フェルミのパラドックス


宇宙天文学で地球型の惑星がいくつか発見され、細菌か原始生物のレベルか分かりませんが、地球外生命体は必ず存在するだろうというのが、最近の話題となっています。

但し地球外知的生命体つまりは宇宙人の存在となると、SFの世界か一部の神秘主義者、或いは空想論者だけが語る想像上のお話かと思っていましたが、学術的に真剣に研究している人達がいました。

フェルミのパラドックス

1950年代にノーベル賞を受賞した物理学者エンリコ・フェルミは地球外文明の存在の可能性の高さとそのような文明との接触の証拠が皆無である事実の間にある矛盾を指摘しました。

フェルミの計算によれば、かなり控え目な前提を置いてさえ、宇宙のどこかで発生した知的生命体が、既に銀河の星々を植民地化し、人類と接触するほどに進歩していなければならないと推定されるからです。

高度に発達した地球外知的生命体が、統計的には、既に存在すると推定されるにもかかわらず、実証的にはその存在を確認できないという問題は、フェルミの質問にちなんで「フェルミのパラドックス」と呼ばれています。

フェルミは、昼食をとりながら同僚と議論の中で「みんなはどこにいるんだ?」という疑問を発したと伝えられています。

ここで言う「みんな」というのは、地球外知的生命体=宇宙人のことです。

ドレイクの方程式

その後1960年代に銀河系に存在し人類とコンタクトする可能性のある地球外文明の数を推定する式として「ドレイクの方程式」が提案されました。

この方程式は、1961年にアメリカの天文学者であるフランク・ドレイクによって考案されました。

ドレイクの式は銀河系に存在し人類とコンタクトする可能性のある地球外文明の数Nを人類がいる銀河系の中で1年間に誕生する星(恒星)の数 等のいくつかのパラメータを掛け合わせて求める単純な式です。

しかしこのパラメータの数値の推定が、大変問題になります。

ドレイクが1961年当時用いた値によってN=10と計算されていますが、その後の宇宙天文学の知見を取り入れパラメータの値が修正されて計算されています。

ドレイク方程式に関し注目すべきことは、上記の各パラメータに妥当だと考えられる値を入れると、多くの場合、N≫1 となることです。

このことが地球外知的生命体探査を行うための強力な動機付けとなっています。

フェルミ-ハートのパラドックス

宇宙物理学者のマイケル・ハート(Michael H. Hart)は1975年、「フェルミのパラドックス」について考察する論文を発表しました。

ハートは、天の川銀河が形成されてから約136億年が経っており、この間に知的生命体が同銀河を植民地化する時間はふんだんにあったにもかかわらず、そうした働きかけは地球上の記録には残っていないと指摘しました。

この点からハートは、天の川銀河には人類以外に高度な文明を持つ生命体はいないはずだと結論づけました。

最近の論文

人類が住む天の川銀河では、さまざまな恒星系を超えて地球以外の文明が広がっている可能性があるとする新たな研究論文が発表されています。

この研究論文の主著者で、コンピューター科学を専門とするジョナサン・キャロル=ネレンバック(Jonathan Carroll-Nellenback)はBusiness Insiderの取材に対し、以下のようにコメントしています。

「恒星の動きを考えに入れないとすると、残された結論は、自らが生まれ育った惑星を離れた生命体はいない、あるいは、この銀河系で高度な技術を持つ文明は我々人類だけ、という2つだけだ」

天の川銀河に属する恒星(と、その周囲を回る惑星と衛星)は、銀河の真ん中を回転軸として、それぞれ異なる軌道と速度で周回しています。

そのため、時にはある恒星系が、別の恒星系のそばを行き過ぎることがあると、キャロル=ネレンバックは指摘しています。

そのため、地球外知的生命体は、探査目標が自分たちに近づくタイミングを待っている可能性があるといいます。

その場合、宇宙に高度な文明が広まるのに必要な時間は、1970年代にハートが推定したときよりも長くなるだろうと推定されます。

そうであれば、地球外知的生命体はまだ地球を訪れていないか、あるいは、訪れたとしても人類が今のように進化するはるか以前であった可能性があります。

これまでも研究者は、フェルミのパラドックスに対して答えを出そうと、さまざまなアプローチを採用してきました。

地球外生命体が、惑星の地表よりも低い海の中で育まれている可能性について調査した研究もあるし、恒星間航行が可能になる前に、文明が存続不可能になって崩壊したという仮説を立てた研究もあります。

ウィットマイヤー氏は、高度な文明は短期間で絶滅を迎えるものであるかもしれないとも述べています。

また、「動物園仮説」と呼ばれる考え方もあります。

こちらは、天の川銀河内の知的生命体からなる諸社会が、我々人類には干渉しないという取り決めを交わしている、という仮説です。

一方、2018年にオックスフォード大学の研究チームが発表した論文では、天の川銀河内で人類が唯一の知的生命体である確率を40%、さらには、全宇宙で唯一の存在である確率を約33%と見積もっています。

