スパゲティのトリビア


スパゲティは色々とバラエティがあって、派手な色合いでこってりした味わいや、見た目も軽くあっさりとしたものまで様々です。

食にこだわるイタリア人が毎日食べる料理ですから、飽きることのない、数えきれないほど多くの種類があるのかもしれません。


スパゲティ

スパゲッティ(スパゲティー、スパゲッティー、スパゲティなどとも、イタリア語: Spaghetti)は、イタリア料理で使われる麺類であるパスタのひとつで、紐のように細長いものをいいます。 

イタリア本国においては数あるパスタの中でヌードルの一種を指す代表的なパスタであり、よく食べられているパスタの一つでもあります。


種類

スパゲッティ (spaghetti) という語は、「ひも」を意味するイタリア語 spago に縮小辞のついた形 (spaghetto) の複数形です。

原義どおり、デュラム小麦粉のセモリナを使ったひも状のパスタで、断面が円形で、太さは2mm弱のものを指します。

少し太い物(2mm強)をスパゲットーニ (spaghettoni) またはヴェルミチェッリ (vermicelli)

少し細い物(1.6mm前後)をスパゲッティーニ (spaghettini)

さらに細い物(1.3mm - 1.5mm程度)をフェデリーニ (fedelini)


1.2mm未満の物をカペッリーニ (capellini)

と言い分けます。


ヴェルミチェッリは、バーミセリーと英語読みで呼ぶこともあります。

小麦粉と塩の他に、イカスミや唐辛子、ホウレンソウを練り込んだスパゲッティもあり、乾麺として市販されています。 

乾燥されて市販されているスパゲッティの多くは茹でるのに1.4mm前後の細いものでも5分、1.6mm前後の中くらいの太さで8分、1.8mm前後の太いものだと10分以上かかるので乾燥させずにレトルトパックにした商品もあります。

またレトルトパックを使ってカップで調理できるようにしたインスタントスパゲッティも近年売り上げを伸ばしています。

また一部のメーカーでは乾燥状態での麺の断面を改良して最短で茹であがりを2分としているものもあります。

茹でる時には硬水の使用が望ましく、軟水でゆでる場合にはアルペンザルツ(岩塩)やにがりで硬度を補います。


メニュー

ボロネーゼ bolognese(ミートソース)


タマネギ、セロリなど、刻んだ香味野菜をオイルで炒め、じっくり焼いた肉(挽肉が使われることが多い)と、ワインを素材として合せた、イタリア料理・フランス料理のソースです。
レシピ上の大きな違いとしては、ボロネーゼが主としてトマトを殆ど使わずにワインで煮込むのに対し、ミートソースはトマトで煮込みます。

それ故に、ボロネーゼはワインの渋みを利用した肉ベースの味に対して、ミートソースはケチャップや砂糖などを加えることが多くトマトベースの甘い味付けとなります。 


カルボナーラ Carbonara



「炭焼のパスタ」(炭焼職人風)といわれるパスタソースの1種です。

チーズ、黒コショウ、グアンチャーレもしくはパンチェッタ(塩漬けの豚肉)、鶏卵 (卵黄又は全卵)を用います。


ヴォンゴレ vongole


イタリア語の vongole は、本来はアサリ類・ハマグリ類などのマルスダレガイ科の二枚貝を指すヴォンゴラ(vongola)の複数形で、料理のことはイタリアでは spaghetti alle vongole(ヴォンゴレスパゲッティ)などとよびます。 



ペスカトーレ Spaghetti alla pescatora

ペスカトーレとは漁師という意味です。

漁師が売れ残りや雑魚、外道などをまとめてトマトソースで煮込んだものがはじまりと言われる大衆料理です。

これを次第にスパゲッティのソースとして使うようになりました。

塩・ニンニク・白ワインといった簡素な味付けに、魚介類それぞれの旨みがトマトソースによって調和され、素朴ですが非常にコクのあるスープとなります。

一般的には、アサリ、イカ、エビ、カニ、ムール貝、ホタテ等がよく使われます。


ペペロンチーノ(アーリオ・オリオ・ペペロンチーノ)Pasta aglio, olio e peperoncino 

イタリア語で、アーリオはニンニクを、オリオは油(特にオリーブ・オイル)を、ペペロンチーノはトウガラシを意味します。これら3つの素材をソースに用いたパスタ料理を指します。


パスタとしてスパゲッティを選んだものが、アーリオ・オリオ・ペペロンチーノです。

このパスタは別名「絶望のパスタ」とイタリアでは呼ばれることがありますが、その理由は諸説あり、一例として「貧困のどん底にあってもオリーブ油とニンニクと唐辛子さえあればなんとかなるパスタ」との説があります。 

