X・Honda SENSING」にそれぞれ改名されました。
2列シート5人乗り仕様が日本仕様車に設定され、「G・Honda SENSING」と「HYBRID RS・Honda SENSING」として追加されました。
ジェイドは今回のマイナーチェンジで5人乗りが GとRS、6人乗りがXとグレード体系が分かれました。
「RS・Honda SENSING」は従来の3列シート6人乗りから、2列シート5人乗りに変更されました。
併せて、3列シート6人乗り仕様にはガソリン車の「X・Honda SENSING」が追加されました。
「RS」系タイプはヘッドライトをインラインタイプのLEDに、フロントグリルをハニカムメッシュタイプに、アルミホイールを新デザインの18インチにそれぞれ変更しました。
ボディカラーの設定を変更しました。
「ホワイトオーキッド・パール(有料色)」に替わり「プラチナホワイト・パール(有料色)」、「プレミアムディープロッソ・パール(有料色)」に替わり、「プレミアムクリスタルレッド・メタリック(有料色)」を新設定した他、従来「RS」専用色であった「コバルトブルー・パール」は「X」系タイプにも設定を拡大しました。
「RS」系には新開発色である「プレミアムクリスタルオレンジ・メタリック(有料色)」を専用設定し、「X」系タイプは全6色、「RS」系タイプは全7色を設定しました。
また「G・Honda SENSING」を除くタイプには有料色として「ブラックルーフ」仕様6パターンを新設定(クリスタルブラック・パールを除く6色に設定しました。
メカニズム面では、「RS・Honda SENSING」はCVT制御が新たに採用され、全開加速ステップアップシフト制御とブレーキ時ステップダウンシフト制御を追加しました。
ハイブリッド車は「SPORT HYBRID i-DCD」のギアレシオと駆動力制御を見直す改良が行われ、全タイプにパドルシフトを装備しました。
「RS・Honda SENSING」と「X・Honda SENSING」はリアサスペンションをはじめとするダンパーセッティングの見直しも行われました。
なお、今回のマイナーモデルチェンジでハイブリッド車の廉価仕様であった「HYBRID」が廃止されました。
概要 | |
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製造会社 | 本田技研工業 |
製造国 | 中国 日本(埼玉県) |
販売期間 | 中国:2013年9月 - 2020年6月 日本:2015年2月13日 - 2020年7月31日 (発表:2015年2月12日) |
ボディ | |
乗車定員 | 6名(2015年2月-2020年7月) 5名(2018年5月-2020年7月) |
ボディタイプ | 5ドアステーションワゴン 5ドアミニバン |
駆動方式 | 前輪駆動 |
パワートレイン | |
エンジン | 1.5Lターボ車:L15B型: 1,496cc 直列4気筒 直噴DOHCターボ ハイブリッド車:LEB型: 1,496cc 直列4気筒 直噴DOHC |
モーター | ハイブリッド車: H1型:交流同期電動機 |
最高出力 | 1.5Lターボ車: 110kW (150PS)/5,500rpm ハイブリッド車: エンジン: 96kW (131PS)/6,600rpm モーター: 22kW (29.5PS)/ 1,313-2,000rpm |
最大トルク | 1.5Lターボ車: 203N·m (20.7kgf·m)/ 1,600-5,000rpm ハイブリッド車: エンジン: 155N·m (15.8kgf·m)/ 4,600rpm モーター: 160N·m (16.3kgf·m)/ 0-1,313rpm |
変速機 | 無段変速オートマチック(CVT) (ガソリン車) 7速DCT (ハイブリッド車) |
サスペンション | |
前:マクファーソン式 後:ダブルウィッシュボーン式 | |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,760mm |
全長 | 4,650mm (2015年2月-2018年5月) 4,660mm (2018年5月-2020年7月) |
全幅 | 1,775mm |
全高 | 1,530mm (2015年2月-2018年5月) 1,530mm (G、X、HYBRID X) 1,540mm (RS、HYBRID RS) (2018年5月-2020年7月) |
