世界最強のステルス機F22ラプター

F-22ラプター

F-22は、ロッキード・マーティン社とボーイング社が共同開発した、レーダーや赤外線探知装置などからの隠密性が極めて高いステルス戦闘機です。

あらゆる点において従来機を凌駕する性能を持ち、模擬戦闘での他機を寄せ付けない実績から世界最強の戦闘機と呼ばれる機体です。

愛称は猛禽類の意味のラプター(Raptor)です。

空戦による戦闘空域の制圧を任務とする制空戦闘機として、開発元のロッキード・マーティン社はAir Dominance(航空支配)というキャッチフレーズを用いて、航空支配戦闘機(Air Dominance Fighter)と呼んでいます。


概要

アメリカ空軍F-15C/D制空戦闘機の後継機として、ロッキード・マーティン社が先進戦術戦闘機計画(ATF)に基づいて開発されました。

第5世代ジェット戦闘機に分類される世界初のステルス戦闘機です。


ミサイルや爆弾の胴体内搭載などによるステルス特性や、ミリタリー推力での超音速巡航(スーパークルーズ)能力を特徴とします。

そのステルス性の高さなどから世界最高クラスの戦闘能力を持つとされます。

同空軍が運用するF-15E 戦闘爆撃機と同じく多用途戦術戦闘機に分類されます。

ステルス性能の追求を優先したため対地兵装の搭載能力は限定的であり、ステルス特性を生かして効果的に対空装備を無力化したり、より空戦能力側に振った能力を生かすことにより、先代のF-15の航空優勢(制空権)を超え戦域全体の支配を目指す航空支配戦闘機(Air Dominance Fighter)と言えます。

冷戦下に開発が行われ、アメリカ空軍の試算では1996年からの調達で最終的には750機の配備を予定していました。

しかし、開発の遅れや冷戦の終結に伴って、機種転換訓練向けに2003年から配備が開始され、実戦部隊が運用を開始したのは2005年12月でした。

最終的な装備機数は187機(EMD試験機1機を含めた量産準備試験機以降の装備機数。試作機YF-22も含めた総製造数は197機)で、開発費の高騰や生産数の大幅縮小により、一機当たりのコストは約1億5,000万ドルに達しています。

当初は転換訓練などのための複座型としてF-22Bを生産する予定でしたが、予算の縮小や地上シミュレータで完全に代替可能とされたため生産されていません。

また、F-22をベースとした派生型の開発も計画されていましたが、コスト高などから実現していません。


冷戦終結後の国防予算削減政策に加え、アメリカ合衆国の財政悪化やコストの高騰、さらに米国のサブプライムローンに起因する2007年の世界金融危機も重なったことから、2009年度の調達分により当初予定を大きく繰り上げて生産終了が決定し、2011年末に最終号機である195号機がロールアウト、2012年5月2日に引き渡しが行われました。


開発

アメリカ空軍は、1985年10月にアメリカ国内の航空機メーカー7社に対して要求したATF(先進戦術戦闘機)のコンセプトデザインから、1986年7月にロッキード社とノースロップ社の2案を選定の上で実機開発を5社2チームへ発注し、ロッキードのチームはYF-22、ノースロップのチームはYF-23をそれぞれ2機ずつ製造しました。

搭載するエンジンについても競争試作としてプラット・アンド・ホイットニーのYF119-PW-100とGE(ゼネラル・エレクトリック)のYF120-GE-100を開発しました。

評価試験は2種の試作機と2種のエンジンの組み合わせからなる4機で進め、1991年に評価の詳細を非公開としたままでYF-22とYF119-PW-100の組み合わせの正式採用を決定しました。

YF-23はステルス性と超音速巡航能力ではYF-22に勝っていましたが、運動性能や量産化する際のコスト面などはYF-22が有利だったと言われていますが、実際の選定理由は公開されていません。


