F-16ファミリー
F-16(米国)
F-16は、アメリカ合衆国のジェネラル・ダイナミクス社が開発した第4世代ジェット戦闘機です。
愛称はファイティング・ファルコン
(Fighting
Falcon)です。
ジェネラル・ダイナミクス社軍用機部門のロッキード社への売却と、ロッキードのマーティン・マリエッタ併合によるロッキード・マーティンへの改称により、現在はロッキード・マーティン社の製品となっています。
F-16の正式な初飛行は1974年2月2日です。
大型化したLERX(ストレーキ)および胴体とLERX及び翼を一体で成形するブレンデッドウィングボディを採用し、全周視界がほぼ確保された、ほとんど枠のないキャノピー、フライ・バイ・ワイヤを搭載するなど、当時の革新的技術を積極的に取り入れています。
FBW(フライ・バイ・ワイヤー)により操縦桿の配置が自由になったため、F-16では操縦者の右側に移動させ(サイドスティック方式)、シートのリクライニング角を30度と深めることにより、遠心力の身体軸方向の分力を緩和してブラックアウトの発生を遅らせたり高G機動時の加重を体全体に分散することにより、対G能力の向上を図っています。
初飛行から45年以上経過していますが、段階的な改良が続けられたことにより後発の4.5世代機に引けを取らない能力を維持し続けています。
変わり種として、F-16以上の搭載量を誇る、クランクト・アロー・デルタ翼のF-16XLも試作されましたが採用されませんでした。
F-16は米軍だけで2,244機が配備され、海外向けも含めると4,500機以上製造されました。
世界20ヵ国以上の空軍が採用した実績からベストセラー戦闘機と評されており、アメリカ製のジェット戦闘機としては約9,000機のF-86、約5,700機のP-80、約5,000機のF-4に次ぐ第4位の生産数を誇ります。
仕様(F-16E)
全幅:9.45m(翼端ミサイルランチャー含む)
全長:15.03m
全高:5.09m
翼面積:27.87m²
空虚重量:9,979kg(コンフォーマル・フューエル・タンク装備)
全備重量:13,154kg
最大離陸重量:20,866kg
発動機:ゼネラル・エレクトリック
F110-GE-132(A/B使用時
144.47kN)1基
FCS:AN/APG-80[258]
最大速度:マッハ2.02
乗員:1名
F-2(日本)
F-2(日本)
F-2(エフツー
/
エフに)は、F-1の後継として開発された日本・航空自衛隊の戦闘機です。
1995年(平成7年)に初飛行を行い、2000年(平成12年)から部隊配備を開始しました。
本機の本開発が始まる以前の「FS-X(次期支援戦闘機)」の段階では国産機開発として計画されていました。
FS-Xは三菱重工業と川崎重工業が防衛庁技術研究本部に対し、戦闘機開発に関する研究報告を提出しています。
ともに双垂直尾翼・エンジンは推力8トン級の双発で「対艦ミサイル4発を装備して450海里の戦闘行動半径」はクリアするとされていました。
スペックとしては、現在のF/A-18E/Fに近いが、三菱案はカナードを装備し、川崎案はF/A-18に似たシルエットを持っていました。
最終的に技術的・政治的問題によりアメリカとの共同開発となりました。
これによりロッキード・マーティン社のF-16多用途戦闘機をベースとし、三菱重工業を主契約企業、ロッキード・マーティンなどを協力企業として開発されることになりました。
F-2はシルエットこそF-16に酷似していますが、機体各部の拡大や素材ならびに構造の変更などによって、原型機とは著しい差異がみられます。
ベース機のF-16C/Dブロック40から胴体を0.5mほど延長し、さらには主翼面積を大きく拡張(主翼面積はF-16C/Dが27.9m2に対し、F-2A/Bは34.84m2)しており、重量増加による翼面荷重の増加を抑えて旋回性の向上を図っています。
同時に主翼の操縦翼面や水平尾翼、ストレーキ(主翼の前方の機体張り出し)も面積を拡大しています。
細かな改修としては、本格的なステルス機の菱形翼ほどではないが、わずかに主翼や水平尾翼の後縁に前進角が付けられています。
