レーザーで極超音速飛行を可能にする技術


「レーザーなどのエネルギー兵器を前方に照射し、極超音速飛行を可能にする」技術が開発されていると、兵器や乗り物に関するニュースサイトのThe Driveが解説しています。

1983年、NASAによる資金投入の下、エンジニアのレイク・マイラボ氏が率先して、レーザーを使って推進力を得る「ライトクラフト」の研究が行われました。

これは飛翔体の内部から前方にレーザービームを発射し、飛翔体の前方に衝撃波を生成することで、大気を押し出して空気抵抗を減らすというものです。

しかし、あまりにも急進的なコンセプトだったため、マイラボ氏の研究が本格的に兵器に転用されることはありませんでした。














1999年、マイラボ氏の研究に似た研究論文が発表されました。

これは、極超音速機のの先端から電気アーク、レーザー、あるいはマイクロ波を放射することでプラズマを形成し、推進力をアップさせるというものでした。


「指向性エネルギーによる極超音速兵器の実現」の研究はさらに続けられ、2005年にはDEAS(レーザー支援型指向性エネルギーエアスパイク)の実証実験が行われました。

以下の画像が、極超音速風洞で実際にテストしたところです。

半球型テストモデルの前方の空気が、レーザーでプラズマ化しています。

なお、DEASはニューヨークの連セラー効果大学とブラジルの研究者の共同研究で開発され、実験にはマイラボ氏も参加しています。


ここから、「指向性エネルギーで戦闘機やミサイルが受ける空気抵抗を下げる」というアイデアは、NASAやアメリカ軍で積極的に研究されるようになりました。

2019年には、超短パルスレーザーを使って戦闘機の周囲の空気をイオン化して過熱する「エネルギー堆積」という技術についての研究も始まりました。

もちろん、記事作成時点で明らかになっているのは公に発表されたものだけであり、特にエネルギー堆積については秘密裏に研究が行われていることは間違いありません。

The Driveは「『指向性エネルギー兵器』と『極超音速兵器』という最先端の技術研究の2つが融合して『エネルギー堆積』という技術になるにつれて、まったく新しい形の飛行機の設計ができるようになり、大気圏内での速度追求という点で新しいフロンティアが解き放たれるかもしれません」とコメントしています。

名古屋大学工学部 機械・航空工学科 の佐宗 章弘 教授はレーザーのエネルギーを飛行機の前方に集めて空気を温めると、抵抗が減ることが実験によってわかっていると述べています。

これは、飛行機の速度が高ければ高いほど効果があるそうです。

現在は運行停止になっていますが、かつてイギリスとフランスで共同開発した、「コンコルド」というマッハ2のスピードで飛ぶ旅客機がありました。


運行停止の理由の一つに燃費の悪さがありましたが、この研究が進めばそれも解決できるのではないかとのことでした。

名古屋大学く衝撃波・宇宙推進研究グループでは、繰返しレーザーパルスを用いて低密度場を生成して衝撃波と干渉させることで抵抗を低減し,超音速機の空力性能を向上させる研究を行っています。

マッハ数1.94の風洞内に直径20mmの円柱模型を設置することで,模型前方に弓状衝撃波を発生させ,衝撃波の上流側には繰返しレーザーパルスを用いて低密度バブルを生成さたところ、両者の干渉によって衝撃波の変形が見られ,定常状態における抵抗が20%低減したそうです。

レーザーを使用するには電気が必要ですが、飛行機はジェットエンジンで発電もしているため、その電力をレーザーに有効利用することができます。

レーザーの中でも、光ファイバーでレーザーの光を発振させる『ファイバーレーザー』というものが登場しており、2000年ごろと比べると格段に進歩しています。

5年後、10年後には飛行機に搭載可能なレーザーができるのではないかと考えられているそうです。