小惑星が地球最接近



725日に、小惑星が地球に最接近したネットニュースを見て驚きました。

確かこの数日、テレビではそのようなニュースは流れていなかったように思います。


月までの距離のわずか5分の1以下の距離

小惑星は、地球から月までの距離のわずか5分の1以下の距離を、通過していったといいますから驚きです。

夜であれば、空を仰いで肉眼でも見えたのではないかと思われるくらいの距離です。

小惑星の大きさは57mから130m程度だったので、光がゆっくりと空を横切るようすが、双眼鏡でも確認できたそうです。

今回の小惑星が地球から73000キロの距離まで接近していたことは、地球の静止放送衛星の軌道が高度36000キロ(軌道半径42000キロ)ですから、わずか2倍以下の距離に接近したニアミスでした。


地球接近のほんの数日前に発見

天文学者たちは接近の数日前まで気付いていなかったようです。

2019 OK」と命名されたこの小惑星は、米国とブラジルの天文学者が地球接近のほんの数日前に発見したそうですから、もし衝突するコースを辿っていたらと思うとぞっとします。

その存在を気づいたのが、数日前であったため、小惑星を破壊したり、その軌道を変えさせる時間は、もう無かったと考えられます。

科学者達がこの小惑星の存在を明らかにしたのは、地球に向かうわずか数時間前だったので、警告などしても間に合わなかったと思われます。

何が起きたのか人々が認識したのは、小惑星が通過したあとのことで全く「OK」ではありませんでした。


マッハ70以上の接近スピード

接近のスピードは秒速24キロと言いますから、時速8万6400キロ(マッハ70以上)の気の遠くなりそうな超高速で、あっと言う間に接近してきたことがよく分かります。


なぜギリギリまで気づくことがなかったのか

なぜギリギリまでその存在に気づくことがなかったのかというと、今回の小惑星はその大きさが小さく、地球に接近する23日前には、ほんのかすかな光しか見えなかったということと、太陽光のある方向から接近してきたため発見が遅れたようです。


東京都ぐらいの都市が一瞬にして壊滅

今回の小惑星は57130メートルでしたが、最近数年間で地球に接近した小惑星のなかでも最大規模だようです。

もし地球に落下していたら、東京都ぐらいの都市が一瞬にして壊滅していたかもしれないと言われています

そのようなことも知らずに、テレビの中の太平楽に興じているその時、突然の爆音に巨大な火球の落下を見上げる間もなく、一瞬で1000万人を失っていたかもしれません。

小惑星はそれほど大きくなくても、考えられないくらい大きな被害を出すことが想定されます。

1908年に、今回の小惑星「2019 OK」よりもかなり小さい、わずか20mの隕石が地球に接近し、シベリアのツングースカで爆発しました。

これにより、ニューヨーク市の2倍近い広さの地域で木々が倒れるほどの甚大な被害を出したことからも、事の重大さが分かります。


地球に接近する惑星の監視

地球に対する潜在的な危険がある天体は、「地球近傍天体(NEONear-Earth Object)」と呼ばれて、NASA(米航空宇宙局)をはじめとする各国の研究機関が監視しています。

NASAは大型の小惑星(約800m以上)の約90%を追跡していますが、アメリカでは連邦議会がNASAに対し、さらに直径140メートル以下の小惑星の90%を追跡するよう指示しています。

しかし、実際に地球上や宇宙にある望遠鏡が見つけたのは、こうした小惑星の3分の1以下にすぎず、その多くが未発見です。

ある日、こっそり100m級小惑星が、地球に近ずいてくることが、現実に有り得ることです


小惑星の衝突の回避

「数日もしくは1週間前では、かなりまずい状況になるだろうが、もう少し前に分かれば選択肢もある」と、アメリカ・ワシントン・ポスト紙は書いています。

選択肢の1つは、物体を打ち上げて、迫りくる小惑星に宇宙空間で衝突させるというものです。

まるで映画アルマゲドンのような発想ですが、100m以上の小惑星には効果があるか分からないとされています。

もう1つは「重力トラクター」と呼ばれるものです。

かなり巨大な宇宙船を飛ばして、長期(NASAによると、数年から数十年)にわたって小惑星と並行して飛び、宇宙船自身の引力を利用して、ゆっくりとその軌道を地球から引き離す方法です。

いずれにしても、小惑星の衝突を回避するためには、数日では足りず、少なくとも数週間、或いは数年から数十年が必要ということになります。


小惑星の最接近の記録

月までの距離は384400kmですが、この内側に入ってくる惑星は過去かなりあったようです。

最接近は20112月4日にわずか2mの小惑星(2011CQ1)が、なんと高度5480km(軌道半径1万
2000km)の距離を通過しました。

たとえ地球に落下したとしても、かなり小さかったので大気圏で燃え尽きてしまったと考えられます。

2011626日にもう少し大きい10mの小惑星(2011MD)が、静止衛星の軌道よりも内側の高度12000kmに最接近しました。

もし地球に落下したら、燃え尽きたかどうか微妙な大きさです。

201635日に最接近した30mの小惑星(2013TX68)も、また静止衛星より内側の高度16913kmの距離を通過しました。

シベリアのツングースカで爆発した小惑星よりも1.5倍の大きさだったので、もし地球に落下していたたら、大惨事を引き起こしていたでしょう。

特に地球に衝突する可能性が大きく、なおかつ衝突時に地球に与える影響が大きいと考えられる小惑星を英語名の"Potentially Hazardous Asteroid"の頭文字であるPHAが略称としてよく使われます。

地球軌道との最小交差距離(Earth Minimum Orbit Intersection Distance )としてEMoidが略称として使われます。

このため、2011CQ1など、衝突しても影響がほとんどない小さな小惑星は、接近距離が小さくてもPHAにはなりません。

PHAの中で最も直径が大きいと推定されているのは小惑星(53319)1999JM8の約7kmです。

最もEMoidが小さいのは直径166mの小惑星2004TN1の約2000kmで、恐ろしいことに地球の半径以下です。

2004 TN1は、20041116日に地球に接近した時は、距離が約1400kmで、軌道周回のタイミングが合わなくて幸いでした。