ダークチョコレートにはカドニウムと鉛が含有されている

脳の活性化・ボケ防止に高カカオチョコレートが良いということをテレビで観たことがあったので、毎日70%カカオのダークチョコレートを食べていましたが、ネットで多く食べることを控えるべきであるという記事を目にしました。


米国の調査報告

チョコレートにはカカオポリフェノールなどの栄養素が豊富なほか、抗酸化作用や血管拡張作用があり、認知機能を向上させる効果があるとの研究結果も報告されているため、特にカカオの含有量が高く砂糖が少ないダークチョコレートは体にいい食品とされています。

しかし、株主の権利を推進する非営利団体「As You Sow(アズ・ユー・ソウ)」が2014年に実施した試験の結果、469銘柄のチョコレート菓子のうち285銘柄で、カリフォルニア州法により生殖機能障害を引き起こすとして警告表示が規定されている水準である「Maximum Allowable Dose Levels(MADL:生殖毒性物質の最大許容用量レベル)を超過するカドミウムや鉛が含まれていることが判明しました。

MADLを上回っていた銘柄の中には、スターバックスやゴディバ、Hershey(ハーシー)など日本人にもなじみ深いブランドが含まれています。



一般的に、ダークチョコレートにはミルクチョコレートよりも多くのカカオが含まれているため、カドミウムや鉛の含有量が高くなる傾向があります。

更に、最近の調査では、アメリカの有力専門誌Consumer Reportsによると、ランダムに選んだチョコレートブランド28種類のうち23種類のダークチョコレートに比較的高いレベルの重金属が含まれていることが分かりました。

今回選ばれたのは、これまた日本でも有名なLindtやGodivaを始め、アメリカで人気のGhirardelliやDove、Hershey’s、Chocolove、またTheoやGreen & Black’sなどオーガニックチョコレートも含まれています。

最新のニュースでは、ダークチョコレートの調査を行ったConsumer Reportsがアメリカの有名チョコレートメーカー4社に、ダークチョコレートのカドミウムと鉛の含有量を減らすよう勧告したことが明らかになりました。

対象になった4社とは、ハーシーズで有名なHershey Co 、オレオの会社でチョコレートも多種類販売しているMondelez International Inc 、オーガニックチョコレートのTheo Chocolate、及び Trader Joe’sです。


健康に対する影響

カドミウムは腎臓や骨に蓄積され、腎臓機能障害や骨粗鬆症を引き起こすほか、生殖能力への悪影響である生殖毒性があることが知られています。

また、鉛は、神経系に悪影響を与え、発達障害や認知機能の低下を引き起こすことがあります。

鉛は学習障害や神経障害に関連しており、重要な発達段階にある子どもの脳は特にその影響が大きいことが懸念されます。

そのため、カリフォルニア州ではこうした有害物質の含有量について消費者が知った上で意志決定を行えるようにすることを目的とした「プロポジション65」が制定されており、前述のMADLもこの法律に基づいたものです。

特に高カカオをうたったチョコレートについては、日本の国民生活センターも「すぐに健康被害を及ぼすような量ではないが、銘柄によりカドミウム含量の差が大きかった。適切な品質管理等が引き続き望まれる」との調査結果を(PDFファイル)報告したことがあります。

こうした懸念や前述の調査結果を受けて、As You SowとNCAは4人の専門家からなる学際委員会を組織し、3年間をかけてチョコレートやココアに含まれる有害物質の汚染源やその低減方法を調査しました。

その調査結果によると、チョコレートやココアのカドミウムはカカオが栽培されている熱帯地方の土壌が由来とのことです。

カカオの木の根から取り込まれたカドミウムは、カカオ豆の中心部であり、チョコレートやココアの原料である胚乳(カカオニブ)に沈着します。

特に、カカオの名産地である中南米やカリブ海地域では風味が豊かなカカオが収穫される一方、土壌中のカドミウム量が高くなる傾向があります。


カドミウム・鉛の含有量を減らす取り組み

そのため、味を落とさずにカドミウムの含有量を減らす方法として、短期的にはカドミウム量が少ないカカオ豆と多いカカオ豆をブレンドすることで対応し、長期的には土壌改良やカカオの遺伝子改良を行う必要があると、専門家らは結論付けました。

一方、鉛は根から取り込まれることはありませんが、土壌やほこり、発電所由来の堆積物に含まれる鉛が原料となるカカオに付着することで、チョコレートに混入します。

カカオ豆を現地の野外で発酵させたり乾燥させたりする段階で鉛が付着しやすいとのことです。

専門家は、チョコレート製造業者がすでに行っているカカオ豆の洗浄、焙煎(ばいせん)、外皮の除去といった各工程での汚染物質除去を最適化するとともに、収穫工程での土の付着や空気への接触を可能な限り抑えることで、最終製品中の鉛レベルを下げることができると指摘しました。


提言されたカドミウムおよび鉛対策を実施することで、鉛の含有量は1年間で大きく削減されると期待されています。

一方、土壌改良や新しい農法の導入などが必要になるため、カドミウムの低減は長期的な課題になります。


消費者への提言

コンシューマーリポートの調査は、チョコレートは自分へのご褒美と位置づけ、たまに食べる程度に抑えるべきだと提唱しています。

この調査を主導した研究者は「週に何日か、1サービング分(41g)のダークチョコレートをとりわけ、(重金属の)含有レベルが比較的低い製品を選んで食べるのであれば、過剰に不安を抱くことなくチョコレートを楽しめるだろう」と述べています。

またコンシューマーリポートの調査によれば、同誌が調べたダークチョコレートのうち23種については、毎日1オンス(約28g)食べると、公衆衛生担当者が大人にとって安全圏だとみなす上限を超えるといいます。

とはいえ、たとえそうなったとしても「ただちに体に害がおよぶことは考えにくい」とのことです。


日本のカドミウム耐容摂取量

1週間当たり体重1 kg当たり7 μg(μg:マイクログラムは1 gの百万分の1)

(食品を通じて一生涯摂取し続けても健康に悪影響が出ないカドミウムの摂取量)

体重が50㎏であれば350㎍以内(1週間)です。

ちなみに 日本人の日常食からのカドミウムの1日摂取量(2007年)は、21.1μg、1週間に147.7㎍です。


安全なダークチョコレート

1)Mast Organic Dark Chocolate 80% Cocoa

2)Ghirardelli Intense Dark Chocolate 86% Cacao

3)Valrhona Abinao Dark Chocolate 85% Cacao

4)Taza Chocolate Organic Deliciously Dark Chocolate 70% Cacao

5)Ghirardelli Intense Dark Chocolate Twilight Delight 72% Cacao

6)Ritter Sport Dark Chocolate 81 Cacao Extra Intense with Cacao from Ghana