高齢者で物が二重に見える時に考えられる疾患

 90代の義母が、物が二重に見えることがかなり頻繁にあるため、考えられる疾患について、ネットで調べてみました。


複視

ものに輪郭がついて二重に見えたり、ある一定の方向を向いたときだけ、物が二重に見える場合、いずれも「複視」といい、大きく以下の二つに分けられます。

単眼複視

片目で見て物が二重に見える場合を単眼複視といいます。

目の表面から、光を感じる網膜にいたる間に異常が起きた際に、物が二重に見えます。

以下のような原因が考えられます。

1)白内障

2)円錐角膜:角膜が正常な丸い形でなく、円錐のような形になってしまうこと。

3)乱視

複眼複視

両目で見た時だけ物が二重に見える場合を、複眼複視といいます。

原因によっては、ある一定の方向を向いた時に、より症状が強くなることがあります。


高齢者の複視

高齢者の単眼複視にはメガネやコンタクトレンズをすることで解消する乱視、遠視、老眼など加齢で悪化するピントの異常と、ピントを合わせても治らない白内障などの目の病気があります。

白内障による単眼複視はよくある症状で、水晶体(目の中のレンズ)のにごりが原因で起こります。

高齢の方の両眼複視には、目を動かす筋肉(外眼筋)を支配する神経の異常、その筋肉自体の異常、さらに目の筋肉周囲の加齢によるゆるみなどが原因になることが多いです。


受診科

片目で見て物が二重に見える単眼複視の場合は、原因は眼科的なものに限定されますので、眼科を受診します。

両目で見た時だけ、物が二重に見える複眼複視の場合、原因が脳自体であったり、末梢神経であったりと多彩な原因があります。

この分野の専門は、脳神経内科の受診が必要となります。


診断

複眼複視の診察では、両目で上下左右・斜めの8方向を向いて行います。

目を動かす神経は3つあり、動眼神経が内転、上転、下転の3方向、外転神経が外転の1方向、滑車神経が斜めの4方向を支配しています。

3つの神経の一つの動きが悪くなると、複視の症状が出現するのです。

なお、診断時には、瞳孔の大きさ、対光反応も診察します。

動眼神経が圧迫されると、瞳孔に左右差が出現し、病側の瞳孔が散大し、対抗反応が消失します。

複眼複視の場合は、頭部のMRIとMRA検査は必須です。

脳動脈瘤、脳幹梗塞、多発性硬化症は頭部CTでは、異常を見つけることができませんので、MRIとMRAによる診断だ必要です。


乱視

乱視とは、角膜の表面に傷や歪みなどが生じることによって進入光が乱反射し、もののピントが合わなくなる状態です。

角膜の表面が滑らかなカーブではなく、歪んでいたり、波打っていたりすることで、外から入ってきた光の屈折が不規則になって屈折異常を発症します。

主な症状としては、物がダブって見える、ものが歪んで見える、二重に見える、ぼやけて見える、視力低下などが挙げられます。


近視・遠視

「近視」では近くが見えやすく、遠くがぼやけて見えます。

「遠視」では、近くも遠くも、ぼやけて見えます。

いずれの場合も、ダブって見えたり、二重に見えたりすることがあります。

斜視

片方の目が対象物に向いている時に、反対側の目が対象物とは違う方向を向くことを指します。

斜視には、内斜視、外斜視、上下斜視などがあります。

物がダブって見える場合には、眼球を動かす筋肉の異常、外傷、神経疾患などが疑われます。

眼精疲労

眼の酷使を原因として起こる、眼の疲労感や目の奥の痛みなどの症状をまとめて眼精疲労といいます

生活習慣の乱れや、目・体の病気、眼鏡やコンタクトレンズの不適切使用などが考えられます。

症状としては、視界がぼやける、かすむ、ダブって見える、かすみ目やものが二重に見える、目の乾燥、目の奥の痛み、目のしょぼしょぼ感などが挙げられます。

また、全身症状としては、めまいやふらつき、慢性的な倦怠感、頭痛、肩こりなどが挙げられます。


老眼

加齢に伴い水晶体の弾性が低下することで、ピントを合わせる機能が低下します。

老眼は一般的に40歳くらいから始まります。

手元が見えみくいといった症状があります。

白内障

白内障とは、加齢などによって眼球の水晶体が白く濁る病気です。

早い人であれば40歳くらいから、遅くても80歳以上のほとんどの人に発症する非常に身近な眼科疾患です。

初期には症状が乏しいものの、進行すると視野のぼやけやかすみ、まぶしい、二重に見えるといった症状が現れるようになります。

主な症状としては、ものが二重に見える、視界がぼやけて見える、視界が暗く感じる、目がかすむなどが挙げられます。

白内障は進行すればするほど治療による視力の回復が難しくなるため、できるだけ早い段階で手術治療を行うことが推奨さえrます。


脳動脈瘤

絶対に見逃せない疾患が脳動脈瘤です。

複視を放置して、脳動脈瘤が破裂すると、クモ膜下出血といって命に関わります。

動脈瘤が、内頚動脈と後交通動脈の血管が分岐する場所にできると、目を動かす動眼神経を圧迫することで複視が出現します。


脳幹梗塞

複視は、脳梗塞が原因でも起こります。

特に、大脳皮質よりも、脳幹といって生命を司る重要な部位におこることで複視を引き起こします。

最初は、複視の症状だけであったものが、その後、症状が進行して意識障害を引き起こすこともあります。


多発性硬化症

自己免疫疾患の一つである、多発性硬化症でも複視は出現します。

多発性硬化症は、時間的・空間的に多彩な症状が繰り返されますので、いったん症状が良くなったからといって安心できません。


糖尿病

糖尿病は、合併症として末梢神経障害を合併します。

その中で、動眼神経、滑車神経、外転神経に障害をおこると複視が出現します。


重症筋無力症

重症筋無力症は、筋肉を動かし続けると、力が入らなくなったり、筋力が弱くなる病気です。

目の周囲の筋肉に症状が現れると、まぶたが下がってきたり、複視などの目の症状が起こります。


甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症では、眼球の突出、眼痛、涙目といった目の症状があると複視が生じます。

外眼筋自体がはれてのびることができなくなり、ものが二重に見えます。

しかし、目の症状がなくても甲状腺の機能が亢進しているだけでも複視の症状が出現することがあります。

甲状腺眼症とは、甲状腺に関する自己抗体が出来てしまい、それが目の周りの筋肉や脂肪などを攻撃して炎症を起こした状態です。

甲状腺眼症になると、「目が大きくなった、飛び出た」「まぶたが腫れる」「ものが二重にみえる」などの症状が出現します。

甲状腺眼症は、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)でも機能低下症(橋本病)でも発症する可能性があります。

目の異常で眼科を受診され、初めて甲状腺機能の異常が判明することもあります。