和田竜の「村上海賊の娘」を読んで


和田竜の「村上海賊の娘」を読み終わりました。

本書は、上巻474パージ、下巻499ページとかなりの長編でした。 

本作品は2014年本屋大賞受賞、吉川英治文学新人賞受賞の作品で、一度読み始めると、ぐいぐい引き込まれる小説です。

時代は織田信長が西に勢力を伸ばし始めていた頃の戦国時代です。

信長の策で兵糧攻めの危機にあった本願寺は、海路での兵糧入れ支援を毛利家に願い出ます。

毛利家は兵糧入れを確実にするために、村上海賊の当主である村上武吉を説得しようとします。

村上武吉は、毛利家直臣の児玉就英への娘の景の輿入れを条件として、毛利家につくことを受諾します。

第一次木津川合戦の前後の織田軍と本願寺一向宗との陸戦、織田方の泉州侍と村上海賊を中心とした毛利方の海戦がクライマックスです。

これらの陸戦、開戦を舞台に、壮大なストーリーが描かれています。

村上海賊とは、村上武吉が当主の、戦国最強の海賊と言われた水軍のことです。

主人公である景(きょう)は、海賊働きに明け暮れる破天荒で荒々しい気性の持ち主として描かれています。

作品では景は、当時の京人形的美人の基準からすると醜女とされています。

しかし、180㎝の身長と痩せて手足が長く、首の細い、鼻高く目の大きいはっきりした容貌で、まるで南蛮人のような見目麗しい姿であると、景が本願寺方の砦に兵糧とともに送り届けた一向宗の老人である源爺が語っています。 

現代の美的基準からすれば、モデルのような容姿で想像力がかき立てられます。

作中では迫力ある戦と、次々と登場する個性的な武人達の生死をかけた戦いぶりが描かれ、戦国時代を舞台とした小説ならではです。

上巻の後半から下巻前半にかけて、鈴木孫市が率いる雑賀党の鉄砲集団を中心とした本願寺一向宗と泉州侍を中心にした織田軍の衝突が描かれています。

下巻では、難波海での海賊船団どうしの激しいぶつかり合いから始まり、互いの船へ乗っ取りをかけて、敵味方入り乱れての半日に渡るすさまじい戦いぶりが圧巻です。