驚きの立体版シュレーダー階段図形

錯視映像トップ10を選出する「The Best Illusion of the Year」の2020年度の結果が発表されました。

1位の大賞を受賞したのは、日本の錯視研究の第一人者である杉原教授の立体版シュレーダー階段図形」です。

多くの錯視作品を公開していることで有名な杉原厚吉教授は、明治大学研究・知財戦略機構の研究特別教授です


2020 Finalists | Best Illusion of the Year Contest
http://illusionoftheyear.com/cat/top-10-finalists/2020/

杉原教授は過去にも優勝経験があり、上位入賞の常連です。

これで2010年、2013年、2018年に続き、4度目の優勝となります。

今回、大賞に輝いた杉浦教授の作品は、錯視の古典的例として150年以上前から知られる「シュレーダーの階段図形」を立体化した「見る角度によって上下が変わる」という不思議な階段です。



シュレーダーの階段は錯視の1つで、左上から右下へ続く階段の絵としても、それと同じ階段が逆さまになった絵としても同時に見える二次元の絵です。

知覚心理学における逆遠近の古典的な例と言われ、その名は1858年に発表したドイツの自然科学者Heinrich G. F. Schröderに因んでいます。


ムービーではシュレーダーの階段図形をぐるっとひっくり返す様子が映し出されています。

「階段を上下ひっくり返して、上下逆さまの階段に見えると思いきや、元の階段と同じものが見える」という図形の反転を味わうことができます。

シュレーダーの階段図形を立体化した杉浦厚吉教授の「立体版シュレーダー階段図形」は、最初「階段上側」に赤いコーンが置かれます。

しかし、グルッと180度回転させると、今度は「階段下側」に赤いコーンが置かれているように見えます。

この不思議な錯覚が生まれる理由は階段の形状と模様にあります。



ムービーの最後にネタが明かされています。

立体版シュレーダー階段図形は実際には階段ではなく、橋のような形状だったことがわかります。

階段のように見えていたのは、表面の模様が原因であることがわかります。

「立体版シュレーダー階段図形」は、立体の絵と実物の立体を混在させると絵の部分も立体として認識してしまう脳の働きを調べるために実験材料として作ったものということです。

杉原厚吉教授は数理工学、計算機科学を専門としており、一般的なグラフィックスの数学の他にも、だまし絵や錯視などのグラフィックスの数理による研究を多数発表しています。

杉原厚吉教授自身による「立体版シュレーダー階段図形」の作品解説は、以下のURLから読むことができます


さらに、自分で「立体版シュレーダー階段図形」を作れる(PDF)紙工作用展開図も公開されており、非営利目的であれば自由に利用することができます。

Kokichi Sugihara's Homepage (Japanese)
http://www.isc.meiji.ac.jp/~kokichis/contest/contest2020/contest2020j.html


2020年ベスト錯覚コンテスト優勝 「立体版シュレーダー階段図形」  Best Illusion of the Year Contest 2020 で立体錯視作品 「立体版シュレーダー階段図形」 が優勝を獲得しました。今回の作品は、立体の絵と本当の立体とを混在させると絵の部分も立体と見てしまう脳の振る舞いを調べる実験材料として作ったものです。シュレーダーの階段図形という150年以上前から知られている多義図形に手すりの立体を取り付けたものですが、元の図形とは違う多義性が生まれます。