車両重量 | 1,510-1,530kg(乗員6名) (2015年2月-2018年5月) 1,430(乗員5名)-1,520kg(乗員6名) (2018年5月-2020年7月) |
その他 | |
ブレーキ | 前:油圧式ベンチレーテッドディスク 後:油圧式ディスク(ドラム駐車ブレーキ内蔵) |
自動ブレーキ
停止車両に対する自動ブレーキ性能は50km/hと十分、対歩行者の自動ブレーキも30km/hなら稼働するといいます(共に社内評価値)。
ジェイド 初期ロット
ホンダ ジェイド (Honda SENSING搭載車)22.5点/46.0点
※1 ※2以外のHonda SENSING付車両が対象車両となります。◇ジェイド 後期型
ホンダ ジェイド (Honda SENSING搭載車)
46.0点/46.0点
※2 車台番号がFR4-1015238以降及びFR5-1002202以降のHonda SENSING付車両が対象車両となります。Honda SENSING
「Honda SENSING(ホンダセンシング)」とは、ホンダが独自に開発した単眼カメラとミリ波レーダーで常に安全で快適な運転をサポートしてくれる機能の総称です。
対象の位置や速度の測定に強いミリ波レーダーと、対象の形や大きさの識別に強い単眼カメラを融合した高精度な検知機能を備えています。
システムは、フロントグリル内のミリ波レーダーと、フロントウインドウ内上部の単眼カメラの2つのセンサーを利用し、アクセルとブレーキ、ステアリングを協調制御します。ジェイドには発売当初からホンダセンシングを搭載しています。
その機能は7種類にもおよび、運転の快適性・安全性をサポートします。
そしてマイナーチェンジ後、その機能は8種類まで増加しました。
カメラによって人間を認識できるため、歩行者との事故も防げます。
ホンダセンシングはハイブリッドの標準グレードには装備されないので、ハイブリッドXがおすすめです。
8つの安全機能
1)歩行者事故低減ステアリング機能
今回のマイナーチェンジで追加された機能です。
この機能は、歩行者側の車線を逸脱し歩行者と衝突するおそれがある場合に、ディスプレイ表示と音でドライバーに警告します。
さらに、自動で車道側へステアリング制御を行い、衝突を回避します。
約10~40km/hの走行中に作動します。
2)衝突軽減ブレーキ(CMBS)
前走車や歩行者、対向車との衝突回避または被害軽減のための機能です。
衝突する恐れがある場合にはディスプレー表示と音で警告、さらに接近した場合には自動的に軽いブレーキ、それよりさらに近づいた場合には自動的に強いブレーキがかかります。
その三段階で衝突回避、被害軽減に努めます。
約5km/h以上で走行中に自車との速度差が約5km/h以上ある前走車両や歩行者、対向車両(二輪車と自転車を除く)に対して衝突の危険があるときに自動でブレーキを作動させ、自動的に停止または減速することにより衝突回避や衝突被害の軽減を図ります。
歩行者や対向車(二輪車や自転車等を除く)に対しては、自車の速度が80km/hまで作動します。
3)誤発進抑制機能
停車中や10km/h以下で走行中に、クルマのほぼ真正面の近距離に前走車や障害物があるときに、ドライバーが誤ってブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違え、アクセルを強く踏んでも、エンジンやモーターなどのパワーシステム出力を抑制し、急な発進を防止します。
近年、踏み間違いによる事故は増加傾向にあります。
この機能を搭載することで、目の前に障害物がある状態でアクセルを強く踏み込んでしまった場合でも、車両側でエンジン出力を抑制し、ドライバーにディスプレー表示と音で警告してくれます。
4)路外逸脱抑制機能
路外逸脱抑制機能は、約60km/h~約100km/hで走行中に、路外への逸脱またはシステムが路外への逸脱を予測した時に作動します。
ディスプレー表示と音で警告、ステアリング制御を行って、車線内に戻るようにします。
高速走行中に眠気に襲われてうっかり車線をはみ出しそうになった時などに心強い味方となってくれます。
ただし、ドライバーによる操舵が基本であり、システムはアシストという役割です。
