技術的特異点

このままAIが技術革新を継続していったら、いつか人間を超えるかもしれないというのはよくSFのテーマになる話です。

しかし自動運転をはじめ、感覚と移動能力を持った機械の開発が急速に進められている現在、一体機械はどこまで人間に近ずくのか、現在進行形の未来の話です。


技術的特異点

技術的特異点(ぎじゅつてきとくいてん、英語: Technological Singularity)、またはシンギュラリティ(Singularity)とは、未来学上の概念であり、人工知能(AI)自身の「自己フィードバックで改良、高度化した技術や知能」が、「人類に代わって文明の進歩の主役」になる時点の事です。

第4次産業革命としても注目を集めています。


概要

技術的特異点は、汎用人工知能(artificial general intelligence AGI)、あるいは「強い人工知能」や人間の知能増幅が可能となったときに起こるとされている出来事であり、ひとたび自律的に作動する優れた機械的知性が創造されると、再帰的に機械的知性のバージョンアップが繰り返され、人間の想像力がおよばないほどに優秀な知性(スーパーインテリジェンス)が誕生するという仮説です。

具体的にその時点がいつごろ到来するかという予測は、21世紀中ごろから22世紀以降まで論者によってさまざまであるが、この概念を多数の実例を挙げながら収穫加速の法則と結びつける形で具体化して提示したレイ・カーツワイルの影響により、2045年ごろに到来するとの説が有力視されることが多いです。

レイ・カーツワイルは「自らを改良し続ける人工知能が生まれること。それが(端的に言って)シンギュラリティーだ」と述べています。

2012年以降、ディープラーニングの爆発的な普及を契機に現実味を持って議論されるようになり、2045年問題とも呼ばれています。

2016年以降、ビジネスにおいてもディープラーニングの影響が本格的に現れ始めており、技術的には全世界で一番大きな注目を集めている話題となりました。

技術的特異点の社会的影響、人類にとって理想的な形で技術的特異点を迎える方法などが研究されています。

また、技術的特異点に近付くにつれて人工知能を開発・運用する集団とそれ以外の集団で極端な経済格差が顕在化すると予測されており、その経済格差を是正して緩和するための施策としてベーシック・インカム(または「誰でも受け取れる」という意味を込めて「ユニバーサル・ベーシック・インカム」と呼ばれることも)の導入が議論されるようになりました。

スーパーコンピュータの加速度的な性能向上の結果として、エクサスケール・コンピューティングが実現されると、大規模なシミュレーションがリアルタイムに実行可能になることで次々と難解な社会問題が解決され始め、プレ・シンギュラリティ(前特異点もしくは社会的特異点)と呼ばれる社会的な変化が顕在化することが予測されています。

プレ・シンギュラリティが到来すると、現実を超える体験を提供するVRが実現され、核融合炉の実現により無尽蔵のエネルギーが入手可能になり、衣食住が無償で手に入り、不老不死も実現可能になるとされます。

経済的には特異点後の社会はそれ以前の社会よりも豊かとなります。

特異点後の未来では、一人当たりの労働量は減少しますが、一人当たりの富は増加します。

マクロ経済学の井上は、技術的失業、中産階級の消滅、雇用を機械に奪われる問題の解決策として、ベーシック・インカムを提唱しています。 


レイ・カーツワイル

この言葉を広く知らしめたレイ・カーツワイルは、技術的特異点を人工知能の能力が人間の能力を超える時点としては定義しておらず、$1,000で手に入るコンピュータの性能が全人類の脳の計算性能を上回る時点として定義しているのみです。

$1,000は日本円で12万円程度と、一般的なノートパソコンの価格帯に入っています。

過去の傾向からその出来事が起きる年を2045年と予測し、その頃にはコンピュータが支える強力な知能により人類の在り方が根底から覆っているであろうとまで予測しているものの、根拠について様々な問題点が指摘されています。


収穫加速の法則

人類史上のパラダイムシフトとなった重要な出来事を、
15の独立したリストで示した両対数グラフ。


アメリカの発明家レイ・カーツワイルが提唱した、一つの重要な発明は他の発明と結び付き、次の重要な発明の登場までの期間を短縮し、イノベーションの速度を加速することにより、科学技術は直線グラフ的ではなく指数関数的に進歩するという経験則です。

指数関数的な進化は、初めは緩やかで変化が感じられないが、ある点(つまり特異点)を迎えると、一気に人知の及ばないところに行ってしまう」と述べています。