YF-22およびYF-23の4機の試作機、及びYF119とYF120両エンジンの開発には、約38億ドルの費用が費やされました。

F-22選定後、1991年8月にロッキード社は先行量産型開発の契約を受け単座量産型と複座量産型の設計作業を開始しました。

製作された2機の試作機も量産機開発のために引き続き投入され、試作1号機は技術立証機となりました。

2号機はエドワーズ空軍基地にて同年10月23日より飛行試験を開始したものの1992年4月に飛行試験中の墜落事故で主翼や尾翼を一部破損した上に火災も起こしました(パイロットは無傷)。

1992年6月に終了した単座・複座量産型の設計作業ではエアブレーキの廃止や空中給油口の追加、各部の寸法変更を行いました。

基本レイアウトの変更はないものの主翼後退角を48°から42°へ減らし、合わせて水平尾翼の後退角も42°とし、垂直安定板は外側に28°傾け、各翼の面積や形状も変更しています。

また搭載するレーダーに合わせて機種形状を変更し、コクピットも前方に移っています。

このため胴体長も19.56mから18.92mへと短くなっています。

主翼や水平尾翼も形状が変更され、垂直尾翼は小型化しステルス性が向上しています。

1993年4月の先行量産型1号機の製造開始時点で、冷戦の終結に始まる国防費の削減やアメリカ軍全体の再編等の影響から調達数は750機から648機へ削減されています。

1994年3月には実物大模型(モックアップ)による試験でレーダー反射断面積(RCS:Radar Cross Section)の目標超過(未達成)が判明し、原因となったパネルの形状を変更しました。

1995年2月に量産機の組み立て作業が承認され、先行機を使用したエンジンや電子機器類などのチェック作業と並行しての組み立てが進み、1997年4月9日に量産型1号機がロールアウトした。この間にも、モックアップの製作まで行われた複座型のF-22Bの導入中止や451機への調達機数の削減など、導入計画の縮小が進みました。

設計と性能

F-22は『ステルス性が高いこと』『アフターバーナーを使用しないでスーパークルーズ(超音速巡航)ができること』『STOL(短距離離着陸)が可能なこと』という3つのSの要求通りの性能を持っています。

ステルス性を高めることで、相手のレーダーの探知距離を相対的に短くして、相手がこちらを発見する前にこちらのレーダーで相手を発見して、視程外射程(BVR)の空対空ミサイルで攻撃する戦法が可能になり、ドッグファイトに持ち込まれる可能性は低いとされています。


開発元のロッキードマーチン社では「先制発見・先制攻撃・先制撃破(First Look・First Shoot・First Kill)」と呼んでいます。

さらに、約1,000mという短距離での離陸を可能としています。


機体

一般的なセミモノコック構造を採用し、素材別の機体重量比はチタニウム6-4 36%、熱硬化性複合素材24%、アルミニウム16%、鋼鉄6%、チタニウム6-22-22 3%、熱可塑性材料1%、その他15%となっています。

F-22ではF-117やB-2などの攻撃機や爆撃機(戦略爆撃機)と比較して、より高度なオール・アスペクト(全方位)のステルス設計となっています。

ステルス形状の基本は各部のエッジの角度を揃えることで、レーダー反射波を一方向に限定し元の方向に返させないようにするというものです。

F-22でも上面から見れば主翼前縁の角度とインテイクや水平尾翼の前縁の角度は統一され、正面から見ても菱形を基本に角度を統一させており、レーダー反射波を4方向に限定させているのが分かります。

レーダー探知を可能な限り避けるため、レーダー波を吸収するレーダー波吸収素材(RAM)を使用するだけではなく、吸収しきれなかったレーダー波を内部反射と減衰を繰り返して吸収するレーダー波吸収構造(RAS)も採用しました。

