アニメ短編映画「老人と海(The Old Man and the Sea)」


「老人と海(The Old Man and the Sea)」は、アーネスト・ヘミングウェイの小説を原作とした
アレクサンドル・ペトロフ監督によるアニメーション映画です。

ガラス板に描かれた画を使ったIMAXシアター作品で、29,000枚ものガラス板に絵を描いて重ねた、迫力の映像が繰り広げられます。

老人の声を俳優の三國連太郎が演じたことでも話題になりました。

最初は少し観にくいと感じますが、画像に馴れるとむしろこの作品に相応しい表現方法であると感じるようになります。

特に色調が美しく、正に動く絵画といってよい作品です。

淡い画調が醸す独自の詩情とダイナミックな動きの共存がアニメならではの魅力に満ちた秀作です。

本作品はロシア、日本、カナダの合作による短編アニメですが、完成まで4年の歳月を要しています。

第72回アカデミー賞 (1999年)アカデミー短編アニメ賞を受賞しました。

また、英国アカデミー賞(BAFTA)短編アニメ賞も受賞しています。

上映時間は20分の作品ですが、海を描いた映像がこの制作方法でしか実現できない美しいものとなっています。


あらすじ

老人サンチャゴは、漁師です。

物語の最初の場面で、老人は、むかし船員だった若い頃にアフリカで見た象やライオンの群れの夢をみています。

少年が食事を運んできて、老人を起こします。

少年は、老人にまた一緒に海へ出ようと言います。

以前老人は少年と2人で漁をしていましたが、84日間にわたり不漁が続き、少年は父親から、別の船に乗ることを命じられたのでした。

翌日まだ暗い内に、少年に見送られて、老人はたった一人で小さな帆かけ舟を出し沖へ向かいます。

そしてこれまでにない遠くまで沖へ出ると、老人の針に、巨大なカジキが食いつきます。

老人は魚のかかった糸を素手であやつり、獲物が弱るのを忍耐強く待ちます。

そして、かつて力自慢の黒人と演じた一晩がかりの腕相撲勝負に勝ってしばらくの間チャンピオンと呼ばれたことなど、過ぎた昔のことをとりとめもなく思い出します。

海の上で一人闘いながら、老人はこの大魚に語りかけ、いつしか兄弟分のような親愛感さえ抱き、一緒に海の中を泳いでいるように感じます。

3日にわたる孤独な死闘ののち、老人はカジキを引き寄せ銛の一突きで仕留めます。

しかし、獲物が大きすぎて舟に引き上げられず、横に縛りつけて港へ戻ることにします。

ところが、傷ついた魚から流れる血の臭いに引き寄せられて、老人の舟はサメの群れに追跡されます。

舟に結びつけたカジキを執拗に襲い、肉を食いちぎるサメの群れと、老人は必死に闘います。

しかしサメがカジキに食いつき、老人がサメを突き殺すたび、新しく流れだす血がより多くのサメを惹きつけ、カジキの体は次第に喰いちぎられていきます。

ようやく漁港にたどりついたとき、仕留めたカジキは鮫に食い尽くされ、巨大な骨だけになっていました。

港に帰ってきた老人の舟と、横の巨大なカジキの残骸を大勢の人々が驚き見ています。

少年が、老人の粗末な小屋に走ってやってきたとき、老人はベッドにぐったりとして眠っていました。