ドライアイの予防

最近は歳のせいか、パソコンを長い時間見ていると、目がしょぼしょぼとして、少し乾いているのではないかと思うことが多くなりました。

目薬を差すほどではないだろうと思い、一種の疲れと思い、顔を洗うなどしてすっきりするようにしています。


ドライアイ

ドライアイ(Dry eye, Keratoconjunctivitis sicca)は、眼疾患の一つです。

「ドライアイは,さまざまな要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある」と定義されています。

涙の量が少なくなったり、成分が変化する事により、眼球の表面が乾燥し、傷や障害が生じる病気です。

目の乾きや疲労、異物感、かゆみ、充血、目やになどを引き起こします。

原因は目の酷使や乾燥などの生活習慣によるものと、疾患によるものがあります。


症状

以下の症状が発生します。

・目がゴロゴロする
・光がまぶしい
・目の痛み
・視界がかすむ
・10秒間以上目をあけていられない
・目の乾き
・目が重たくなる
・視力の低下

・結膜炎など、目の感染症にかかりやすくなる

ドライアイでは、視力が良くても「ものがかすんで見える」など、見え方に影響がでる場合があります。

それはさまざまな要因によって、涙が不安定になるために起きる現象で、視力検査ののマークがかすんで見えるようなケースもあります。

ドライアイは「乾く」や「疲れる」だけでなく、見え方にも影響を及ぼすケースがあります。

ドライアイの場合、目を守る働きをする涙の量が減ったり、涙の質のバランスが崩れることで、ごろごろしたり異物感があったりします。


原因

角膜上の涙液は、油層、水層、粘液(ムチン)層で構成され、いずれかの要素が欠乏しても安定性が崩れドライアイとなります。

年を重ねると、涙の分泌量や質が低下します。

東京女子医大の高村悦子准教授(眼科)は「高齢者の7割がかかっているといわれ、年齢と関係が深い病気の一つです」と話します。

ドライアイが高齢者に多いのは、涙や、涙の蒸発を防ぐ油分の分泌量が減るからです。

また、老眼や白内障で視力が落ちると、目を凝らして見るようになることで、まばたきが減ってしまい、涙が蒸発しやすくなります。

女性のほうが男性よりドライアイになりやすいことが知られています。

主にテレビ、コンピュータの画面を見る行為等による目の酷使、冷暖房による空気の乾燥化、コンタクトレンズの装着により発生が増加するといわれます。

パソコン、テレビ、携帯電話などのモニター画面を長く見続けていると無意識のうちにまばたきの回数が減ってしまいます。

まばたきをしないと涙の分泌が減ったり、涙が蒸発して目が乾燥します。

冷暖房の効いた部屋は、室内が乾燥しているので、目が乾燥する原因になります。

また、空気が乾燥しやすい冬や風が強い日も、目が乾燥しやすい環境です。

また空気の汚染は目を刺激して、目の乾燥を悪化させることがあります。

また、コンタクト装着によるドライアイのうち、ソフトコンタクトレンズでは表面から涙液の蒸発量が増すため症状を引き起こします。

コンタクトレンズを長時間つけていると涙が角膜へ十分に行きわたらないので、目が乾きやすくなります。 

現代人は目を酷使する事が多く、現在、日本では約800~2,200万人ものドライアイの患者がいるといわれます。

一般的なオフィスでは約30%がドライアイと言われます。

コンタクトレンズを装着していると、その率は約40%と更に上がります。


目の乾燥(ドライアイ)をともなう疾患

薬や他の病気によって症状がでることもあります。

代表的な病因は以下のとおりです。

・油層の異常:マイボーム腺機能不全 

マイボーム腺はまぶたのふちに数多くあり、目を乾燥から防ぐための脂肪を分泌しています。

ここがマスカラのかすや分泌物などで塞がれると、脂肪の分泌が減り涙が蒸発しやすくなり、目が乾燥します。

目がショボショボする、ゴロゴロする、といった異物感や充血、目の奥がしみるなどの症状を引き起こします。

・水層の異常:シェーグレン症候群 

体の免疫システムに異常が生じて、自分の体を攻撃してしまう疾患です。

涙腺や唾液腺など全身の分泌腺が破壊され、重度のドライアイや口の中の乾燥、皮膚の乾燥を引き起こします。

50歳代をピークに40~60代に多くみられ、圧倒的に女性に多い疾患です。

・粘液(ムチン)層の異常:スティーブンス・ジョンソン症候群、眼類天疱瘡 

ウイルス感染や薬剤アレルギーなどが原因で全身の皮膚・粘膜に異常が起きます。目の表面に強い炎症が起きることから重症のドライアイを発症します。

・結膜弛緩症

加齢に伴って、結膜部分(白目の部分)が弛み、眼表面で涙が留めにくくなります。

また、弛んだ結膜が瞼と触れやすくなり、摩擦によって眼表面に傷がつきやすくなります。

・レーシック術後3ヶ月位は、起きるとされます。


目の乾燥(ドライアイ)が引き起こす疾患

以下の疾患は、医師の診断が必要です。

下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けます。


角膜炎 

目の乾燥や異物の混入などで、目を保護する役割の涙が減少します。

そのことが原因となって、角膜の表面に傷ができたり、細菌やウイルスに感染して炎症を起こすのが角膜炎です。

目の異物感や痛み、充血、涙があふれるなどの症状があらわれます。


角膜潰瘍 

角膜炎が悪化して、角膜の上皮の一部が欠損した状態です。

強い細菌感染をともないます。

充血や激痛などの症状があらわれ、ときには大量の目やにをともなうこともあります。

角膜潰瘍を放置していると、角膜に穴が空く角膜穿孔(せんこう)に進行することもあります。


診断

・涙液の産生量低下


・涙液の蒸発量の上昇

・角結膜の異常(角膜上のキズなど)