機体表面にはレーダー波吸収素材を含んだ塗料が用いられ、レーダー波は熱へと変換され、これもレーダー反射断面積を低減させます。

ステルス性を高めるためエアインテイクからのダクトは内側に大きく曲げられており、真正面から見てもタービンブレードが全く見えません。

前身のF-15ではタービンが剥き出しの大きなエアインテイクがあるため、正面のRCSが非常に高いという問題がありました。

また、キャノピー全体、機体外板の継ぎ目、胴体側面、胴体下面の兵器庫扉の前後などを、三角形を組み合わせた形状とし、レーダー反射を特定の方向へ集中させるようになっており、レーダー反射断面積は0.001-0.01m2程度と推定されています。

さらに、空気取入れ口ダクト、コクピット、火器管制レーダーなどの電子機器、兵装プラットフォーム、エンジン排気システムなどに被発見性を低下させる工夫が盛り込まれています。

ストレーキの採用や主翼と水平尾翼の間に若干外側に傾けた垂直尾翼を配置するという全体構成は、F/A-18などの従来の戦闘機に先例があります。

そのため、先進戦術戦闘機計画にて対抗馬となったYF-23に比べ、驚くほど平凡な外形となりました。

しかしながら細かく見ると、主翼は複雑な六角形の変形デルタ翼であり、前縁後退角は42度、後縁は17度の前進角となっており、さらに先端付近では42度となっています。

前縁は3.25度の下反角が、主翼付け根部で0.5度、翼端で-3.1度の捻りがそれぞれ付けられており、前縁には前縁フラップ、後縁には外側に補助翼と内側にフラッペロンを装備しています。

照射されたレーダー波を特定方向に反射するために機体を構成する角度は可能な限り同一になっています。

更には主翼の後縁の若干の前進角と垂直尾翼とエアインテーク部分についてもほぼ同角度の傾斜を持たせています。


機体の平面と平面を繋ぐ曲面部分は「コンティニュアス・カーバチャー」と呼ばれる連続的な曲率を用いたデザインとするなど、随所にステルス性向上のための高度な設計を施しています。

1980年代以降の主流ともいえるカナード付きデルタ翼形式を採用せず、あえて時代に逆行したかのような設計になっているのも、ステルス性を優先した結果です。

F-22のRCS(レーダー有効反射面積)は正面において0.0001-0.0002平方メートルと小鳥か昆虫などと同レベルと言われており、その他の方向においても高いステルス性能を持っているため、レーダーで捕らえることは非常に困難です。

実際にF-22と訓練で相手したパイロットによれば「目視出来ているのにレーダーに映らなかった」という話もあった程です。

確かにF-22のRCSから考えれば、F-15クラスのレーダーでもかなり近づいてやっと捕らえられるレベルだと考えられます。

水平尾翼は全体が可動する全遊動式であり、垂直尾翼の方向舵は左右の方向舵を内側に向けることでエアブレーキとして機能する。これにより、YF-22では機体背部にエアブレーキを搭載していたのを、F-22ではこれを廃止しました。

また、燃料タンクは機体前部、及び左右の主翼内部に備わっています。


キャノピーは厚さ9.5mmのポリカーボネートを2枚重ね合わせて成形されており、F-117と同じように金を蒸着コーティングすることでコックピット内部へのレーダー波の進入を防いでいます。

この為光の当たり方によってはキャノピーが金色に輝くため、これも一つの特徴となっています。

機体の部品点数は従来機に比べて非常に少なく、F-15Eの三分の一以下しかありません。

これは機体構造のフレームピッチが広くなり個々の機体部品が大型化したこと、ステルス化のために機体外板の継ぎ目を減らすことを必要としたことによります。

このため、部品製作の工作機械に対する初期投資が大きくなっています。

部品点数の少なさは大量生産時の生産効率の向上に寄与するものの生産数が少ないためにその効果は現れず、また、生産設備コストが開発コストと並び機体単価の多くの割合を占めるに至っています。


