世界最速の船舶
航空機や車の最速記録は、よく知られていると思いますが、船舶の世界最速記録となるとあまり馴染みがありません。
ネットで世界最速の船舶を調べてみました。
世界最速の水上艇 スピリット・オブ・オーストラリア(オーストラリア)
水上速度記録は相反方向の2回の走行における平均速度が記録として認定されます。
現在の記録はオーストラリアのケン・ウォービーが1978年10月8日に「スピリット・オブ・オーストラリア」によりニューサウスウェールズ州ブロワリングダムで出した平均時速317.60mph(約511.11km/h)です。
水上速度記録は挑戦者の事故死率が非常に高い危険な記録であり、ジェットエンジンが記録更新に使用されるようになった1950年代以降は最終的に生還した挑戦者はほとんどいません。
「スピリット・オブ・オーストラリア」の記録も、海ではなく波が立たない湖面で達成されています。
海面ではこのような高速になると、わずかな波でも船体は水面をバウンドし、再び着水するときに受ける水面からの反動は、まるでコンクリート面に激突するような大きな衝撃となります。
このため、少しでもバランスを崩せば、船体を破損しバラバラに砕け、水面にたたきつけられて死亡する大事故をまぬがれません。
世界最速の原子力潜水艦 K-162 (ロシア)
潜水艦の潜航中速力の世界記録は、K-162原子力潜水艦が1971年以来保持しています。
K-162(Ru:
К-162)は、旧ソ連海軍の巡航ミサイル原子力潜水艦です。
同型艦はありません。
就役時にはK-162でしたが、後にK-222に変更されました。
NATOコードネームは、パパ型(級)原子力潜水艦です。
本格的なチタン製の大型潜水艦の建造に伴う技術的な問題とチタン材の調達の問題から、起工は1963年12月28日にまでずれこみました。
1968年12月21日進水したK-162は、ほぼ1年後の1970年1月13日に42
kt(このとき原子炉出力80%)、翌1971年には44.7
kt(82.8km/h)を記録し、潜水艦の潜航中速力の世界記録を達成しました。
この記録は、現在も破られていません。
しかし、その代償として、水中雑音レベルはきわめて高く、高速力を発揮した際には船殻外部を損傷する場合もありました。
システムの陳腐化もあり、建造はK-162ただ1隻のみにとどめられました。
また、多くの装備品の命数が乏しいことなど、作戦運用には問題が多かったことから、K-162はその就役期間のほとんどを実験艦として過ごしました。
1980年、K-162は、セヴェロドヴィンスク造船所での炉心交換作業中に、1次冷却水漏出事故を起こし、原子炉室が汚染されました。
その後、1988年に予備役、1989年に除籍とされましたが、破損した冷却水配管は満足に補修されていません。
解体を予定されるも、予算不足のため実行されることなく、現在も保管中です。
世界最速の魚雷 VA-111 シクヴァル(ロシア)
船舶ではありませんが、水中を移動する物として、とてもユニークな魚雷が存在します。
VA-111
シクヴァル(ロシア語:シュクヴァール;英語:shkvalもしくはsquall、sjkval)は、ソビエト連邦により開発された、スーパーキャビテーションを利用した兵器です。
速度200ノット(370km/h)を超えることが可能であり、ロケットエンジンで推進力を得るため、「魚雷」と言うよりは「水中を推進するロケット」に近いです。
この速度は魚雷がスーパーキャビテーションと呼ばれる薄い気泡の中を通る事で、摩擦を低減して達成されます。
魚雷が移動するとき周囲に大量の小さなガス排気による泡を作り出せば、抗力を大幅に減らし、非常に高い速度を発揮することが可能となります。
本魚雷のガス泡沫の層は、水を外方向へ逸らして作られますが、これは特別に形成されたノーズコーンと、エンジンからのガスの展開によります。
水が魚雷の表面へと入り込まず、接触しない状態が保持されることで、摩擦抵抗は大幅に減らされ、非常な高速度が可能となりました。
この高速性や推進にロケットモーターを使用する点から、シクヴァルは「水中ミサイル」とも表現されます。
魚雷発射管から射出されるVA-111は、発射管から出る際に50ノット(92.6km/h)の初速を持ちます。
直後に固体燃料ロケットに点火し、最高200ノット(370.4km/h)の速度へと推進します。
いくつかの報告書では250ノット(463km/h)以上の速度が達成される可能性があり、また300ノット(560km/h)の派生型の研究が進行中だったことが示されています。
この派生型ロケットエンジンは高濃度過酸化水素とケロシンの組合せを採用しています。
推進剤タンクには約1.5tの過酸化水素と500kgのケロシンが搭載されています。