遺贈寄付はどれくらいが良いか
当初は、遺産の1/2を遺贈寄付をしたいと考えていましたが、兄弟や甥姪へも相続するとなると、やはり、彼らの心情を考えるとそうもいかず、ネットでどれくらいが相場なのか調べてみました。
遺贈とは
「遺贈」とは、亡くなった方(被相続人という)の遺言に則り、法定相続人やそれ以外の人や団体にその遺産の一部、または全部をゆずることです。
遺贈する側を「遺贈者」、遺贈する相手のことを「受遺者」といいます。
遺贈には、「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。
「包括遺贈」とは、遺産の具体的な内容を特定せずに、全部あるいは遺産全体の何割、何分の何というように割合によって与える遺贈を指します。「特定遺贈」とは、あらかじめ遺産のうちの特定のものを指定して、与えることです。
人は誰でもいつ亡くなるのかわからないので、財産をゼロにして死ぬことはできず、どうしても財産が残ってしまうことから、子供のいない夫婦にとって遺贈寄付は、一生で最も大きな浄財の選択肢の一つと言えます。
特定遺贈
遺贈寄付をする場合には、包括遺贈よりも、特定遺贈の方が好ましいとされます。
また、包括受遺者(包括遺贈を受けた者)は相続人と同一の権利義務を負うため、寄付先が相続人と遺産分割協議をしなければならなくなることもあります。
従って、遺贈寄付される団体の大きな負担となってしまうことが考えられます。
実効性のある遺言
遺言書に「A銀行の預金を甲団体へ遺贈する」と記載されていたとします。遺言作成後に、遺言者がA銀行の預金をB銀行に移した場合、甲団体へ遺贈する財産は無くなってしまいます。
A銀行の預金をA銀行が取り扱う投資信託に移した場合も、「預金」はありませんので同様の事態となります。
遺言作成後も自由に金融資産を運用しつつ遺贈寄付も実現するためには、例えば「私の金融資産の10分の1を〇〇団体へ遺贈する」と書く方法もあります。
残された財産には、不動産の処分や株などの金融資産の売却行為が発生することがあります。そこで、遺言書には、例えば、「全財産を換価し、清算後、10分の1を〇〇団体に遺贈する。」のような遺言文言を書いておくことができます。
または、更に詳しく「遺言者は遺言者の有する財産の全部を換価し、その換価金から遺言者の一切の債務を弁済し、公租公課を支払い、かつ、遺言の執行に関する費用、葬儀・埋葬の費用を控除した残金を、下記の者に遺贈する」と精算の内容を細かく記載することもできます。「換価」とは、自宅や金融資産を売却してお金に換えることです。
「清算」とは、亡くなった時点での財産関係の清算を行うことです。
病院や介護施設に未払の利用料があれば支払います。
未払の公共料金や社会保険料、税金などがあれば支払いを行います。
このような遺贈寄付のことを「清算型遺贈」といいます。
換価や清算行為が発生するため、遺言書には、「遺言執行者」を指定しておく必要があります。
指定していなければ、本人が亡くなった時点で家庭裁判所に対して遺言執行者の選任を申し立てます。
以上のこと以外に、円滑な執行という観点では、遺言書の付言事項(法定の遺言事項以外に自由に記載できる欄)に、遺贈寄付を決めた理由やご家族への想いを記載しておくことも大切です。
遺留分
ポイントは、法定相続人の遺留分を侵害しないことです。
法定相続人の遺留分まで寄付に回してしまうと、寄付先の団体に対して「遺留分侵害額請求」が行われる可能性があります。
「遺留分」とは、兄弟姉妹(または姪・甥)を除く法定相続人に認められている相続財産の取り分のことです。
遺留分は最低限の取り分として保障されているため、遺留分が侵害された法定相続人は遺留分の不足を請求する「遺留分侵害額請求」を行うことが可能です。
法定相続人と寄付先間のトラブルを防ぎ、遺贈寄付を円滑に実行するためにも、寄付は無理のない範囲にとどめておくことが肝要です。