エンジン

エンジンプラット・アンド・ホイットニー社のF119-PW-100を2基搭載します。

このエンジンは3段のファン、6段の圧縮機、各一段の低圧タービンと高圧タービンで構成されており、部品点数はF-15のF100-PW-220の6割程度にまで削減されています。

ドライ時の出力を高くするためにバイパス比は0.2と非常に小さく、ここまでくるとほぼターボジェットエンジンです。

このエンジンは最大出力が156kNと非常に高い出力を持っており、F-15のF100-PW-220の約1.5倍に匹敵します。

推力重量比もF100が7.8であったのに対し、F119では9.0を達成しています。

そのためアフターバーナーを使用しない状態でもF-15のA/B使用時とほぼ同等の機動が可能であり、高出力のエンジンによる余剰推力はドッグファイトにおいても常に優位な戦闘を展開可能です。

ミリタリー出力でのスーパークルーズ能力を実現するため、従来の低バイパスターボファンエンジンよりも更にバイパス比を小さくしているとされますが、アフターバーナー使用時の最大推力は35,000 lb(155.7 kN)とされ、不使用時のミリタリー最大推力は未公開となっています。

スーパークルーズについては、アフターバーナーの使用なしで最大巡航速度マッハ1.58となっています。

ただし、マッハ1.7まで到達したという発表もあります

短時間で大量に燃料を消費するアフターバーナーを使用しないスーパークルーズには、従来の戦闘機以上に高機動運動を長時間にわたって行うことが可能であるとともに、赤外線放出量を抑えて赤外線誘導型の敵ミサイルからの追尾を避ける効果もあります。

常用高度4万フィートでのスーパークルーズという、方向舵や昇降舵など空気力学的機体制御の効果の低い超音速域や大気密度の低い高高度飛行時において運動性を確保することを目的として、F-15 S/MTDの実験で開発された上下方向に20度まで推力軸を傾けることができる二次元式の推力偏向(TV)パドルを採用しています。


これは、速度や主翼の迎え角とは関係なく機体のピッチング(上下方向)制御を可能とするものであり、低速または大迎え角での飛行時では水平安定板(昇降舵)の効きが低下するため、その際のピッチ操縦において使用されます。

排気口には二次元推力偏向パドルが取り付けられており、ピッチ方向に±20°の範囲で動作し、TVC(Thrust Vector Control:推力偏向制御)を実現しています。

これにより速度や迎え角に関係なくピッチ制御が可能となり、運動性能やSTOL性(短距離離陸能力)を大幅に向上させています。

さらにピッチだけでなくロール制御にも利用され、ロール率が通常型排気口に比べ50%高いといいます。

TVCによって低速時の迎え角の限界を最低でも10度引き上げることが可能で、実験では85度の迎え角での操縦制御が可能でした。

そのためF-22ではロシア機の専売特許と思われていた「コブラ」(水平飛行から急激に120°近くまで機首上げを行い、そのまま水平飛行に戻る機動)や「クルビット」(ほとんど高度を変えずに宙返りする機動)といったポストストールマニューバーも可能です。

TV排気ノズルを低速度・低高度域でも積極的に使用して機動性向上を目指しているロシア製戦闘機とは主目的が異なるため、複雑な作動をするロシア製TVノズルと異なり非常にシンプル機構となっています。

パドル自体は、耐熱セラミックとマトリックス製の電波吸収材が使用されており、形状も平板にして、エンジンからの排気ガスを素早く拡散できるようにしています。


操作系統は通常のフライ・バイ・ワイヤの操縦ソフトウェアに組込まれており、パイロットは推力偏向のための特別な操作を行う必要はありません。

そのため、遷音速域でもF-15を上回る旋回性能を発揮し、パイロットの技量に頼らず高い格闘戦性能を誇る。

遠心力は速度の二乗に比例し半径に反比例するため、超音速域での旋回では容易に高い遠心力を生じます。

そのため、パイロットの体を保護する新型の耐GスーツCE-ATAGS(COMBAT EDGE and Advanced Technology G Suit)を機体と併せて開発しました。