運転者が加速やブレーキ操作、急なステアリング操作を行っているとシステムが判断した場合、ウインカーを作動させている場合は作動しません。5)渋滞追従機能付きACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)
前走車との車間距離を一定に保ちながら設定した速度で前走車を追従します。
ACCは、約30km/h~約100km/hで作動します。
急なカーブや加速・減速の繰り返しが少ない、高速道路や自動車専用道路などを運転するときに使用します。
設定の最低速度は30km/hですが、渋滞追従機能付は、渋滞中などは0km/hまで作動します。
前走車が速度を落としても衝突することなく減速を行い、再度速度をあげた際には加速します。
長距離移動で使用することで、ドライバーの疲れを軽減します。
さらにブレーキとアクセルが自動操作のため、燃費の向上にも繋がります。
6)LKAS(車線維持支援システム)
約65~100km/hで走行中に、車両が車線の中央にとどまるようにステアリング制御を行います。
ただ、ドライバーのステアリング操作を取って代わるものではないため、運転者がステアリングから手を放した状態や、運転者が意図的に車線を越えるようなステアリング操作をしているとシステムが判断した場合、ウインカーを作動させている場合は作動しません。
7)先行車発進お知らせ機能
停車時に前走車が発進したことを知らせる機能です。
先行車が発進しているにも関わらずアクセル操作がない場合に、音とディスプレー表示で先行者の発進を知らせます。
機能が作動するのは先行車との車間距離が約10m以内です。
先行車の発進を検知しても自車が停止し続けたときに作動します。
停車時のスマホ操作などで発進に気付かない時などに役立ちます。
後続車からクラクションを鳴らされる回数も減ります。
8)標識認識機能
走行時に路側などにある速度規制表示や進入禁止表示、追い越し禁止などの標識をシステムが認識して、車内のメーターなどに表示する機能です。
速度標識をうっかり見落とした場合に、ディスプレーに表示してくれるのは非常に助かります。
標識認識機能は最高速度、はみ出し通行禁止、一時停止、車両進入禁止の標識を認識し、マルチインフォメーション・ディスプレイに表示します。
一時停止、車両進入禁止は約60km/h以下で作動します。
自車の単眼カメラから見て、車両等の陰になった道路標識は認識することができません。
ジェイドは、セーフティ・サポートカーS
ジェイドは、セーフティ・サポートカーS〈ベーシック+〉に該当します。
セーフティ・サポートカー(略称:サポカー)は、政府が交通事故防止対策の一環として普及啓発しているものです。
セーフティ・サポートカーS(サポカーS)」とは自動ブレーキに加え、ペダル踏み間違い時加速抑制装置等を搭載した、特に高齢運転者に推奨する自動車です。
但し、ジェイドはペダル踏み間違い時加速抑制装置は前進のみで後退側は装備していないようです。
また、最新のペダル踏み間違い時加速抑制装置はブレーキが作動して停止までしますが、ジェイドの場合は、パワー抑制のみのため車はクリープで前進します。
因みに、サポカーSワイドは、自動ブレーキ(対歩行者)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置、車線逸脱警報、先進ライト(自動切替型前照灯、自動防眩型前照灯または配光可変型前照灯など)が装備された車です。
ジェイドは、路外逸脱抑制機能が装備されているので、車線逸脱警報はOKです。
先進ライト、所謂オートハイビームライトですが、オプションで装備するようです。
ジェイドの8つの安全機能の中で、ホンダが世界で初めて実用化したのが「歩行者事故低減ステアリング」です。
ちなみに、約~100km/hでの走行中であれば、「渋滞追従機能付きアダプティブクルーズコントロール(ACC)」と「車線維持支援システム(LKAS)」を組みあわせて利用することも可能です。
「車線維持支援システム(LKAS)」が、さらに下の速度域となる0~65km/hまで作動できるようになれば、日産の「プロパイロット」やテスラの「オートパイロット」と同等の機能が備わることになります。
現在開発中のこのホンダの機能は「トラフィックジャムアシスト」と呼ばれます。
オプションの中には、左ウインカーを出すと同時に、左斜め後方をカーナビの画面に映し出し、死角をカバーする装備も設定されています。