日本とは異なり、本場のイタリアでは簡易な家庭料理として扱われており、レストランのメニューに並ぶ事が殆ど無い料理です。 

ソースはニンニク、オリーブオイル、トウガラシのみです。

好みによってイタリアンパセリなどハーブ類、胡椒やアンチョビを加える程度ですが、パンチェッタやベーコンを加えたり、ブイヨンなどで味をしっかりとつけて出す店も日本にはあります。



プッタネスカ Spaghetti alla Puttanesca

トマトソース・パスタのバリエーションの1つで、アンチョビやオリーブ、ケッパーの塩味や唐辛子の辛味を利かせた、刺激的なナポリの名物パスタです。

名称は「娼婦風のパスタ」を意味します。

名前の由来には諸説あり、「娼婦は昼食時にも忙しく、海のものも畑のものもごった混ぜにしてパスタと和えて食べた」説、「娼婦が客をもてなすためのパスタ」説や、「激務の娼婦が体力を回復するために食べたパスタ」説、「刺激的な味わいが娼婦を思わせるパスタ」説、「娼婦同様たまに味わえば美味だが、毎日のように食べれば飽きるパスタ」説など様々です。


アラビアータ all'arrabbiata

唐辛子を多めに入れたり、オイルに味つけしたりして、唐辛子の味を強くしたトマトソースを作り、それを茹でたパスタに絡めた料理です。

好みでバジリコなどのハーブを添えることもあります。
アラビアータ(arrabbiata)はより忠実に読むとアラッビッアータとなりますが、これはイタリア語で「怒り」という意味です

「おこりんぼ風」とも訳されます。

イタリア語では「〜風の」という「all'」を付けるのが正しく、カタカナにすると「アララッビッアータ」と読むことになります。

地名のアラビア (Arabia) との関係はありません。


イカスミスパゲッティ(ネーロ) Spaghetti al Nero di Seppie

イカ墨をソースに使う、ヴェネツィアの代表的なパスタ料理です。

この料理の由来は、イカ墨によって舌が黒くなるほどの黒色(ネーロ)がついていることです。

ローマ帝国皇帝ネロが好んで食べたから、との俗説もありますが、これに根拠はありません。

セピエ(Seppie)の名はかつてモノクロ写真に用いられたイカ墨(セピア)に由来します。


和風スパゲッティ

日本においてはツナ缶、たらこ、辛子明太子、海苔、山菜、納豆、大根おろし、水菜などを使ったり、醤油などで和風の味付けをしたスパゲッティ料理が広く好まれ、和風スパゲッティと呼ばれています。

ヘルシー素材が好感を持たれ、国内外で日本人以外が和風の味付けのスパゲッティを食べることも多いです。 

スパゲッティは、主にフォークで巻き取って食べますが、店によってはフォークではなく箸で食す所もあります。


ナポリタン Naporitan

茹でたスパゲッティをタマネギ、ピーマン、ハムなどと共にトマトケチャップで炒めた洋食です。

日本で創作された日本風パスタ料理であり、類似の名を持つイタリア料理のスパゲッティ・アッラ・ナポレターナとは異なります。 

オリーブ油を熱したフライパンでベーコン、タマネギ、ピーマンなどの具材を炒めたうえで、トマトやトマトケチャップを加えてさらに炒め、茹でたスパゲッティを混ぜて塩コショウで味を調えて作ります。

ベーコンはハム、ソーセージなどに置き換わることがあります。

好みでタバスコペッパーソースや粉チーズをかけます。


たらこスパゲッティ(明太子スパゲッティ) 

たらこを主要な具材として用いたスパゲッティ料理です。 

1963年から1967年頃、東京都渋谷区にあるスパゲッティ専門店の老舗「壁の穴」で、常連客であった人物から、キャビアを持ってきたので、これでスパゲッティを作ってくれという要望を切っ掛けとして店主の成松孝安が考案したレシピです。

キッカケとなったキャビアを加えたスパゲッティは大変美味であったが、高級食材のキャビアを日常的に店で出すことはできなかったため、安価な代替品を探した結果として、たらこを用いて作られるようになりました。

上に振りかけられる海苔は、茶漬けに着想を得ているといいます。


和風きのこスパゲッティ 

この料理は、スパゲッティを和風にアレンジしたものです。

主にキノコをメインにした和風のソースで作られる、日本のパスタ料理です。 

家庭で作る場合は醤油や和風ドレッシングやめんつゆやナメタケなどで風味つけをします。


あんかけスパゲッティ(名古屋) 

1960年代に愛知県名古屋市で登場したスパゲッティ料理です。

茹でたスパゲティにソースを和えるイタリアのパスタとは異なり、あらかじめゆで置きしておいた太いスパゲッティを、焼きそばのように、ラードや植物油で炒め、中華料理の餡のような粘性とコクのある辛味の効いたソースがかかった料理です。