全体構成はF-16と似ているが、大型化して下部を膨らませたレドーム、レドームの改修に合わせて形状を変更したエアインテーク、低高度飛行時のバードストライク対応等のためにフレームを2本に増やし3分割化した風防、面積を拡大しテーパー翼とした主翼、着陸滑走距離短縮のためのドラッグシュート搭載を収容するために延長した垂直尾翼付け根のフェアリング等、多くの相違点があります。
大型化による重量増加を最小限に留めるため、翼を炭素繊維強化複合材による一体構造とする等の措置により、機体規模拡大に伴う重量増は抑えられています。
F-16Cと比較すると、空虚重量で900kg程度(F-2の9,527kgに対してブロック40の空虚重量は約8,627kg)、最大離陸重量では378kg(F-2の22,100kgに対してブロック50の最大離陸重量は21,722kg)となっています。
エンジンはF110-GE-129
ターボファンエンジン(クリーン時約75.62kN/アフターバーナー時約131.23kN)をIHIでライセンス生産して搭載しています。
アビオニクス(航空電子機器)もF-16以降に登場した新技術を用いて改修がされており、最も特徴的なのはレーダーとして三菱電機が開発したJ/APG-1・AESA(アクティブ式電子走査アレイ)レーダー(Xバンド)を搭載した点です。
AESAレーダーの装備は、量産機ではF-2が世界初となりました。
なお、このレーダーの搭載に合わせレドームが大型化され、エアインテークにも手が加えられています。
飛行制御にはF-16同様フライ・バイ・ワイヤ
(FBW)
を用いますが、飛行制御コンピューターのソースコードをアメリカ側が日本側に提供しなかったため、日本で独自のものを開発・使用しています。
諸元
乗員:
1名
(F-2A)
/2名
(F-2B)
ペイロード:
8,085kg
全長:
15.52m
全高:
4.96m
翼幅:
11.13m(両主翼端ランチャー含む)/10.80m(含まず)
翼面積:
34.84m2
空虚重量:
9,527kg
最大離陸重量:
22,100kg
動力:
IHI/GE F110-IHI-129 ターボファンエンジン
ドライ推力:
75.62kN (7,710kg)
×
1
アフターバーナー使用時推力:
131.23kN (13,380kg)
×
1
機内燃料容量:
4,750L
機体寿命:
6,000飛行時間以上
最大速度:
マッハ2.0
フェリー飛行時航続距離:
4,000km
*
戦闘行動半径:
450海里
,830km(ASM-2×4,
AAM-3×2, 600gl増槽×2)
T-50(韓国)
T-50は、ロッキード・マーティンから技術的支援を受けて韓国が製造した練習機です。
愛称は「ゴールデンイーグル」です。
ロッキード・マーティンとの技術提携もあって、胴体末尾にエンジンノズルを有するブレンデッドウィングボディの機体形状など、F-16の影響が各所に見られ、形状が似ている部分があります。
しかし、F-16のエアインテークが機体下部の1ヶ所であるのに対し、本機ではストレーキの下部に左右各1ヶ所ずつ配置されています。
これは、同じくF-16の設計をベースにした台湾の経国と共通します。(ただし経国は双発機)
F-16とほとんどシルエットが同じに見える日本のF-2よりも、外観の差異は大きいように見えますが、F-2とは逆に細部はF-16とほとんど同じようです。
練習機であるために大型レーダーを有さず、また、機首は小ぶりです。
F-16とほとんどシルエットが同じに見える日本のF-2よりも、外観の差異は大きいように見えますが、F-2とは逆に細部はF-16とほとんど同じようです。
練習機であるために大型レーダーを有さず、また、機首は小ぶりです。
F-16と同様に単発機ですが、機体がF-16よりも小型であるため、エンジンは出力のわりには比較的小型なF404-GE-402
ターボファンエンジンの単発装備としています。
調達価格は230億ウォン(約25億円)前後という報道がある一方、1機当たり350億ウォン(約38億円)に達すると言う報道もあります。
2014年、T-50を使用するブラックイーグルスは、同年11月に中国で開催される航空ショーに参加する予定でしたが、直前になりアメリカ側から「使用するT-50の技術が中国に流出する恐れがある」として参加中止の申し入れを受けています。
