ミルフィーユのトリビア

最近特に目に付くのが、ミルフィーユです。

時々食べることはあるのですが、カステラやスポンジケーキ、ショートケーキをさらに高級にしたイメージを持っています。


ミルフィーユとは

ミルフィーユ(仏: mille-feuille)は、フランス発祥の菓子の一種です。 

歴史のある菓子であり、形状や製法も様々なものがあります。

 生地を伸ばしては折ってを繰り返して作るフィユタージュと(仏: feuilletage)呼ばれる折りパイを3段重ねる形がミルフィーユの基本形です。

またはパート・フィユテ(仏: pâte feuilletée)と呼ばれるパイ生地にクリームをはさみ、表面に粉砂糖がまぶされたもの、あるいは糖衣がけされているものが基本とされています。

見た目がソフトで、ゴージャスなので、女性や子供に好まれます。



種類

ミルフィーユ・ロン (mille-feuille rond)

 丸い形状のミルフィーユで、側面にはカスタードクリームを塗って刻んだ折りパイ(フィユタージュ)をまぶし、上面に粉砂糖をまぶしたものです。こちらは、

こってりして、濃厚な印象があります。
 

ミルフィーユ・グラッセ (mille-feuille glacé) 

糖衣がけにしたミルフィーユで、チョコレートで矢羽模様などを描き、飾りとしているものです。 

矢羽模様が目を引きますが、フラットな見た目を好みとする人には評価が別れるかもしれません。

ミルフィーユ・ブラン (mille-feuille blanc) 

3枚の折りパイ(フィユタージュ)生地を用いる代わりに、中央の1枚をスポンジケーキ(ビスキュイあるいはジュノワーズ)に置き換えたものです。 

ミルフィーユ・オ・フレーズ (mille-feuille aux fraises)

「フレーズ」とはフランス語で「苺」のことです。そのままの意味で 苺を使ったミルフィーユです。ナポレオン・パイとも言われます。クリームだけでなく苺もはさみこんだもので、冷やして供されます。

ミルフィーユに用いられるクリームとしてはカスタードクリームがよく知られていますが、生クリームやバタークリームなども広く用いられています。


またクリーム以外にも、アプリコットジャムやリンゴのコンポートなどが使われる場合もあります。

由来

フランス語で mille は「千」、feuille は「葉」を意味しており、一般的にmille-feuilleは「千枚の葉」という意味だと理解されています。

 そのため本来の発音は「ミルフイユ」又は「ミルフェイユ」が近いです。 

ミルフィーユに用いるフィユタージュは、四角く広げた小麦粉生地に平らにしたバターを乗せ、何回も折りたたんで作るもので、折りたたむ工程を重ねるほど層が増し、パリパリとした食感になっていきます。

工程を5回繰り返し729層となったものや、6回繰り返し2187層になったものが主に用いられており、その層になった生地を何枚か重ね合わせて、さらに沢山の層をなしているという状態を「千」で表現しています。

また層になったフィユタージュの落ち葉をイメージさせるような独特の焼き上りを「葉」として表現し、mille-feuilleという合成語として文学的に言い表したものが名前となったとも考えられています。 



歴史

偉大なる古典と言われる菓子であり、1807年にはフランスの『食通年鑑』(Almanach des Gourmands)の食味鑑定委員会がミルフィーユを鑑定しています。

創造者は同時代の著名な菓子職人であり料理人であったアントナン・カレーム(Antonin Carême)だとも言われていまさうが、彼自身も「起源は古いもの」と表現していました。

一説によれば、アラブの古い菓子である「パータ・フィロ」が、7~8世紀のヨーロッパ侵攻の際フランスに伝わり、その後今のかたちまで進化した説があります。

また17世紀に画家として名を成したクロード・ロランが見習いパティシエであった頃考案したとの説もあります。

さらに同じく17世紀にコンデ公のお抱え菓子職人フィエ(Feuillet)が考案したとの説もあります。

また古代ローマ時代には薄いケーキやシートを蜂蜜とクリームまたはソフトチーズと一緒に重ね合わせたお菓子が存在し、現在のミルフィーユの遠い先駆けとも言えます。 

初期のミルフィーユは上面にするフィユタージュ生地に卵を塗り、粉砂糖をふりかけオーブンで焼き、表面をカラメル化するといった仕上げ方だったとも言われています。

現代の製法に見られるような、上面への糖衣がけは1822年頃になって用いられ始めたもので、今日に至るまで職人が様々に工夫を凝らし続けている菓子でもあります。


ナポレオン(パイ)

