うたた寝の勧め


昼日中にパソコンを操作しながら、気が付くと、うたた寝をしていたことが何度かあります。

うたた寝は、悪いことのように思えますが、むしろお勧めの場合もあるようです。


うたた寝は作業効率を上げる

昼間、ちょっとうたた寝をすると午後からの作業効率がよくなる、それを裏付ける論文が発表されました。

一時間か、あるいはそれ以下の日中の睡眠は、欧米ではパワーナップ power naps(napはうたたうねの意味)と呼ばれ、集中力、生産性、気分、いずれにもよいことが知られています。

夜間の睡眠に関しては、とりわけ6時間以上の睡眠については、経験に基づいて学んだことを身につける上で重要なことは以前から科学的に証明されています。

では、日中の短時間のうたた寝、いわゆるpower napsの効果は科学的に証明できるのか、というのがこの論文のテーマです。

実験は、以下のような単純作業をしてもらい、その作業効率を調べ、昼のうたた寝の効果を検討しました。

一日に4回、午前9時、正午、午後4時、午後7時にコンピューター画面を使ったテストを行いました。

テストは、左下コーナーに現れた文字を確認しながら、ディスプレーの中心で作業を行うという視覚を酷使するような単純作業を行っています。

このような単純作業のテストで、正確さとスピードを検査しました。

10名ずつの3グループに分けて比較しています。

3グループとは、睡眠なし、午後2時に30分の睡眠をとる、午後2時に1時間の睡眠をとる、の3つです。

睡眠をとらないグループでは、2回目、3回目、4回目と回を重ねるごとに正確さが悪くなっていきました。

睡眠をとった2グループでは、睡眠をとったあとの3回目、4回目のテストの正確さが悪くはならないという現象が観察されました。

特に、1時間の睡眠をとったグループでは、睡眠をとった直後の3回目のテストの結果は1回目とほぼ同じ正確さでした。

このように午後の睡眠が仕事の効率を低下させないのに役立つことがわかりました。

また、休憩だけではどうかということも調べています。

つまり、眠らないが、アイマスクをして休憩するグループを作り(眠っていないことは脳波をとって確認しています)、比較していますが、やはりこのグループでは、午後の3回目、4回目のテストの正確さは悪くなっていきました。

面白いことに、結果がよくなったら現金のボーナスを出すという、”ごほうび”を用意しても3回目、4回目に元のレベルまで改善した人はいなかったということです。

IT社会となり、多くの作業がコンピューター上で行われるようになりました。

集中力を持続させるためにも、昼休みにひと眠りの時間をとることは大切なことかもしれません。


認知症を予防する

日本での調査によると、「昼寝をする人には、認知症が少ない」という事が、分かってきました。

具体的には、「1時間以内の昼寝をしている人」の方が、
認知症の発症が少ない、という事です。

ただし、「1時間以上」の昼寝をしてしまうと、
逆に認知症になりやすくなってしまうため、注意が必要です。


心筋梗塞のリスク低減

「南欧や南米では『シエスタ』と呼ばれる昼寝の習慣がありますが、20分以下のシエスタを行っている人はそうでない人に比べて心筋梗塞になるリスクが23%低下したという報告があります。


創造性を向上させる

また、ニューヨーク市立大学の神経科学者の研究によれば、
昼寝をすると、創造性を向上させる事ができるし、さらには、物事を大局的に見る目を養うことも出来るという事です。

ちなみに、これは「90分の昼寝」による成果ですが、
「12分くらいの短い昼寝」でも、効果があるという事です。


記憶力の向上

昼寝の最もよく知られた効果は記憶力の強化です。

ハーバード大学医学部の研究によると、昼寝(特に夢を見た場合)は記憶力と学習能力を高めるそうです。

さらに、昼寝が途中で妨げられた場合でも効果があるようです。

2008年の研究によると、わずか数分の睡眠でも、記憶作用が活性化することがわかったとのことです。


効果を最大限に引き出す方法

うたた寝の効果を最大限に
出し、メリットを活かす方法は下記の通りです。

1.仮眠時間は20分~30分未満

2. 体を横にして眠るほうが、体を安めることができますが、無理な場合は机に突っ伏す

3. 光を遮断すると、眠気促進ホルモンのメラトニンの分泌が促進されて、眠りの質が良くなります。

4. 音は無音もしくはホワイトノイズ(波、風、雨の音)を聞きながらが効果的です。

5. 仮眠前にカフェインを摂取すると、覚醒作用が、効きだす20分から30分後に目覚めることができます。


ジャーキング

これはうたた寝の効能ではありませんが、うたた寝をしていて突然ビクッとなる症状を「ジャーキング 」といいます。


ジャーキングは、自分の意思とは関係なく(無意識に)、体が勝手に動いてしまう現象です。

これは「不随意運動」と呼ばれるもので、あらゆる年齢層の誰にでも起こる生理現象の1つです。

人間だけでなく、犬や猫にも起こります。

ジャーキングのほとんどは1回だけに限りますが、ときには連続して起こることがあります。

ジャーキングによる筋肉の痙攣は短く、およそ0.25秒といわれています。

症状が起こったときに共通して体験するのは、突発的に体に電気が走ったように感覚や、どこか高いところから落下したような感じです。

フラッシュのような閃光を感じるという人もいるようです。

人間は、覚醒から睡眠に入るちょうど境目にいるとき、脳は休息を求めて緊張から解放されようとします。

そのわずかな時間は、脳が不安定な(混乱した)状態になりやすく、体に向けて「誤作動(誤った指令)」を出すことがあります。

ジャーキングは、混乱した脳が「筋肉を急激に収縮させる」というまちがった指令を出したことで、腕や足が痙攣のように動くのではないか、と考えられています。

ジャーキングは、疲れがひどく体にたまっている状態で、さらに体に負荷がかかる不自然な寝方を長時間したとき、例えば、椅子に座ったままで寝る、ソファに横たわり窮屈な体勢で寝る、などでは起こりやすいことが分かっています。

他には、眠りにつく直前に大きな物音を聞く、近くで話しかけられるなども、ジャーキングが起こりやすい状態にあるようです。

ジャーキングは、健康を害する現象ではありませんが、「ビクッ」という似たような症状があまりにも頻繁に起こるようなら、「周期性四肢運動障害(PLMD:Periodic Limb Movement Disorder)」など他の病気の疑いもあります。

周期性四肢運動障害は、睡眠中に足がピクピク動くなどの異常な動作が周期的に起こる睡眠障害の1つです。

ジャーキングの起こる回数が多く、他人から指摘される人、あるいは自分で気になる人は、なるべく早めに「心療内科」や「神経科」を受診することが勧められます。