地上で音速を超えた世界最高速の車


スピードはいつの時代にあっても、心躍らせるものがあります。一見クレージーと思われるような車もその最たるものですが、このような車で命がけで疾走する様は感動的でさえあります。

スラストSSC

スラストSSC (Thrust SSC、Super Sonic Car) は、イギリスで設計・製作された速度記録専用自動車です。

市販車を対象とした自動車雑誌では、普段目にすることがない車です。

1983年以来の自動車の速度記録を1997年に更新すると同時に、世界初の「音速を突破した自動車」になりました。

両脇に大きなジェットエンジンを抱えて、見るからに音速を超えて疾駆しそうなデザインです。

1997年10月15日、イギリス空軍中佐のアンディ・グリーンの操縦により、アメリカ合衆国ネバダ州において時速1,227.985キロメートル(時速763マイル)の自動車の速度記録を打ち立てました。

この数値はマッハ1.016であり、世界で初めて音速を超える公式記録を残した自動車となりました。


スラストSSC は全長16.5メートル、全幅3.7メートル、重量は10.5トンです。

イギリス仕様のジェット戦闘機F-4K/M(ファントムFG.1/FGR.2)に積まれるものと同じロールスロイス・スペイエンジンを2基搭載しています。

その推力は合計223キロニュートンに達し、毎秒18.2リットルの燃料を消費します。

一般的に用いられる単位に換算すると、最高速度で走行中の燃費は、燃料1リットル当たりわずか約18メートルになります。

スピードを追い求めるジェットエンジン車は、普通の車からは想像できないくらい多くの燃料を消費します。



ブラッドハウンドSSC

現在このスラストSSCの記録を更新すべく、ブラッドハウンドSSC(Bloodhound SSC、Super Sonic Car)という車が準備されています。

ブラッドハウンドSSCは、全長12.9m、全幅2.5m、質量6422kgです。

スラストSSCよりは小さくなっているものの、スピードを出すためだけに特化した車としてはかなり大きな車体です。

推進には、ユーロファイター・タイフーン戦闘機で使われている ロールスロイスEJ200ターボファンエンジンと、末端水酸基ポリブタジエンと高濃度過酸化水素を燃料・酸化剤とし、その燃焼ガスを推進剤とするNammo製ハイブリッドロケットエンジンを使用します。

その他に、高濃度過酸化水素を供給するポンプを駆動するジャガーのV型8気筒内燃レシプロ機関も搭載しています。

最高出力134,998psを発揮し、最高速は1,609km/h(マッハ1.31)を目指しているとのことです。

ジャガーやロールスロイスなど350以上の企業や大学の協力で8年の歳月を費やして完成しました。

ジェット燃料が400リットルとロケット推進材が800リットル搭載されます。

ジェットエンジンやロケットエンジンを使って、世界最高速の車に挑戦し、半世紀近く前の1970年10月に初めて1000km/hを超えたのはアメリカのBlue Flameでしたが、その後更なる最高速度の限界に挑戦し続けているのはイギリスのみです。