このシステムでは従来のGスーツのように下半身だけでなく、全身をカバーすることで高い対G性能を持ち、新型の加圧呼吸装置と併せることでパイロットは従来より長時間9Gに耐えることが出来るようになりました。


アビオニクス

アクティブ・フェーズド・アレイ(APA)方式のAN/APG-77を火器管制用レーダーとして機首に搭載しています。

アクティブ・フェイズド・アレイ・レーダー(APAR)は、従来のレーダーのように機械的に動く部品が無い新しいタイプのレーダーです。

APARは日米共同開発であるF-2支援戦闘機で初めて実用化されました。

F-2のAPARでは約800個のアンテナモジュールで構成されていましたが、F-22のAN/APG-77では出力4Wのアンテナモジュール約2000個で構成されており、出力も走査範囲もF-2の物に比べ段違いの性能を誇ります。

具体的にはステルス性が意識されたレベルのRCS1平方メートルの機体(F/A-18Eやラファール等)を200km以上で探知出来るといいます。

また、計算上ではB-2ステルス爆撃機(RCS0.1平方メートル)でさえ約100kmで発見可能です。

レーダー自体はステルス性とは相容れないものですが、APA方式は電波の横漏れ(サイドロープ)が少なく電磁輻射を低く抑えることで、従来の機械走査式レーダーに比べて自己の位置を暴露し難くなっています。


さらにこのレーダーには広域スペクトラム送信という技術が用いられており、相手のRWR(レーダー警戒装置)などによる逆探知も難しいとされています。

従来のレーダーは狭い周波数帯で高い出力の電波を相手に放射していましたが、広域スペクトラム送信では様々な周波数の電波を低い出力で放出し、それらの反射波信号を総合的にコンピュータによって処理することで、弱い電波でも正確な情報を得ることが出来るようになっています。

APARの特徴としてアンテナを機械的に動かす事無く電波のビームを自在にコントロール出来、広域のスキャンを一瞬で行うことが可能なため、レーダー波の逆探知による発見をますます難しくしています。

例えばF-15CのAN/APG-63の場合は走査範囲は最大で水平方向に120°、垂直方向に20°でスキャンに14秒かかりますが、F-22AのAN/APG-77では120°の円錐範囲のスキャンを一瞬で行うことが出来ます。

周波数拡散技術により特定周波数での出力が低く抑えられたLPI(低被探知)レーダーは、約250km先の目標を探知できる能力と多様なモードとの組み合わせにより、広いレーダー視野、長い捜索・追跡距離能力、信頼性を持っており、「ファーストルック・ファーストショット(先に見つけて、先に撃つ)」の最重要要素となっています。

また、レーダーが探知した目標の種類を特定して、その情報を三次元で画像化することも可能とされています。

対電子妨害能力を有しており、広い周波数帯の妨害電波を全方位に発信しますが、新しいタイプでは、目標が使用しているレーダーの周波数帯に合わせた妨害電波を発信することが可能となっています。

また、相手の発するレーダーや通信電波を逆探知して方向を解析するESM(Electronic Support Measures)を備えています。

EW(電子戦)システムは、レーダー警戒機能とミサイル発射探知機能を有しており、無線周波数警戒および妨害とミサイル発射探知機能などを持つAN/ALR-94電子戦サブシステムとフレアーを納めるAN/ALE-52フレアー・ディスペンサーで構成されています。

AN/ALR-94は、広い周波数帯でのレーダー電波を受信する装置であり、機体各所に埋め込まれた30個以上の探知用のアンテナにより、機体全周360度の探知や監視能力を持っています。

また、敵航空機のレーダ波を受動的に捉え位置を算出するRWR機能も有しており、最大で460kmの距離で探知
することが可能とされています。

このようにF-22のレーダーシステムは過去類を見ないほど強力な物で、ステルス性と相まって敵からは発見されず先に敵機を発見出来るため、空対空戦闘に置いて圧倒的優位に立つ事が可能可能です。