これは、二輪車や自転車などの巻き込みを防いだり、死角に入ったクルマを映し出したりするので、安全に大きく貢献します。
オプション設定ですが、装着しておきたい装備の一つです。
ジェイドに搭載される「ホンダ センシング」の内容は、オデッセイと同等といえるものですが、ホンダのフラッグシップセダンであるレジェンドのホンダ センシングに比べると、違いもあります。
ステアリング操作によって事故を防ぐ『歩行者事故低減ステアリング』は採用されていません。
またACCについてもレジェンドが停止まで含めた渋滞追従機能付きなのに対して、ジェイドは30~100km/hの範囲をカバーするもので、停止や微低速での追従はできません。
機能の違いを生む理由は、車両側のメカニズムあります。
たとえば、ACCが30~100km/hの範囲となっているのは、停止までをカバーするには停止保持のためにはEPB(電動パーキングブレーキ) が必要です。
レジェンドはEPBなので渋滞追従が可能ですが、ジェイドは機械式パーキングブレーキのために停止・微低速をカバーできないということがあります。
「Honda SENSING」体験レポート
「ホンダの「Honda SENSING」を、今年の春から稼働が始まったばかりの栃木県さくら市にあるホンダの新しいテストコースで試すことができた。
中略今回、テストコースにて体験できたのは「歩行者事故低減ステアリング」と「衝突軽減ブレーキ(CMBS)」であった。
最初は「衝突軽減ブレーキ(CMBS)」を試す。
歩行者に見立てたダミー人形に向かって40km/hでノーブレーキのまま突っ込む。
これまでもいろいろなクルマで同様のシステムを体験しているけれど、何度やっても恐怖心がわき上がってくる体験だ。
この手のシステムは、途中でドライバーがステアリングやブレーキなどを操作すると、自動での作動がキャンセルとなる。
ドライバーの回避行動をじゃましないためだ。そのためシステムを体験するときは、じっと我慢して、ステアリングにもブレーキにも下手にイジらないのが鉄則。これが恐ろしい。
最初にお手本としてホンダのスタッフによる運転でトライ。
助手席での体験となったが、やはり怖かった。
そして、自分でステアリングを握って走りだす。
走行後はスピードオーバーを避けるために、すぐにオートクルーズを40km/hにセット。
グングン近づいてくるダミー人形をにらみつけながら、石のように固まっていると……、なんとブレーキは作動したものの、停まれきれずにダミー人形に軽くぶつかってしまった。
ブレーキが作動するタイミングが遅かったのだ。
これは、ダミー人形とクルマの位置の関係が理由だという。
今回、ダミー人形はクルマの中心ではなく、クルマの端へオフセットしていた。
ちょうど右側のヘッドライトのあたりだ。
こういうケースでは、ドライバーのほんのわずかな操作で衝突を回避できる。
つまり、「ドライバーがなにもしない!」と最終的にシステムが判断するタイミングが後にずれる。
その分だけブレーキのタイミングが遅くなったのだ。
ドライバーに「自分で避けようと思ったのに先にシステムが介入した」と思わせないようにシステムができているのだろう。
もう一度、試してみる。
今度は、ちょうど真ん中にダミー人形が当たるようなコースで向かうと、きちんとダミー人形の前で停止した。
なるほど、当たる角度によってシステムの反応が違うというわけだ。
続いては「歩行者事故低減ステアリング」だ。
これも衝突軽減ブレーキ(CMBS)と同様に、急ブレーキや急加速、急なステアリング操作を行うと、システムはキャンセルとなる。
クルマの走行する角度を慎重にあわせて、なにも操作しないようにダミー人形に向かって行く。
するとモニターに警告の表示が表れて、ステアリング制御が介入。ステアリングがジワジワと動きだしてダミー人形を避けた。
しかし、介入はわずか。ダミー人形と走り抜けたクルマの距離も、ほんのわずかであった。
だが、これにも理由があった。それは、「歩行者事故低減ステアリング」は、あくまでもアシスト機能。
基本的にドライバーが回避のための操作をするというのが大前提で、ドライバーの操作に代わるものではない。
つまり、何もしないまま突っ込んでいった自分のミスであった。
リアルワールドでは、ボンヤリとしていて、路肩の歩行者に向かってしまったときに、システムが介入することで、ドライバーが危険に気づいて、みずからステアリングで回避行動を行う。
これがホンダの考えるシナリオであったのだ。」