日本においては苺のミルフィーユを指して「ナポレオン」と呼びますが、外国では「ナポレオン」を通常のミルフィーユの名称として使っています。


例:フランス(Napoleon)、ロシア(Наполеон)、オーストリア(napoleon slice)、ポーランド(napoleonka)、スウェーデン(Napoleonbakelse)、香港(広東語 拿破侖)、イラン(ペルシア語شیرینی ناپلئونی Nâpel'oni)等

ナポレオンの語源は、アントナン・カレームが元はイタリアの都市であるナポリのパティシエにこのお菓子の開発を任せ1800年代初頭に普及させたとされ、ナポリタンと称していたのが、フランスの皇帝として活躍したナポレオン・ボナパルトを連想させ、転じて広まったと考えられています。 

日本における苺のミルフィーユ「ナポレオン」の名前の由来が、苺がナポレオンの帽子の形に似ている等という説は、あとから当て嵌められたもので、そもそもミルフィーユ=ナポレオンです。

チェリーを用いたミルフィーユが「ナポレオンパイ」として最初は作られましたが、サクランボは採れる時期が限られるため苺で代用し年間を通して提供できるようになりました。

今日ではナポレオンパイは苺、サクランボはチェリーパイと称するのが一般的です。



日本への伝来

幕末から明治にかけて、フランス人のサミュエル・ペールが横浜で洋菓子店を営んでおり、ミルフィーユが日本に伝わったのはその当時ではないかと考えられています。

1870年(明治3年)、御所の饗宴用フランス菓子御用として出仕し、サミュエル・ペールの元で在官のままフランス菓子製造技術を学んだ村上光保が、1874年(明治7年)にフランス菓子の製造と仕出しを行う村上開新堂を開業しており、同店では明治の後期にフランスの製法を研究し「ミルフェ」という商品名で販売も行っていました。


千葉県とミルフィーユ

ミルフイユが「千枚の葉」を意味する事から、千葉県ではオランダ家と地元ラジオ局 bayfmと共同開発した「千葉ミルフィーユ」と言うお菓子が作られたり、施設に「ミルフィーユ」と名付けるなど、県名との類似を利用し地域振興につなげようとする試みもなされています。



ミルクレープとの違い

ミルフィーユとミルクレープは混同されがちです。

ミルクレープとは「千枚のクレープ」を意味します。

何枚ものクレープをクリームと交互に挟んで作られるお菓子のことです。

ミルフィーユはパイ生地を重ねているので、サクサクの歯ざわりですが、ミルクレープはしっとりとした食感です。

フランス発祥のミルフィーユと異なり、ミルクレープは日本で生まれたケーキと言われています。


食べ方

ミルフィーユはパイが何層にも重なっているため、普通のケーキと同じように正立した状態で上からナイフを入れて食べようとすると、カスタードが横にはみ出して簡単に崩れ、食べにくくなります。



まずセロハンが付いている時は、セロハンの端をフォークの先ではさみ、巻取りながら剥がします。

この時ケーキに触れている面を内側にして、くるくる巻いておきます。

巻き終わったセロハンは皿の端の上においておきます。
上手に食べるには、まずイチゴなどのフルーツのトッピングを外して皿の端によけておきます。

その後、ミルフィーユ上面を手前側に向けてゆっくり横に倒し、フォークで上から押さえてナイフを使います。

横になっているパイ生地とちがって、縦になっている物は切るときに崩れ難くなります。

左端からナイフで一口大に切っていきます。

ナイフは上から押すようにするのでなく、横に挽きながらパイ生地を切れば、一口ごとに食べることができます。

パイ生地を手前側2段か3段で切ると生地のくずも出にくくなります。

パイ生地のくずはクリームに絡めて一緒に食べます。

最初に取り除いておいたフルーツなどのトッピングも一口大にカットして、パイ生地と絡めながら一緒に食べます。


ナイフがない時はフォークで切ることになりますが、やはり縦になったパイ生地ならフォークでも切り易くなります。

ナイフを入れるのと同じ要領で手前の2,3枚のパイ生地だけを切って一口大にして食べます。

左端手前を食べたら、その奥を。また左端手前からと繰り返していきます。


倒せないミルフィーユの場合は、思い切って倒さずにナイフを入れていきます。

左手のフォークでおさえたら、ナイフは45度くらいの立て気味にしてザクっと入れます。

いっきに下の層までは切らず、上だけを切り取るようにします。

切り分けられたパイ生地にフルーツとクリームを絡めて食べます。

上段を食べ終わったら下段と順次食べていきます。

なお、ミルフィーユのパイ生地を一枚ずつ剥がして食べるのはマナー違反です。

作った人は、間のフルーツやクリームとのコンビネーションを楽しんでほしくて作っているわけですから、パイ生地とフルーツやクリームが一緒に口に入った時の味わいを楽しみながら食べることをお勧めします。