さらにこのレーダーは対地攻撃用に合成開口レーダー(SAR)モードや逆合成開口レーダー(ISAR)モードも追加される予定で、地上目標の詳細な3D画像を生成することにより本格的な対地攻撃能力も有するようになります。

ちなみにレーダーアンテナは正面のステルス性を考慮し斜め上向きに取り付けられています。

電子機器はリスク分散のため複数搭載されており、電子機器モジュールには列線交換ユニットの採用により整備性を高めています。

また、電子機器の冷却には、空気を機外から取り込んでから放出する方式では、超音速飛行時において冷却用の空気を取り込むことが難しいのと熱の帯びた冷却用の空気が赤外線で探知されるため、環境制御システム(ECS)により冷却用の空気を内部循環させる方式としています。

飛行操縦系統には3重のフライ・バイ・ワイヤ(FBW)を使用しており、パイロットがオーバーGを起こすような操縦をしても、機体の動きを止めて自動的に飛行可能領域内に戻すことができる自動構造荷重制限機能や推進装置(ジェット・エンジン)の制御機能を統合した機体管理システム(VMS)を備えており、飛行姿勢の安定性は高いです。


また、パイロットがブラックアウト・レッドアウトを起こしたり、平衡感覚が狂ったりした場合には、操縦桿を離すことで機体を自動的に水平状態に復帰させる機能もあります。

F-22の電子機器システムは2基の『CIP(共通統合プロセッサー)』によって制御され、それぞれ各サブシステムと光ファイバーのデータバスで繋がっています。

CIPは1基に付き66のモジュールスロットがあり、それが2基装備されています。

CIPは同一のバックプレーンを持ち、F-22の処理要件はすべて7種類のプロセッサのみで処理可能です。

CIPモジュールは、自動再プログラミング機能を有しており、電子機能のいずれかをエミュレートする能力を有します。

例えば、無線機能のCIPモジュールが死ぬと、他のモジュールの1つが自動的にそれを引き継ぐようになっています。

処理能力は700MIPS(毎秒7億回の命令を実行可能)です。

現在、CIP 1の66スロットのうち19スロットとCIP 2の66スロットの22スロットは使用されておらず、また各モジュールは設計によってその機能の75%に制限されています。

そのため将来的にそれらを使用することでさらに性能を向上させることが可能で、30%の拡張性を持ちます。

最大で2000MIPSまで処理能力を引き上げることが可能だと言われています。

既存の機器に変更は必要なく加えて第3のCIPのためのスペース、電力、冷却システムの準備がされており200%まで拡張することも可能です。

因みに、2000MIPSの処理能力は1990年代のロールアウト時であればちょっとしたスーパーコンピューター並みの処理能力で、一部で話題となっていましたが、コンピューターの性能向上は著しく、現在ではそう大きな処理能力ではありません。(参考値として、ソニーのゲーム機PS3のCPU「Cell」は21,800MIPS、マイクロソフトのゲーム機XBox360のCPU「Xenon」は19,200 MIPSです)

ネットワーク機能の充実も大きな特徴である。CNIシステムと呼ばれており、飛行内データ・リンク(IFDL:In Flight Data Link)、統合戦術情報分配システム(JTIDS)、MK X Ⅱ敵味方識別装置で構成されています。

飛行中のF-22は互いに、飛行内データ・リンクで戦術情報を交換し、連携して戦闘行動を取ることができます。

また、索敵範囲を超える敵機及び友軍機の情報を、統合戦術情報分配システムを用いることで、他のF-22飛行隊や早期警戒管制機、レーダーサイト、イージス艦、陸上の小隊の端末、司令部やアメリカ国防総省など、広域データリンク網によってあらゆる情報を受信できます。

