空気だけで推進力を得られる衛星用イオンエンジン
電機推移のロケットというと、随分未来的な響きがありますが、実は記載については随分古くからあり、実績も200年台に入ってかなり上がっているようです。
電気推進
電気推進(でんきすいしん、英語:electrically powered spacecraft propulsion)は宇宙空間で用いられるロケットエンジンシステムの一種です。
現在一般的な化学ロケットと違い、電気エネルギーを用いて推力を得ます。
電気推進の推力は化学推進に比べて著しく小さいですが、比推力が非常に高いのが特徴です。
歴史は古く、1906年にロバート・ゴダードが実現性を検討したノートが残っています。
歴史は古く、1906年にロバート・ゴダードが実現性を検討したノートが残っています。
イオンエンジン (Ion engine) は、電気推進とよばれる方式を採用したロケットエンジンの一種で、マイクロ波を使って生成したプラズマ状イオンを静電場で加速・噴射することで推力を得ます。
最大推力は小さいですが、比較的少ない燃料で長時間動作させられる特徴をもち、打ち上げられた後の人工衛星や宇宙探査機の軌道制御に用いられることが多いです。
近年では、従来のヒドラジン系推進器に替わる標準装備となりつつあります。
比推力が化学ロケットよりも格段に高いため、静止衛星の長寿命化に貢献しています。
推進剤としてはキセノンを用いる場合が多いです。
他にリチウムやビスマスを用いる形式もあります。
また、高度数百km以下の低軌道を周回する衛星においては、希薄に存在する大気を吸気して、これを推進剤として利用する事が構想されています。
日本の小惑星探査機はやぶさ(ミューゼスC)にも搭載され、初めて本格的惑星探査ミッションに使われています。
推進剤としてはキセノンを用いる場合が多いです。
他にリチウムやビスマスを用いる形式もあります。
また、高度数百km以下の低軌道を周回する衛星においては、希薄に存在する大気を吸気して、これを推進剤として利用する事が構想されています。
日本の小惑星探査機はやぶさ(ミューゼスC)にも搭載され、初めて本格的惑星探査ミッションに使われています。
希薄空気を推進剤とするイオンエンジン
日本では昨年末に超低高度衛星技術試験機つばめ(SLATS)が打ち上げられましたが、キセノンなどではなく(衛星としては)低高度の宇宙空間に存在する希薄空気を推進剤として用いるイオンエンジンが欧州宇宙機構(ESA)で開発されたそうです。
欧州宇宙機構(ESA)が、世界で初めて「空気を取り入れて加速させることで推進力を得る」という仕組みを持つ空気吸入型の電気推進器の開発に成功したことを発表しました。
この推進器により、比較的低めの地球周回軌道を飛ぶ人工衛星が空気という無限の「推進剤」を使って飛び続けることが可能になります。
ESAが開発に成功した新型の推進器は、地球の大気圏と宇宙空間のはざまにごく微量に存在する空気の分子を推進器の先端から取り入れ、電荷を与えることで加速力を生み、その反動を推進力として利用するという仕組みを持ちます。
これにより、わずかに空気分子が存在する高度200kmあたりの低軌道を飛ぶ人工衛星に長期間にわたって推力を与え続けることが可能になります。
これまでにも低軌道を周回する人工衛星に推力を与える推進器は存在していましたが、そのいずれもがあらかじめ推進剤を搭載した状態で打ち上げ、それを消費することで力を得るというものでした。
ESAが2009年に打ち上げて運用していた地球観測衛星「GOCE(ゴーチェ)」もそんな人工衛星の一つで、キセノンを推進剤とするイオンエンジンを搭載することで、高度250kmを飛ぶ時に空気抵抗によって失われる速度を補完して観測を続けました。
しかし2013年には搭載していた質量40kgのキセノンを使い果たしたことで高度が低下し、同年11月11日に大気圏に突入しました。
ESAが新たに開発した推進器は、このような問題を解決することができる画期的な仕組みを実現したという意味で、大きな一歩となり得るものです。
開発に携わるESAのLouis Walpot氏は「このプロジェクトは、高度200kmあたりの大気中に漂う空気分子を推進剤として利用することで、この高度で周回するために必要な速度である『毎秒7.8km』という速さを実現するための新しい機構の設計とともに始まりました」と語ります。
テストは、イタリアの宇宙関連企業Sitaelが持つ真空設備を使うことで実施されました。
以下の写真に写っている機器を高度200kmの空間を再現した空間に置き、その前から分子流生成機を用いることで、高速で衝突する空気分子の動きを作り出します。
高速で飛来する空気分子はまず、ポーランドのQuinteScienceが開発した空気取り入れ口「コレクター」から推進器内部に取り入れられます。
推進器で力を生み出す部分のアップです。
このエンジンは電極とコイルのみで構成されるシンプルな構造が特徴です。
このエンジンは電極とコイルのみで構成されるシンプルな構造が特徴です。
何度もコンピューターシミュレーションによるテストを繰り返した開発チームでしたが、実際にコレクターと加速器を組み合わせた実験を重ねることで、空気分子を所定の密度にまで圧縮し、必要な力を生み出せる状態を作り出すことができたそうです。
実験の最初にはまず、従来どおりのキセノンを使った推進力を作り出したとのことです。
その段階では、推進器から出るガスは青く光っています。
徐々にキセノンを減らし、窒素と酸素の混合気の段階を経て、大気のみの状態へと遷移すると、推進器からのガスは紫色に変化します。
この色こそが、大気のみを推進剤にして力を生み出すことに成功している証だとのことです。
この成果についてWalpot氏は「これまでは理論でしかなかった大気による電気推進器が、具体的で、今後の開発へとつながる実動の状態になったことを意味します」と語っており、従来は不可能だった新しいタイプのミッションを実現するための装置として期待を寄せています。