世界一大きな旅客機

世界一大きな旅客機はひと昔前は、ボーイング747でしたが、現在はエアバス  A380です。

ボーイング747は空港へ行くと、よく見かけたものですが、エアバスA380はあまり見かけたことがありません。

エアバスA380とは

エアバスA380(Airbus A380)は、欧州エアバス社のターボファン4発の超大型旅客機です。

旅客機の中では世界最大の機種です。


概要 

世界初の総2階建てジェット旅客機です。

完成披露の時点ではボーイング747を抜いて、史上最大・世界最大(乗客数の面として)の旅客機です。

4億4560万ドル(約500億円)のA380は、これまでで最も高価かつ豪華な旅客機です。

最大約800人も搭乗可能な総2階建ての巨大な機体が特徴です。

なお、全ての航空機において最も大きいのは、ウクライナ製の巨大な貨物輸送機、An-225 ムリーヤです。


初飛行は2005年4月27日です。

初期の構想から初飛行まで16年の歳月を要しました。

2007年、エアバスA380は華々しく運航を開始しました。


「スーパージャンボ」と呼ばれるこの超大型旅客機は、ボーイング747が作り出した栄光をすべて奪い、現代エンジニアリングの限界を極めました。


 初飛行から10年後の2015年末時点で、エアバス社は中東や東南アジア地域を中心に300機を超える受注を獲得しており、この時点でA380プロジェクト全体としての損益分岐点に到達し、計画全体での黒字化に成功したと発表されました。

4発エンジンのワイドボディ旅客機としては同社の民間航空機部門で唯一生産されている機体です。



A380は大きすぎて採算に合う路線が限られていることに加え、双発機の大型化・性能向上などに伴う大型4発機の受注低迷も相まって、2014年・2015年と2年連続して航空会社からの新規受注を1件も獲得できず(受注を獲得できたのはリース会社からのみ)、今後もこの傾向が続くようであれば2018年にも生産を打ち切る可能性があると示唆していました。


この決定は、A380を世界で最も多く運航しているエミレーツ航空が、A380の発注数を162機から123機に減らしたことが引き金となりました。

エアバスA380の317機の受注のうち、142機をエミレーツ航空が占めています。

エミレーツ航空は長距離路線に特化しており、路線は全て、アラブ首長国連邦の豪華なハブ空港、ドバイ国際空港から発着します。

従ってエミレーツ航空は多くの人を乗せ、長距離を飛べる旅客機A380が最適としました。


エアバスが2007年に初就航して10年後には、より小さく、長距離飛行ができる旅客機で直行便を運行するのが航空業界のトレンドとなりました。

2018年以降、導入を計画していた各航空会社の計画の見直しが相次ぎ、2019年2月14日、エアバスのトム・エンダース最高経営責任者(CEO)は「頼みの綱だったエミレーツ航空が、このほどA380の発注を減らした。この決定で受注残は実質無くなり、生産を続ける前提を失った」としてA380の生産を中止し、2021年以降は納入しないことを発表しました。

世界の航空会社は、燃料価格の高騰のために、より小型の機体にシフトしています。

航空会社は、ハブ・アンド・スポーク方式からポイント・トゥ・ポイント方式へと移行しました。


これにより、より小さく燃料効率に優れた双発のボーイング777や、エアバスA330が長距離路線で活躍することになりました。

ボーイング787ドリームライナーのような複合素材を採用した、より小型の次世代ワイドボディ機により、航空会社は、A380を1機飛ばすよりもドリームライナーを2機飛ばす方が低コストになるといいます。


名前の由来


本来の命名規則によればA340、A350と続くはずでしたが、この機種はいきなりA380になっています。


理由は以下の通りです。 

航続距離が8,000マイル(約12,800km)に向上し、それを強調するため 。

比較的ボーイング製機体の市場占有率が高い中国市場を開拓すべく、中国で「末広がり」を意味し縁起のいい数字とされる「八」を選んだため。

他にも最大有償座席数が800席クラスなどという説もあります。


機体


A380型機は、低翼で後退角を持った主翼、通常形式の尾翼、主翼パイロンに装着したエンジンなどの一般的なジェット旅客機と同じ特徴を持っています。


ボーイング747の機体上部は2階建て部分のみ膨らんでいますが、A380は総2階建てであるため段差はありません。

2階建ての客室の1階(主デッキ)は最大幅6.58mで、ボーイング747-400の主デッキ客室最大幅より45.7cm広いです。


また上部デッキの客室最大幅は5.92mでエアバス社の従来のワイドボディ機の客室最大幅5.62mよりわずかに広いです。


ボーイング747と異なり2階席も通路が2つあります。
 

キャビンの総面積はB747-400の約1.5倍、座席数はファースト・ビジネス・エコノミーの3クラスからなる標準座席仕様で同じく約1.3倍です。

エアバスでは「従来の大型機と比べて同じ座席仕様でありながら、1人当たりの占有面積が広くなる」を同機のセールスポイントとしています。





座席の機内が総2階建て構造であることから、客室の最前部(メインデッキのL1/R1ドア付近)と最後部にそれぞれ直線式と螺旋式の階段が設けられ、最前部の階段では大人2人が楽にすれ違える幅がとられています。