自ら発するレーダー波に頼らずに外部からの情報で位置確認や索敵を行う能力は、ステルス性を発揮する上では必須といえます。

より高性能な双方向データリンクMADLの搭載計画がありましたが取り消されたため、現状では他機種や他軍種の部隊とのデータリンク接続能力はありません。

ネットワーク機能に対応するためコックピットは複数の多目的ディスプレイで構成されるグラスコックピットが導入されました。

F-22のコクピットはグラスコクピット化を徹底させた結果、旧来のアナログな丸形計器類は全く見受けられなくなりました。

その代わりに4基のカラー液晶多機能表示装置と2基のカラー液晶補助表示装置が配置されており、飛行計器・燃料データや戦術情報など様々な情報が表示されます。

HUDはホログラフィ式で、従来の物よりも広視野の物が搭載されています。

アビオニクスのソフトウェアは1983年にMIL規格となったアメリカ国防総省の標準高等言語であるAdaで開発されました。

開発規模は実装のソフトウェア依存度が高まったことにより、F-15Aのソフトウェアの200,000行(開発言語不明)に比べて2,200,000行と激増しました。

ソフトウェアの内訳は航法28%、レーダー12%、電子戦14%、通信14%の四分野で全体の7割近くを占めています。

また、レーダーと電子戦装置だけで全体の消費電力の90%を占めている。

近年ではソフトウェア開発が武器開発に占める割合が激増しており、AIM-120でも数十万行(開発言語不明)、F-35に至っては4,300,000行を超えるソースコード作成が作業工数全体の40%以上を占めると言われています。

一般的にソフトウェア開発規模の増大は要員増以外の効果的対策がないものの、ソフトウェア自体が機密指定されることから増員は難しく、開発コストを著しく押し上げます。

開発コストは生産数を多くすることで機体単価に占める割合を押さえることが可能ですが効果を得るほどの生産数を確保することが出来ないまま生産が終了しました。


武装

固定武装としてゼネラル・エレクトリック社製のM61A2 機関砲(弾数480発)を装備しています。

M61A2はM61A1を軽量・長銃身化した改良型です。

機関砲発射口はステルス性を考慮して普段は閉じられており、発射時のみ展開します。

そのため、パイロットが引金を引いてから初弾が発射されるまでの時間差は若干増しています。

また、ステルス性をフルに発揮するための運用の場合は、全兵装は胴体の下面1箇所と側面2箇所の計3箇所のウェポンベイ(兵器庫)に搭載されます。


これによって搭載量は犠牲となりますが、空気抵抗を減らすことができるというメリットがあります。

下面ウェポンベイ内には「トラピーズ」(Trapeze:空中ブランコの意)と呼ばれるアームが備わっており、兵装はウェポンベイ内で切り離して自由落下させるのではなく、このアームが伸びることによってウェポンベイ内から機外へと放出される機構となっています。

左右側面2箇所の短距離空対空ミサイル専用のウェポンベイには、AIM-9M/X(通称サイドワインダー)を搭載します。

しかし機体自体の旋回性能が卓越していることと、使用優先順位が低いなどの理由からAIM-9Xの搭載は見送られています。

サイドワインダー使用時は扉を開き、シーカーを機体の外に露出させなければならないため、ステルス性は著しく低下します。

ちなみにこの時、サイドワインダーは斜め横を向いた状態にセットされます。

サイドワインダー収容部後方には、発射時のブラストが機体に当たるのを防ぐため、ブラストを外に逃がすためのディフレクターが装備されています。

下面ウェポンベイには中距離空対空ミサイルAIM-120A/B(通称アムラーム)を4発、もしくはF-22用に翼とフィンを縮小したAIM-120Cを6発搭載します。


ステルス性は低下するものの、主翼下には最大4発のAIM-9M/X、またはAIM-120A/B/Cを搭載可能です。

AIM-120はINSによる中間誘導とアクティブ・レーダー・ホーミングによるファイア・アンド・フォーゲット(Fire-and-forget、いわゆる「撃ち放し能力」)を持ち、72 km(AIM-120C型)もの射程を誇ります。

