歳を取って背中が丸くなるのを防止

歳を取ると、良く背中が丸くなると言われます。

酷くなると腰が曲がって、杖を使わないと歩くのがままならなくなります。

背中が丸くなってしまったことを、老人らしさの表現として使われることも多いです。


老人性円背(ろうじんせいえんぱい)

高齢者の背中が丸くなるのを「老人性円背(ろうじんせいえんぱい)」と呼んでいます。

骨密度が「加齢」によって減少することが原因になっています。

骨密度の減少率は男性よりも女性の方が大きいと言われてます。

円背とはいわゆる猫背のことですが、高齢者に見られる円背が老人性円背です。

老人性円背になると、身体にさまざまな悪影響を及ぼすため、早いうちに予防することが必要です。

防止のためには、日頃からカルシウムを多く摂ることで、骨密度を高くするように食生活を心がけ、 適度な運動を行い「身体を鍛える意識」が有効と言われます。


症状

老人性円背では、背骨が亀の甲羅のように、緩やかに丸く突き出してくる症状が出ます。

特に痛みを感じる例は少ないですが、無理に丸まった背を伸ばそうとすると、背骨の骨折などを招き、場合によっては脊椎損傷となり、命に関わることがありますので、寝たきりで老人性円背の症状がある患者をベッドに寝かす時は細心の注意を払う必要があります。

背中が丸まるということは、腹部・胸部の圧迫も起きます。それにより、内臓が圧迫され食欲が減退したり、胸郭(肋骨など)の動きが制限されて呼吸機能の低下につながります。

老人性円背になると、足を上げる筋肉の働きが悪くなり、歩いたり立ち上がったりする日常生活における動作に支障をきたしてきます。

また、肩関節の動きが悪くなり、手を高く上げられなくなったり、身体のバランスが悪くなり転倒の可能性が高くなります。

その他、腰痛だけでなく膝痛や肩痛など全身の不調につながることもあります。

円背になると体幹上半身の重心が変化し、そのバランスを取るために頭部が前方へ突出する姿勢制御をすることが多くなります。

この姿勢でバランスを取るためには、下半身にも常に緊張が入るようになってしまうのです。

すると全身の筋肉が本来の力を発揮できなくなり、筋肉が弱っていくことがわかっています。

円背になると、胸や肋骨が丸くなった状態で固まってしまいます。

背骨を反らす機能が弱くなると、酸素を十分に取り込めなくなります。結果、呼吸が難しくなり、息苦しくなりやすい状態になります。

歩くだけでなく、最悪前かがみになるだけで背骨が潰れてしまい、圧迫骨折につながりやすくなります。

いわゆる「いつの間にか骨折」と呼ばれるものです。

円背になると、人は自然とあごが上がります。

人は食べ物が通る食道と、空気が通る気管が喉にあり、普段は食べ物が気道に入らないようにコントロールしています。

しかし、あごが上がると気道が広がり、誤って気道に食べ物が転がり込んでしまいやすくなります。

これを誤嚥(ごえん)と呼びます。


原因

背骨は本来、S字のような滑らかなカーブを描いて積み重なっていますが、背中を丸めた状態を続けていると、背骨が大きく曲がり猫背になってしまいます。

これは、高齢者のみに起こることではありませんが、高齢者の場合は「骨粗しょう症」の影響によって腰が曲がりやすいと言われています。

老人性円背は、加齢による骨の変形、摩耗や骨密度の低下が原因です。

脊椎の椎間板の軟骨が、老化により乾燥し、周囲の筋肉が固くなって変形したり、骨粗鬆症によって椎体がもろくなったところに力が加わり、押しつぶされるようにして圧迫骨折を起こします。

骨折を繰り返すことで次第に丸くなります。

重いものを持ったり、立ち上がったり、尻もちをつくことで圧迫骨折は起きます。

骨粗鬆症の場合、痛みなく圧迫骨折をするので気付かないこともあります。


検査

老人性円背は、自然と起こるものですから、つらい症状が現れることもありませんが、その検査方法である単純X腺撮影の画像を見ると、脊椎の椎体前部が、つぶれたくさび形に見えることで診断できます。

がんなどの転移による圧迫骨折で生じる場合もあるので、診断を確定するためには、血液検査やCT、MRIなどの検査を行うこともあります。


治療

老人性円背の治療法は、胸を無理のない程度に張ったり、背中を伸ばしたり、両肩を広げるなどの体操療法や、背筋力を付ける運動をしたり、姿勢を固定するために柔らかいコルセットやサポーターを使用します。

また、骨を丈夫にするためにカルシウムを多く摂取することも必要で、カルシウムの吸収を助けるビタミンDやマグネシウムも一緒に摂取すると効果的です。


予防法

老人性円背を防ぐためには、正しい姿勢を常に心がけることが最も重要です。

特に長時間同じ姿勢をとっている時は注意します。

座っている時は、腰骨を立てるようにすると背骨がきれいなS字を保てます。

次に、背骨を支える筋肉をほぐすため、適度なストレッチを行うようにします。

上体を後ろにそらしたり、背筋を伸ばした状態で上半身をねじる運動などが効果的です。

無理のない程度にゆっくりと時間をかけて伸ばしていきます。

また骨を強くするためには、散歩や階段の上り下りをしたりと日常生活で身体を積極的に動かすようにすることも有効です。

背骨を支えるのがインナーマッスルなので体幹を鍛えることも姿勢の改善には欠かせません。

良い姿勢を保ちながら両手を前に組み、そのまま肘を伸ばしながら前方に腕をゆっくり上げる運動は背部の体幹を鍛えるのに効果的です。

他にも仰向けに寝て片足を胸につけるように曲げ、もう片方の足は膝を伸ばしたままの状態で10秒ほどキープするストレッチも効果的です。

一度円背になってしまっても体操で姿勢を正していく努力をしていくことで改善の可能性があります。

予防としても、改善のためにもできるだけ体操の習慣をつけていくことが肝要です。

そして、骨密度を保つために意識的にカルシウムを摂取するのも効果的です。

牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品はカルシウムの吸収率が良いのでおすすめです。

カルシウムの吸収を助ける働きのあるビタミンDが豊富なイワシ・サケなどの魚類やキノコ類も一緒に摂取するようにします。