エンジンや電子装備など、中心技術は殆どがアメリカ製であるため、輸出にはアメリカの法律の影響を受けます。
輸出するためには、アメリカの承認が必要です。
KAIは国内向け、各派生型も含め途上国を中心として最大600機の生産を見込めると分析しています。
T-50の海外輸出が見込める一つの要因としては、T-50とシステムの互換性が高いF-16を採用している国が多くあることが挙げられます。
国際マーケッティング活動は、KAIとロッキード・マーティンが協同して行っています。
輸出は現在までにインドネシア16機、イラク6機、フィリピン12機、タイ4機が既に引き渡し完了となっています。
海外ではイタリアのアエルマッキ社のM-346と採用を争うことが多いようです。
仕様
乗員:2名
全長:12.98m
全高:4.78m
全幅:9.17m
重量:6,441kg
最大離陸重量:11,985kg
エンジン:GE F404-GE-102 ターボファンエンジンx1基
推力:53.07kN(クリーン)/79.1kN(アフターバーナー)
実用上昇限度:14,630m
最大速度:M1.5
航続距離:1,851km
最大制限荷重:+8G/-3G
乗員:2名
全長:12.98m
全高:4.78m
全幅:9.17m
重量:6,441kg
最大離陸重量:11,985kg
エンジン:GE F404-GE-102 ターボファンエンジンx1基
推力:53.07kN(クリーン)/79.1kN(アフターバーナー)
実用上昇限度:14,630m
最大速度:M1.5
航続距離:1,851km
最大制限荷重:+8G/-3G
F-CK-1(台湾)
F-CK-1 (IDF)
はアメリカ合衆国のロッキード・マーティンなどの民間企業の技術協力を受け、中華民国(台湾)が開発した国産戦闘機です。
愛称は経国(Jīng guó、英語:
Ching-kuo、チンクォ)で、経国号戦闘機と呼ばれます。
IDFは国産防衛戦闘機(Indigenous
Defensive Fighter)の略です。
当初、老朽化したF-5A/B
とF-104戦闘機を更新するため、台湾総統府はアメリカ合衆国に
F-16戦闘機の輸入を打診しましたが、アメリカ議会が大陸中国を刺激するとして一度これを拒否しました。
その代替案として、アメリカ側はF-16のダウングレード版のF-16/79(旧式ながら輸出実績のあるGE
J79にエンジンを換装)、あるいはF-5の後継機F-20を台湾に提案しました。
しかし、これらは空軍の要求を満たさないとして拒否され、結局、台湾は戦闘機の自主開発を決定しました。
その結果、F-16の開発元であるジェネラル・ダイナミクス航空機部門(現ロッキード・マーティン)をはじめ、ギャレット(現ハネウェル)やウェスティングハウスが開発協力することとなりました。
開発は1982年より開始され、F-16レベルの戦力を目指しました。
そのため、機体はどことなくF-16の雰囲気があるが、おおむね当時の各国で開発された小型戦闘機・軽戦闘機と共通したスタイルとなっています。
1989年5月28日に初飛行を達成し、1994年に軍が制式採用しました。
当初は256機が生産・配備される計画でしたが、その後の情勢が変わりアメリカ議会が純正F-16の輸出を許可したため、この機体の製造数は約半数の130機に減らされることになりました。
また、アメリカ政府との協定により、台湾がF-CK-1を他の国や地域に輸出することは不可能です。
しかし、自国での兵器開発・生産能力を保持し、外国製品を輸入する際も相手側に完全な主導権を取られない実力を得たという点で、本機の存在意義は大きかったといえます。
経国の全体の設計は、ジェネラル・ダイナミクスが協力したこともあってF-16に類似している点が多く見られます。
ブレンデッド・ウィング・ボディ、大型のストレーキ、クリップド・デルタ形主翼が採用されています。
フライトコントロールはF-16と同様にデジタル・フライ・バイ・ワイヤで、操縦桿の配置もパイロットの脇に置かれるサイドスティック方式が採用されています。
フラッペロン、全遊動式の水平尾翼、フルスパン前縁フラップなど、ほかにも特徴的な点でF-16の技術を取り入れています。