この辛味は胡椒をたっぷりと使うためですが、味のベースはトマト味です。

具材はウインナー、タマネギ、ピーマンが一般的であり、そのほか、ピカタ(豚肉黄金焼)やエビフライなどの具がトッピングされたメニューも好まれています。


イタリアンスパゲッティ (名古屋)

名古屋等の中京圏では、一部の喫茶店がナポリタンに似た独自の料理をイタリアンと呼んでいます。

店により違いはありますが、熱したステーキ皿にナポリタンを盛り、溶き卵を流し込む場合が多いです。

このため、「鉄板スパゲティ」や「鉄板イタリアン」、「鉄板ナポリタン」とも呼ばれ、店舗によって呼び名が異なります。 

このスパゲティの発祥は名古屋市東区にある「喫茶ユキ」で、1961年(昭和36年)に誕生しました。

当時、店主がイタリア旅行でスパゲティを食した際、途中で冷めてしまうのを不満に思い考案したものです。

語源については皿を「板」に見立てた上でスパゲッティを「板スパ」と呼び、だじゃれでイタリアンスパゲッティとなったともいわれます。


日本での歴史 

1928年、日本で初めての国産スパゲッティ「ボルカノ」は兵庫県尼崎市南塚口町(現在のピッコロシアター)にあった高橋マカロニ(髙橋胖)によって製造されました。

この商品名は高橋がイタリアでスパゲティに出会った時に見たヴェスヴィオ火山にちなんでおり、当時は「スパゲッチ」と称しました(現在は日本製麻株式会社ボルカノ食品事業部)。 

終戦後の1945年から1952年まで続いた占領期にアメリカ軍兵士がレーションとしてよく食べていたことから、知られるようになりました。

大量生産の軍用食であるため、あらかじめ茹でた麺をケチャップで味付けしたものが主流でした

1953年当時、東京でスパゲッティが食べられる店は帝国ホテルと、CIA東京支局初代局長のポール・ブルームが自邸の元料理人に開かせた田村町の「壁の穴」など3軒ほどしかなく、帝国ホテルでは960円、壁の穴では100円で提供されました。

同店は、安さとオーダーボイル(注文後に麺を茹でる)とアルデンテ(歯ごたえを残す)を実行したことにより、在日外国人客や海外通に支持されました。

1960年代半ば頃には広く一般家庭でも料理されるようになりましたが、1980年代後半までは、日本においてスパゲッティといえば、アメリカ式のミートソースと日本生まれであるナポリタンが双璧を成していました。

外食メニューとして1960年代当時は大都市部(東京・名古屋・大阪・福岡)や港町(横浜市・神戸市)を除けばまだイタリア料理専門店が珍しく、洋食屋や喫茶店などで食べられることがごく一般的でした。 

当時は麺を茹でおきしておき(茹でるときに入れる食塩もほんのひとつまみであったため、麺自体にはほとんど味もコシも効いていないが、当時はむしろそのような方が好まれたようです)、注文に合わせて肉、ピーマンやタマネギなどと油で炒め、単純に市販のケチャップでからめてそのまま味付けとする方法が一般的でした(つまり焼きそばのような調理法でした)。

また、レトルトのうどんのようなインスタント麺も多くありました。

こうした調理法であったため、今日のスパゲッティ水準から見ればあまり美味とは言えないものもありました。

ただ今日では、レトロなナポリタン・イタリアンなどと称されるケチャップ炒めスパゲティが昭和ノスタルジーの風物として人気を得ています。 

こうした「日本風スパゲティ」が、かつては一部の例外を除き、おおむね一般的でした。

しかし、1980年代後半からのバブルによる「イタメシブーム」が火付け役となり、本場イタリア風のさまざまなスパゲッティとともに日本独自のたらこスパゲッティ(明太子スパゲッティ)が人気となりました。

そして1990年代半ば頃より、徐々に家庭での調理も本場イタリアの調理法を踏襲するものとなり、また前述のような日本独特の素材と和える方法が各種編み出されました。

これらの需要に応えるため、スパゲティ用の調味料やソースがイタリアから輸入されるとともに、日本の食品メーカーが和風スパゲティ向けに各種製品を開発・販売しています。


御当地グルメ

地方で考案され、ご当地グルメとして根付いたスパゲッティ料理も数種類あります。

「あんかけスパゲッティ」(愛知県)や、熱した鉄板の上にスパゲティと豚カツをのせてミートソースをかけた「スパカツ」(北海道釧路市)、アサリの煮汁の旨味に着目したスープ系パスタ「ボンゴレスープスパゲティ」(群馬県高崎市)などが代表例です。