涙の量を調べる検査としては「シルマー試験」が一般的です。

専門のろ紙を瞼の縁にはさんで、5分間でどのくらいの長さが濡れるかを調べる検査です。

目の表面の状態を調べるには、スリットランプと呼ばれる顕微鏡を使って、フルオレセインという黄色の染色液を少量点眼することがよく行われます。

傷があるとその部分が染まって見えます。

また、同じ染色液で涙の安定性を調べる検査〔涙液層破壊時間(BUT)検査〕も行われます。

瞬きをしないで目を開けたままにして、涙の層がどのくらいの時間で乱れるかを調べる検査です。

いずれの検査も外来で行われ比較的短時間で終わり、強い痛みなどは感じません。

また最近ではドライアイの自動診断装置(TSAS)を使い、10秒程で診断が出来るようになりました。

 今までは5分以上かかる上に、ろ紙を目に挟むなど患者の痛みを伴ったり、目に触れない場合でも医師の主観が入るなどの課題がありました。

 それを改良するため、角膜上に広がる涙の層が薄くなって拡散する様子を測定することで、ドライアイかどうかを判定できる手法も開発されています。


治療法

・涙に近い成分の人工涙液を点眼する。

・ヒアルロン酸が主成分の目薬を点眼する。

・コンタクトレンズを装着している場合は、コンタクトレンズ用の目薬を使用する。

・涙点プラグを装着する

また最近では、ジクアホソルナトリウム(ジクアス)や本来胃腸薬であるレバミピド(ムコスタ)がドライアイの治療にも有効であることが確認されており、いずれも目薬として製品化されています。


予防法

長時間にわたってモニターを凝視する仕事では、間に休みをはさむと良いです。

1時間ごとに約15分は目を休めて、目の疲れをとる体操やマッサージをするのも良いです。

また、蒸しタオルをまぶたの上にのせて、目を休めるとスッキリとします。

遠視の場合は、たまに遠くを眺めるのも効果的です。

加湿器や濡れタオルなどで湿度を上げます。

特に冬場の暖房使用時には乾燥を避けます。

仕事や勉強に集中すると、一点を凝視することになり、目を知らず知らずのうちに酷使しています。

遠くを見たり、目を動かして目の緊張を和らげるのが効果的です。

意識的にまばたきの回数を多くして、涙の分泌を増やします。

「20-20-20-20」という眼精疲労回復エクササイズは、20分おきに20フィート(約6メートル)離れたところを20秒間見つめながら、20回連続で瞬きをすると疲れ目に良いそうです。

目の乾燥を防ぐために加湿器や濡れタオルを干して、室内の湿度を適度に調節します。

また、エアコンの風が直接目にあたらないように、送風口の向きを変えるなどの工夫もします。

たばこの煙に曝されると、涙の状態が悪くなることが知られています。

できるだけタバコの煙を避けるようにします。 

パソコンのモニタはOAフィルターを使用し、室内照明や日光の映り込みを避けます。

室内が暗いと目が乾燥しやすくなります。

とくに読書をしたり細かい作業をするときは部屋全体を明るめにするか、部分照明を活用します。

またパソコンを使うときは読書のときよりも少し暗い室内照明のほうが目が疲れにくくなります。

さらに、外の光がパソコンのモニターに映りこまないようにカーテンなどで遮光します。

パソコンやテレビの画面と、目の距離は40cm以上離すようにします。

またこれらの画面が自分の目より上の位置にあると上目使いの状態になり、より一層目が乾燥しやすくなります。

画面が目線より下の位置になるように、椅子の高さや配置などを調節します。

コンタクトレンズの使用時間を短くします。

パソコン使用時にはなるべくコンタクトレンズを外します。


対処法

目を温めると血行が良くなり、目の筋肉の緊張が緩和するので、疲れ目に効果を発揮します。

蒸しタオルなどを使うと良いです。

ただし、白目が充血しているときは炎症をとるために冷やすほうが効果があります。

また暑い季節は目を冷やすとひんやりと心地良く、目がスッキリとします。

乾燥が気になっても、市販の目薬を頻繁に差すのは控えた方がよいそうです。

防腐剤などの刺激で症状が悪化することもあります。

市販品を用いるなら、防腐剤の入っていない『人工涙液』が望ましいそうです。

目が乾燥したときは、涙と同じ成分の塩化ナトリウムや塩化カリウム、塩化カルシウムが含まれている点眼薬で目を潤してあげると効果的です。

強いかゆみや痛みをともなうときや市販の点眼薬をさしても治まらないときは、免疫の異常による角膜障害や他の重い疾患が隠れている場合もありますので、病院で診察が必要です。


点眼薬のさし方

ドライアイのケアには、点眼薬をさすのが一般的ですが、その効果をさらに高める方法があります。

点眼時は頭を後方に傾け、天井を見つめるようにします。

そして、一方の手で下まぶたを軽くひっぱり、点眼容器を目の真上に持ってきて点眼します。

点眼後はしばらく目頭を押さえて目を閉じると、目がよく濡れて、眼球に成分がしっかり行きわたります。

最後に、目のふちや皮膚についた余分な点眼液をティッシュペーパーなどで拭きとります。