アメリカ議会の圧力により大推力エンジンを採用できなかったため、アメリカ企業との合弁会社によって生産されているビジネス機用のTFE731をベースに開発したハネウェル/インターナショナル・タービン・エンジン(ITEC)(英語版)
F124(英語版)のアフターバーナー装備型であるF125ターボファンエンジン
(A/B推力
41.14kN)を2基搭載し、デジタル制御により高い整備性を誇ります。
双発機であることもあって、エアインテークはF-16とは異なり、楕円形のものがストレーキ下に一対あります。
一般的には小型になるほどジェットエンジンの推力重量比は高い傾向にあります(二乗三乗の法則)が、民間機用エンジンを半ば強引に軍事転用したF125は、当時最新鋭の軍用エンジンであるGE製F404よりも推重比では逆に劣っており、パワープラントの基本性能ではF-20のほうが勝っています。
それでもコンパクトな設計により十分な動力性能が与えられているとされますが、自重・最大離陸重量・エンジン推力量ともに採用を拒否したF-20を多少は上回っているものの大して変わらず、カタログスペック上は有意な差があるわけではありません。
しかし自国での開発・生産を実現した意義は大きく、F-16A/Bやミラージュ2000の採用が決定して以降も、引き続き本機の開発と生産が続行されることとなりました。
コクピットには、HUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)と左右両側に多機能ディスプレイが装備されています。
FCSレーダーはF-20用のロッキード・マーチンAN/APG-67(もともとはF-20専用に開発されたもの)をもとに開発されたマルチモード・パルス・ドップラー形式の金龍53型(GD-53/チンロン53)が装備されています。
このレーダーはルックダウン・シュートダウン能力を備え、対空と対水上の2モードを有しており、複数目標の同時追跡能力と、その中の1目標に対する攻撃能力を持ちます。
捜索距離は約150kmといわれています。
兵装は短射程AAM天剣一型(TC-1)と、アジアでは初めてのアクティブ・レーダー誘導の中射程AAMだった天剣二型(TC-2)を装備、視程外距離(BVR)戦闘も可能になっています。
仕様
全長:14.5m
全幅:8.5m
全幅:8.5m
全高:4.6m
翼面積:24.3m2
空虚重量:6,486kg
最大離陸重量:12,247kg
エンジン:ハネウェル/インターナショナル・タービン・エンジン(ITEC)(英語版)
F125(英語版)
ターボファンエンジン (A/B出力
41.1kN)
×2
最高速度:M1.8
固定武装:M61 バルカン砲 ×1
最高速度:M1.8
固定武装:M61 バルカン砲 ×1
比較
F-2(日本)、T-50(韓国)、F-CK-1(台湾)のいずれもF-16を元にしているため平面形はほぼ同じといって良いくらいに似ていますが、側面から見るとF-16とF-2以外は空気取り入れ口の違いから随分異なって見えます。
F-2はF-16より若干大きく、T-50とF-CK-1は小さくなっています。
エンジンパワーはF-2はF-16とほぼ同等、T-50は小さいですが、米国のF-18の最新鋭エンジンを搭載しており、F-CK-1は政治的理由から最もロースペックです。
外観はF-2はF-16に酷似していますが、T-50、F-CK-1の順で独自性が強くなっています。
性能的には元になったF-16を上まわり圧倒的にF-2が高いのですが、海外ではF-16のバージョンの一つとしか見られないのが残念です。
韓国のT-50は積極的に輸出に力を入れており、実際に数か国で採用され、米国との共同開発機3機種の中では一番利を得ています。
更に韓国ではT-50と同じF404-GE-402 ターボファンエンジンの双発機として、日本に先んじて次世代ステルス機KFXの製作が始まっており、2021年4月に完成の予定となっています。
韓国のT-50は積極的に輸出に力を入れており、実際に数か国で採用され、米国との共同開発機3機種の中では一番利を得ています。
更に韓国ではT-50と同じF404-GE-402 ターボファンエンジンの双発機として、日本に先んじて次世代ステルス機KFXの製作が始まっており、2021年4月に完成の予定となっています。