民間旅客部門では今までにない座席数です。

2クラス仕様では2015年11月4日にエミレーツ航空が中距離2クラス仕様・615席(ビジネス58席・エコノミー席557席)を受領した事で、2クラス仕様における世界最多有償座席数であったANAのボーイング747-400D(2014年3月31日をもって全機退役)の569席を上回り、記録を更新しました。


操縦室


操縦室と乗務員休憩区画などは2階建て客室部分の前にあり、メインデッキと呼ばれる1階とアッパーデッキと呼ばれる2階の間の1階より少し上がった中2階の高さに位置しています。


これは視界の確保と他のエアバス機との互換性のことも考えての設計です。 

操縦室は予備席も含めて5つの座席が備わります。

2人乗務による操縦を行えるように、最前部左の機長席とその右の副操縦席の2座席を取り巻き操縦装置類が配置されています。

操縦室後半には間隔を開けて2つまたは3つの座席が備わっています。 


本機はLCD(液晶ディスプレイ)を用いたグラスコックピットを備えています。

ただし、エアバス社の従来のグラスコックピットと違う点は、一辺8インチの正方形のLCD6面から、縦8インチ横6インチの縦長のLCDが8面へと増えたことです。

操舵形態は同社ではエアバスA320以来採用されているサイドスティック方式である。


エンジン


2社が製造するエンジンから1種類を選ぶことができます。

これらはいずれも主翼下面にパイロンを介して左右に2つずつ合計4基が取りつけられる高バイパス比ターボファンエンジンです。


1つはロールス・ロイス・ホールディングス製トレント 900、もう1つはエンジン・アライアンス(GE・P&Wの合弁企業)製GP7270です。

トレント 900はA380が初飛行した時のエンジンであり、最初は数多く販売されましたが、その後GP7200の販売も伸びてきており、トレント 900の発注と肩を並べるまでになっています。

エンジンのメーカー別にA380の型式がロールス・ロイス トレント900シリーズはA380-84X、エンジン・アライアンス GP7200シリーズはA380-86Xと表され区別できます。 

着陸滑走時には、ボーイング747などの4発機はエンジン4基全ての逆噴射装置を使用しますが、A380では内側の第2と第3エンジンの2基分のみを使用します。

操縦席のリバース操作レバーも、第2と第3エンジンの部分のみです。

なお、計画当初A380はブレーキ性能が十分とのことで逆噴射装置を採用する予定はありませんでした。

重量軽減と信頼性向上のため、逆噴射装置では民間機では初となる電気で作動するETRAS (Electrical Thrust Reverser Actuation System) を採用しています。 

低騒音で低二酸化炭素排出量を実現し、世界一運航規制の厳しいロンドン・ヒースロー空港でも24時間運用が可能です。

このことから広告では「環境にやさしい飛行機」であることを売りにしています。

諸元 

乗員: 2名(操縦士)
定員: 3クラス 525名、モノクラス 853名
ペイロード: 66,400 kg (146,387 lb)
全長: 73 m (239 ft 6 in)
全高: 24.1 m (79 ft 1 in)
翼幅: 79.8 m(261 ft 10 in)
翼面積: 845 m2 (9,100 ft2)
運用時重量: 276,800 kg (610,240 lb)
最大離陸重量: 560,000 kg (1,235,000 lb)
動力: ロールス・ロイス トレント 970 または エンジン・アライアンス GP 7270 ターボファンエンジン、311 kN (69,915 lbf) × 4
貨物(-800F型): 38 LD3 (Unit Load Device) コンテナ または 13 パレット

性能 


最大速度: マッハ 0.89 (約1,090 km/h, 589 kt)
巡航速度: マッハ 0.85 (約1,041 km/h, 562 kt)
航続距離: 15,200 km (8,200 海里)
巡航高度: 13,100 m (43,000 ft)
離陸滑走距離
トレント 970: 2,990 m
GP 7270: 3,030 m
着陸滑走距離: 2,100 m