「居住可能な条件を備えた天体は非常にまれなため、そうした天体が再び航行可能な距離にまで近接する前に、文明は滅びてしまうのかもしれません」

「すべての恒星系は、生命体が居住可能で、実際に住んでいる可能性もあります。

だが、彼らが地球を訪れないのは、距離が遠すぎるからかもしれない」と、キャロル=ネレンバック氏は指摘します。

マイケル・ハート氏が「事実A」(Fact A)と呼んだ問題で、現在、他の恒星から生命体が地球を訪れている形跡はなく、また、過去についても訪問の証拠がないと述べています。

しかし、だからと言って、地球外生命体が地球を一度も訪れたことがないとは言い切れないと、今回の研究論文の著者たちは主張しています。

論文の著者たちは、文明を持つ地球外生命体が数百万年以上前に地球を訪れていたとすると、彼らの訪問の証拠は現時点ではもう何も残っていないだろうと指摘します。(地球が誕生したのは45億年前)

さらに論文の著者たちは、地球外生命体には「すでに生命体が生息している惑星を訪れたくない」という意向があるのかもしれないと述べています。

異星人が、生命のある惑星を訪れたいはずだという思い込みは「居住地拡大」を「征服」と同一視する人類の傾向を素朴に当てはめる試みだと、著者たちは述べています。

「生命体が居住できる条件を備えた惑星はおそらく稀なものであり、簡単にはたどり着けない、というだけだ」とキャロル=ネレンバック氏は述べています。

様々な考察

宙人は存在しているが、存在の証拠を人類の知識では理解できないのだという主張から、宇宙人の存在を前提にフェルミのパラドックスの解決が試みられたり、知性を持った宇宙人は存在しないか極まれにしか存在しないので、人類はそれらと接触することができないという観点から議論されることが多いです


1)宇宙人は存在し、すでに地球に到達しているが検出されない。 

到達した宇宙人は発見されても全て、各国政府により公表が差し控えられている。  

到達した宇宙人は全て、潜伏、又は地球の生命に擬態して正体を隠している。 

到達した宇宙人は全て、ケイ素生物・意識生命体など、地球人が「宇宙人」として認識できない形態の生命である。 

別次元(五次元等)に存在するため、地球人が認識出来ない。


2)宇宙人は存在し、過去に地球に到達していたが、最近は到達していない。 

既に来訪しており、遺跡などにその痕跡が残されている。

既に来訪しており、我々人類(もしくは地球上の他の生物)はその子孫である。 

既に来訪しており、ハンガリー人を名乗っている(当時のフェルミの周囲で語られたジョーク。「火星人」と言われた天才ジョン・フォン・ノイマンらハンガリー勢を指しています


3)宇宙人は存在するが、なんらかの制限又はある意図のためにまだ地球にやってきていない。 

多くの宇宙人は穏健で引っ込み思案な知的生命であるため、宇宙に進出しない。 

知的生命体は、高度に発達すると異星人の文明との接触を好まなくなる。 

異星人と接触した結果地球上に起きる混乱を避けるなどの目的で敢えて目立った接触を行わない。これは「動物園仮説」又は「保護区仮説」と呼ばれる。創作小説等の言葉を借りれば、「未開惑星保護条約(宇宙に大規模に進出し得ない文明レベルの惑星には介入しない)」のような星系間の条約が存在する可能性が指摘されている。


4)宇宙人は存在するが、恒星間空間に進出し地球にたどり着くための進化・技術発展における難関を突破できない。 

生命が発生し、知的生命として発展し、宇宙航行種族になる確率が非常に低い。 

高度な技術文明があっても、地球人の観測圏までたどりつくのは非常に難しい。 

ほとんどの宇宙人はある程度文明が発展すると、核戦争や著しい環境破壊などの事態を引き起こし、短期間に滅亡してしまうため宇宙旅行に乗り出す時間を持ち得ない。


5)この宇宙には地球以外に生命体が存在しない。「存在しないものは来ない」。 

この宇宙には地球以外に生命が存在しない。 

地球以外に生命が発生する確率はゼロではないが、今のところ地球の生命が一番目に発生した生命で、二番目がまだ登場していない。或いは二番目が現在の地球の文明レベルよりも低い。 

宇宙人による全天探索計画が実際になされているとしても、はるか遠方で行っているため光速の壁に突き当たってまだ地球には達していない(137億光年以内に、そのような試みをする知的生命体はいない)

このパラドックスに関連する問題は天文学、生物学、経済学、哲学など様々な分野に及び、多くの学術的な成果を生み出しました。

宇宙生物学という分野の出現で、フェルミのパラドックスと宇宙人の問題に対して、学際的に検討することが可能となりました。