世界で唯一極超音速を超えた有人機
X-15極超音速機
X-15は、アメリカで開発された世界で唯一の高高度極超音速(マッハ5以上)有人実験機です。
ノースアメリカン社によって製作されました。
ロケットエンジンにより高高度まで上昇出来る能力を持つロケットプレーンです。
ロケットプレーンX-1、X-2
ロケットプレーンはB-29で懸下して上空からの発進したベルX-1で、1948年3月26日チャック・イェーガーによって、マッハ
1.45が達成されました。
その後、改良されたベルX-1Aで、1953年12月12日に同じくチャック・イェーガーによって、マッハ
2.44が達成されました。
さらにB-50母機から発進したベルX-2で、1956年9月27日にミルバーン・アプトによってマッハ3.196が記録されますが、そのまま操縦不能となり、アプトは脱出できずに死亡しました。
X-15の最高速度記録
これらのX-1、X-2の技術をベースとして、X-15の1号機の機体は1958年10月15日に完成しました。何と今から61年前のことです。
1959年9月17日、専用の空中母機であるB-52から滑空テストを行い、その後、XLR11液体燃料ロケットエンジンを使用して初の動力飛行に成功しました。
1960年8月4日には1号機がマッハ3.31を達成し、同年8月12日には同じ1号機が飛行高度41,605mを達成しました。
1963年8月22日に行われた91回目のフライトで、ジョセフ・A・ウォーカーの操る機体が高度107,960mに到達しました。
これがX-15計画中の最高到達高度となり、これは宇宙高度(高度100km以上)での初めての有人弾道飛行として記録されました。
1967年10月3日に行われた188回目のフライトで、ウィリアム・J・ナイトの操縦する、補助燃料タンク2個を吊架したX-15A-2が最高速度7,274km/h(マッハ6.7)を記録しました。
1968年10月24日、1号機による199回目のフライトをもってX-15の飛行試験は終了しました。今から51年前、半世紀も前のことでした。
特殊な構造
X-15のボディはテーパー比の少ない水平直線翼に、楔形の断面の全遊動垂直尾翼(胴体上下装備)、下半角の付いた水平尾翼を持ちます。
内部はほとんどが加圧用ヘリウムタンク、推進剤である液体アンモニアと液体酸素のタンクで占められており、機体後部にエンジンが搭載されています。
X-15A-2に搭載されて最高速度を達成したリアクション・モーターズ製XLR-99ロケットエンジンは、世界初の推力可変(50%から100%)・再着火可能な液体燃料エンジンでした。
X-15A-2に搭載されて最高速度を達成したリアクション・モーターズ製XLR-99ロケットエンジンは、世界初の推力可変(50%から100%)・再着火可能な液体燃料エンジンでした。
X-15は自力で離陸せず、母機であるB-52の主翼下に懸架された状態で高度13,870mまで上昇した後に空中発進し、エンジン点火して上昇加速後、燃料が無くなると滑空降下して、滑走路へ降着装置を使って着陸する飛行パターンをとります。
降着装置は車輪式前輪1脚と後部のスキッドいわゆるスキー式ソリの2脚の3点式でした。
着陸の際には着陸時の妨げにならないように、下に突き出た垂直尾翼のうち、半分の全不動式ラダーを切り離し基部のみ残すようになっています。
着陸時の減速はスキー式ソリと地表の摩擦と垂直尾翼基部(胴体との付根)が左右に展開するエアブレーキ、およびドラッグシュートで制動する方式でした。
着陸の際には着陸時の妨げにならないように、下に突き出た垂直尾翼のうち、半分の全不動式ラダーを切り離し基部のみ残すようになっています。
着陸時の減速はスキー式ソリと地表の摩擦と垂直尾翼基部(胴体との付根)が左右に展開するエアブレーキ、およびドラッグシュートで制動する方式でした。
なお、地上では後輪のかわりにドリーで尾部を支えています。
極超音速における空力加熱に対処するため、機体にはチタンやステンレスのほか、インコネルXと呼ばれる耐熱ニッケル合金を使用しています。
極超音速における空力加熱に対処するため、機体にはチタンやステンレスのほか、インコネルXと呼ばれる耐熱ニッケル合金を使用しています。
X-15A-2で最高速度達成時には、機体に白い耐熱塗料(アブレイティブ・コーティング)を塗布していました。
これによって、塗料が熱で蒸発することに依って熱を奪い機体冷却する処置を施していましたが、凄まじい断熱圧縮による空気加熱(約1300℃)で、耐熱塗料は機体から剥がれかけていました。
超高高度では空気力が小さいため、機首上下左右(ピッチおよびヨーを制御)と主翼両端(ロールを制御)に備えられたヒドラジン(推進剤)を噴射してその反作用で推力を得るRCS(Reaction
Control System:姿勢制御装置)を用います。
これは現在の宇宙船で使用されているのと同じ装置です。
スペック
スペックは下記の通りです。
全長:15.99
m(X-15は15.25m)
全幅:6.8
m
全高:3.55
m
翼面積:18.58
m2
自重:8,320
kg
全備重量:25,460
kg
エンジン(いずれも液体アンモニア+液体酸素)
初期:リアクション・モーターズ製XLR11
2基
後期:リアクション・モーターズ製XLR99-RM2(31,750kg
/ 高度30,000m)1基(ロケットのため、最新のIHIが開発中のXF9-1ジェットエンジン15tの倍の推力があります)
最大到達速度:7,274
km/h
最大到達高度:107.970
km
航続距離:450
km
未だにX-15を凌ぐ有人機は現れていない
開発されて、61年も経過した現在に至るまで、有人機として最大速度、最高高度の公式記録を保持しています。
速度記録としてはスクラムジェットを搭載した無人機X-43A
ハイパーXによるマッハ9.68が最高ですが、有人という点ではX-15を凌ぐ有人航空機は現れていません。
また高度記録は、国際航空連盟の定める宇宙との境界線100km(カーマン・ライン)を突破していますが、X-Prize
スペースシップワンが、非公式にこの記録を上回っています。