無人超音速機

無人超音速機は、特に軍事用に偵察機として運用されてきました。

しかし偵察衛星のカメラの性能が格段と上がり、リスク無しに地上の50㎝以下のものが識別されるようになると、取って代わられました。

亜音速ステルス機が、開発されるようになり、有人機との共同作戦と、撃墜のリスクを下げるため、再び超音速無人機、更には相手迎撃システムを突破するための極超音速無人飛行体が現在研究開発されています。


ロッキードD-21(米国)



D-21 は、ロッキード製の偵察用無人航空機です。

1962年10月に開発が開始されました。

もともとロッキードの社内呼称Q-12として知られており、超長距離もしくは極めて危険なミッションでの使用が想定されていました。

D-21は高解像度のカメラを1台搭載し、事前にプログラムされた地点の上空で地上を撮影した後、回収のためにカメラモジュールを洋上で投下し、機体は回収されることになっていました。



D-21をB-52爆撃機から発射し、ラムジェットが作動可能な速度までの加速のために固体ロケットブースターを用いる発射は1966年4月27日に成功しました。

D-21は1,200海里(2,200km)の飛行の後システムの故障により行方不明となったものの、作戦高度の9万フィート(27,400m)およびM3.3の速度に到達しました。

最終的にD-21とD-21Bあわせて38機が製造され、そのうち21機が使用されました。

1969年から実戦で中国のロプノール核実験場の偵察などに使われましたが、カメラモジュールが回収できなかったり、機体が墜落したり行方不明になるなどして、満足な成果を収められませんでした。

1971年7月に、D-21B計画は新世代の写真偵察衛星の登場もあって、以降の計画は白紙撤回されました。

仕様スペック

翼幅:19ft(5.8m)
全長:42ft 10in(13m)
離陸重量:11,000lb(5,000kg)
最大速度:2,700mph/2,300kt(4,300 km/h=マッハ3.5)
飛行高度:95,000ft(29,000m)
航続距離:3,000海里(5,550km)以上


X-43(米国)







X-43は、NASAで開発、実験が行われた、スクラムジェットエンジン搭載の無人試験機です。

2004年11月16日に、エア・ブリージングエンジン(空気吸込み型エンジン)を搭載した機体としては最高速度となる時速12,144 km(7,546 mph、マッハ9.68)を記録した世界最速の航空機です。

形状はX-30のジェネラル・ダイナミクス案に酷似したリフティングボディで、全体で揚力を生み出す構造となっています。

機体側面、及び上面に極めて小さな主翼と2枚の垂直尾翼を持ち、胴体下部に箱型のスクラムジェットを装備しています。

推進剤は液体水素を1㎏搭載し、空気中の酸素を酸化剤とします。

飛行は、ブースター用に改修されたペガサスロケットの先端に取り付けられた状態でNASAのNB-52に搭載され、1万メートル程度の高空から空中発進した後、さらに高空まで上昇します。

マッハ2まで加速、ブースターを切り離してスクラムジェットを作動します。

スクラムジェット燃焼時間はわずか10秒足らずで、おおむねマッハ10まで加速、高度3万メートルを飛行します。

エンジンカット後は滑空しながらデータを収集し、廃棄されます。つまり機体は使い捨てです。

仕様スペック

全長:3.7 m
全幅:1.5 m
全高:0.6 m
動力:スクラムジェットエンジン×1基
最大速度:マッハ9.68(12,144 km/h)
最大到達高度:30,500 m
航続距離:1,100 km

X-51(米国)




X-51はスクラムジェットエンジンを搭載する無人試験機です。

Xプレーンの1つで、通常のターボジェットエンジンでは機能しなくなる極超音速領域において、スクラムジェットエンジンの試験を行いました。

研究・実験・開発はアメリカ空軍、米ボーイング社、米プラット・アンド・ホイットニー・ロケットダイン社、DARPA、NASAによっておこなわれました。

2003年に研究を開始し、2005年にX-51と名づけられました。

X-43との相違点としては、スクラムジェットの燃料(液体水素→ジェット燃料)、ロケットブースター部の流用元(ペガサスロケット→MGM-140 ATACMS)などが異なります。

機体は、NB-52Hによって35,000フィート(10.7キロメートル)上空まで運ばれ、そこから投下されます。

投下直後はATACMSから流用したロケットブースターでマッハ4.5まで加速し、その後スクラムジェットエンジンでマッハ6から7となります。

機体中央部(本体後部)に4枚、尾部(ブースター部端)に6枚の小型翼を持ち、インテイクは機体下面にあります。

2013年5月1日には4回目で最後の飛行試験が行われ、マッハ5に到達し、試験は成功しました。

仕様スペック

全長: 7.9 m (26 ft)
空虚重量: 1,814 kg (4,000 lb)
動力: Pratt & Whitney Rocketdyne SJX61 SJY61 ラムジェット/スクラムジェットエンジン、 × 1
最大速度: 6,200 km/h (3,900 mph) マッハ 7+
航続距離: 740 km (460 miles)
実用上昇限度: 21,300 m (70,000 ft)

SR-72(米国)



最高速度マッハ6を発揮する双発の極超音速無人偵察機として計画されています。

全長は30mほどで、極超音速飛行時に用いられるデュアルラムジェットエンジンの他に、離陸後にマッハ3まで加速する為に使われるジェットエンジンを搭載しています。

武装としては、ロッキード・マーティンが開発中の極超音速ミサイル「HSSW」を搭載することも可能だとされています。

また、機体形状はステルス性をさほど意識してはおらず、それよりも極超音速で敵の攻撃を振り切る事が重視されています。

開発計画は2013年に公表され、試作機の完成は2018年を、実戦配備は2030年を予定しています。

今回発表された仕様が実現すると世界初の実用極超音速機となることになり、ロッキード・マーティンによると「同機を撃墜するには同等以上の速度を出すことができる極超音速ミサイルがなければ不可能だ」としています。

WZ-8(中国)





10月1日に行われた中国建国70周年記念の軍事パレードで、これまで一度もその存在を見せることがなく、世界にとって全くの未知の存在である超音速無人偵察機「WZ-8」を初披露しました。

この超音速無人偵察機は、撮影された写真を見る限りエアインテーク(空気取り入れ口)が存在せず、海外メディアは、この機体は液体燃料を使用したロケットエンジンを搭載していると主張しており、最高速度は極超音速には到達しないもののマッハ3.5から4.5程度の速度を出すことが出来るだろうと推定しています。

WZ-8は2015年に初飛行が確認されていたらしく、昨年には人工衛星が捉えた画像が公開されており機体の存在は明らかになっていました。

中国軍は、今回初披露した「WZ-8」の詳細な性能について明らかにはしていませんが、海外メディアの情報を総合すると、この機体は中国空軍の戦略爆撃機「H-6N」の機外に吊り下げ式方式で搭載され発射(発進)され、液体燃料(燃料の種類は不明)を使用したロケットでマッハ4.0程度まで加速し高度4万メートルを飛翔するといいます。

動力を使用した飛行距離は1,500km~2,000kmで、燃焼後の無動力状態(高高度)からの滑空距離を考慮すると、最大で2,500km程度の飛行能力を持っていると見られ、さらに降着装置を備えているため、陸上基地への帰還と機体の再使用が可能と見られますが、搭載されたロケットエンジンまで再使用可能なのか、それとも使い捨てなのかは不明です。