F-22の短距離ミサイル×2と中距離ミサイル×6の計8発という構成は、双方共に4発の計8発だったF-15と比較し、遠距離からミサイルを発射して敵機を撃墜することに比重を置いていることが分かります。

これはF-22自身の高いステルス性とレーダー、更には早期警戒管制機や僚機とのデータリンクにより「ファーストルック・ファーストショット・ファーストキル(first look, first shot, first kill:先に見つけ、先に射ち、先に撃墜する)」を意図した構成とされます。

空対地攻撃用にはGPS/INS誘導方式の統合直接攻撃弾薬(JDAM)GBU-32を搭載します。

なお、ステルス性を考慮しない運用の場合、翼下に600ガロンの燃料タンクを2本とミサイルを4発装備することができます


戦闘能力

高いステルス性とファーストルック・ファーストショット・ファーストキルを前提とした運用・戦闘スタイルから、世界最高水準の戦闘能力を有するとされます。

2006年にアラスカで行われた「ノーザン・エッジ演習」においては、延べ144機を「仮想撃墜」し、F-22は1機の損害も出しませんでした。


近年迄においてF-22には実戦経験はありませんでしたが、2014年9月22日夜のシリアにおけるテロ組織ISILの施設空爆作戦にて初めて実戦参加を果たしました。

ただ、この作戦では誘導爆弾による地上施設への爆撃を行っただけで、対戦闘機戦闘は発生しませんでした。

F-22の投入はISIL関連施設への空爆を黙認しつつも未だ不安定な関係にあるシリア政府軍の防空システムへの警戒という側面があり、F-35が実戦配備されていれば任せられるものでした。

F-15を超える機動性や旋回性能などから、有視界戦闘(レーダーに頼らず、目視での戦闘)においても卓越した戦闘力を持ちます。

なお、F-22は味方機同士でリンクされているため識別は可能となりますが、他の航空機や地上のレーダーでは捉えにくいためフェリーなどでレーダーを反射しやすいパーツを取り付けて飛行します。

膨大な演習回数の中には、数少ないながらもF-22が撃墜判定を取られたこともあります。

アメリカ空軍で行われた模擬空中戦で、電子戦術機EA-18GにAIM-120 空対空ミサイルで撃墜されたと判定された記録があります。

また格闘戦となった際には赤外線捜索追尾システムや目視で捕捉でき、電子装備よりもパイロットの技量が大きく影響するなど機体のコンセプトとは合致しないため、2012年のレッドフラッグにおいてドイツ空軍のユーロファイターに敗北しています。

このほかにも領空侵犯に対するスクランブルでは対象へ警告と確認のために目視距離まで接近する必要があり、迎撃任務ではアドバンテージが少ないとされます。



諸元

乗員: 1名
全長: 18.92m (62ft 1in)
全高: 5.08m (16ft 8in)
翼幅: 13.56m(44ft 6in)
翼面積: 78.04m2 (840ft2)
空虚重量: 19,700kg (43,340lb)
運用時重量: 29,410kg (64,840lb)
最大離陸重量: 38,000kg (83,500lb)
動力: P&W製F119-PW-100 A/B付きターボファンエンジン、165-173kN (16,780-17,690kg) × 2


性能

最大速度: M2.42, 2,575km/h (1,390kt) (高々度)
巡航速度: M1.82, 1,960km/h (1,060kt) (高々度)
フェリー飛行時航続距離: 3,200km (1,740Mile)
航続距離: >2,960km with 2 external fuel tanks (1,600Mile)
実用上昇限度: >20,000m (65,000ft)
翼面荷重: 377kg/m2
最大推力重量比: 1.08
翼幅荷重:148.01kg/m2