世界の正月料理 Ⅰ
中国
大晦日に家族みんなで作って食べる餃子は水餃子が一般的です。
水餃子は中国語の発音で「交子(子を授かる)」と同じで、またその形が昔の貨幣の形と似ていることから縁起が良い食べ物とされています。
香港
香港でポピュラーなのは大根餅(蘿蔔[米羔]/ロウバゴウ)です。
ちなみにトックは餅を意味し、トッククは餅入りのスープのことです。
牛肉や鶏肉からだしをとったスープに、小判のような形に切った餅がたっぷり入っています。
小判型の餅は、カレトクと呼ばれる棒状の長い餅を切って作るのですが、このカレトクは長寿を表すといわれる縁起物です。
最近ではトックク用にあらかじめ切られた市販の餅も売られています。
ちなみに韓国の餅はうるち米を使っているので、日本の餅と比べてねばりが少ないのが特徴です。
韓国では数え年(※誕生日でなく年が明けると歳を加算)で年齢を数えるので、トッククを一杯食べると一つ年を取る」と言われています。
台湾
台湾ではお正月より大みそかに盛大なお祝いをします。
その時に食べるのが紅白湯圓(ホンパイタンユェン)です。
紅白の白玉が入っている紅白湯圓は、韓国のトッククと同じく「一杯食べると一つ年を取る」と言われています。
台湾では紅白湯圓(ホンパイタンユェン)のほかに、もち米のおかゆの「糯米甜粥(ヌォミィーティェンツォ)」、切らないで茹でた「長年菜(ツァンニェンツァイ)」を合わせた3種類を仏前にお供えしてから食べます。
シンガポール
シンガポールでも中国系の国民が多いことから旧正月である春節を盛大に祝います。
シンガポールで食べる正月料理と言えば魚生(ユーシュン)です。
サーモンなどの生魚、大根、ニンジン、レタスなどにソースやオイルを混ぜた海鮮サラダです。
その食べ方がたいへんにユニークです。
まず、食材を一品ずつ大皿に載せていきます。
そのとき、同時に「縁起のよい言葉」をかけるのがポイントです。
たとえばオイルを置くときは「萬事如意」(すべてが思い通りにいきますように)、ライムなら「大吉大利」(幸運が訪れ、繁盛しますように)といった具合です。
すべての食材を載せたあとは、テーブルを囲んでいる全員で、各自願いごとを口にしながら、かき混ぜます。
ロシア
ペリメニは水餃子と似ていて、牛肉や羊肉のひき肉などの具がもちもちした皮の中に入っています。
ロシアではペリメニを熱湯やスープで茹でて、浮き上がってきたらバターやサワークリームをまぶして食べます。
ペリメニの中にはコイン入りのものも混ざっていて、当たった人は一年幸せに過ごせる、と言われています。
アメリカ
アメリカでは地域や家庭でお正月に食べるものが違うため、アメリカ全土で食べられている正月料理はありません。
しかしアメリカ南部ではお正月に「ホッピン・ジョン」という炊き込みご飯のような料理を食べます。
これは、その昔、アフリカからアメリカに移送されてきた人々が受け継いできた料理です。
ホッピン・ジョンの中に入っている黒目豆はお金を象徴しており、食べると金運アップが望めます。
イタリア
イタリアで食べる正月料理は、上の写真の「Cotechino(コテキーノ)」と「Zampone(ザンポーネ)」というソーセージです。
豚は健康や繁栄を象徴しています。
レンズ豆には福を呼ぶものとされており、金運アップの意味も込められてます。
昔、貴重な豚を敵兵に奪われないように、腸や豚足に詰めて保存したのが料理の元だそうです。
ドイツ
パン好きな人が多いドイツでは、お正月もパンでお祝いをします。
パイ生地の中にアーモンドクリームが入ったガレット・デ・ロワの中にはフェーヴという陶製やプラスチックの人形が入っていて、取り分けたときにその人形が入っていた人は、この1年、王様、女王様になって幸せに暮らせるといわれています。
オランダ
オランダでは年末から年始にかけて揚げドーナツ「オリボーレン(オリボルン)」というげんこつ大の丸いドーナツを食べます。
オランダでは、大晦日には、その美味しさを競う大会が開催されたり、大きなお皿にたくさん盛り付けて食べながら年越しをしたりなど、新年を迎えるときに欠かせない伝統スイーツです。
自宅で作る人もいますが、街なかで買う人も多く、大晦日には長い列ができる屋台もあります。
プレーンのほかに、リンゴやレーズンなどのフルーツが入っているものもあり、粉砂糖をかけて食べます。
ギリシャ
ギリシャでは、お正月にヴァシロピタという、主にシンプルなパウンドケーキに粉砂糖やチョコレートでデコレーションがされた、大きなケーキを食べます。
中にはコインが入っています。
切り分けてもらったケーキの中に、コインが入っていたら、その一年間は幸運を受けることができるといわれています。
このケーキは、その昔、ギリシャに居た、ヴァシロスという、恵まれない子供たちにお菓子やプレゼントを配ったという聖人に由来しています。
スウェーデン
カルダモンを練り込んだパンにアーモンドペーストとたっぷりのクリームをサンドした、甘さの中にほどよいスパイシーさを感じられる伝統スイーツで、主にクリスマス明けからイースターまでの期間に食べられています。
スペインやポルトガル
スペインでは午前0時の鐘とともに12粒のブドウを食べます。12回鐘が鳴る間に12粒食べ終われば願いがかなえられるといわれています。
ブドウはあらかじめ皮をむいておきます。
面倒ならスーパーでこの時期売られる年越し用ブドウの缶詰(あらかじめ皮がむいてあり、12粒入りなので便利)を利用するのも手です。
ただ、実際には鐘の音も結構早く、慣れない人にとっては12粒しっかり食べきるのはかなり難しいようです。
マドリッドの広場、プエルタ・デル・ソルの様子はテレビで放映されるので、ホテルで楽しむのも可能です。
ポルトガルではブドウではなく干しブドウを12粒食べます。
実はこの年越しブドウは、メキシコでもおこなわれている習慣です。