トルクレンチは1本持っていると便利だが、使用範囲が決まっているので注意

車を修理することがありますが、ボルトはいつも適当に締めています。

しかし、実際は締め付けの適正値が決まっていて、特に相手がアルミであったりすると締めすぎてネジをダメにしてしまう恐れがあります。

自動車やバイク、ロードバイクの整備ではネジ締めはとくに繊細で、強く締めすぎるとネジが割れる・潰れる、緩すぎても部品が外れるなどのトラブルが起きるため、正確な力加減で締めなければなりません。



種類

トルクレンチの種類にはプリセット型、デジタル型、直読型があります。

それら以外に外付け型がありますが、かなり高価になります。


プリセット型

一般的にトルクレンチと言うと、この形をイメージする場合が多いようです。

「pre(前)」+「set(合わせる)」の名前の通り、トルクの測定前に、あらかじめ締め付けたいトルクの値を設定します。

この場合、グリップ部分を回転させてセットするものが多いです。

締めつける力がセットしたトルク値に達すると、軽いショックとクリック音(カチッという音)で分かります。


作業ごとにトルク値の設定を変更する手間はあるものの、ホイールナットやフレアナットなど、幅広い整備ができます。

初心者からプロの整備に至るまで、幅広く使用されています。

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デジタル型

使用前にあらかじめセットする点ではプリセット型と同様ですが、その設定方法はトルクレンチ本体に取り付けられたインジケータで行います。

インジケータには設定するトルク値がデジタル表示され、ボタンでトルク値を設定します。

液晶画面にデジタル表示でトルク値を表示するタイプです。

今どのくらいのトルクがかかっているかを見ながら作業できるので、直観的に使用することができます。
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測定の際、設定したトルク値に達するとピーというビープ音を発すことで設定値に達したことを知らせてくれます。

モデルによっては、設定値に近づいた段階からピッピッと断続的に音を発し、作業者に対しあらかじめ教えてくれるものもあります。

デジタルのため商品によっては測定データを記録したり、スマホやタブレット、PCと連動して確認するタイプもあります。

工具というより精密機器としてメンテナンスなどをおこなう必要があるのと、値段が高価になりますが、初心者から上級者まで幅広く使用することができます。


直読型

直読型の名の通り、本体にアナログゲージやトルク値の刻印されたプレートが設置されているモデルが主に挙げられます。
測定時には、ゲージやプレートの針が指す数値を読み取って使用します。

また、比較的高トルクの測定が可能なモデルが多いのも特徴のひとつです。

プレート型はメモリと針でトルク値を表示させるタイプになります。

トルク値を検査するだけ用によく用いられます。摩耗部品も少ないため寿命年数は長いです。

目盛りがついているため、トルク値の調整範囲の中であれば、様々な作業・整備で使用でき、使い勝手がいいです。

しかし、トルク値の読み取り方に慣れが必要なのと、逐一トルク値を確認しなければいけないため、手間が掛かります。

初心者というより、中級〜上級者向けの工具です。
ダイヤル型のトルクレンチは、持ち手部分などに現在のトルク値が分かるダイヤルが付いているタイプです。

使い方は、通常通りレンチを回すと、手元のダイヤルがトルク値を示し、指定のトルク値になるまで締め続けます。

現在のトルク値を表示してくれるため、どちらかというと、締め付け過ぎていないか、緩過ぎないかを確認するといった検査で使用されることが多いです。

初心者には不向きで、複数本のトルクレンチを組み合わせて整備を行う、中級者や上級者、プロの方に向いている工具です。

デジタル型、プレセット型のように、設定トルクに達した際のお知らせ機能はありません。


外付け型
販売価格:¥10,626(税込)

ハンドルとソケットの間に取り付けるだけで、簡単にデジタル型トルクレンチとしてトルク測定ができます。

左右両回転に対応し、2種類の測定モードを切替可能です。

目標トルクに近づくと、ブザー音(断続)でお知らせするオーバートルク防止機能を搭載しています。

目標トルクの50%〜95%の範囲でブザー開始を設定可能です。
販売価格:¥19,000(税込)


上記KTC トルクレンチも、手持ちの工具に装着するだけでデジタルトルクレンチとして使えます。

工具や人を選ばず、簡単・正確にトルク測定ができます。

スマートフォンやタブレットなどに専用アプリをインストールすれば測定値の結果表示や測定履歴を残せます。


車に使うトルクレンチ

タイヤのホイールナットは、車種にもよりますが、普通車や軽自動車であれば100Nm前後が規定トルクとなります。

規定トルクはサービスマニュアルなどに記載があります。

100Nmは意外と力が必要ですので、比較的長さがあり力が掛けやすい、1/2DRのトルクレンチが最適です。

スパークプラグなどの締め付けは、10~20Nmのものが多いようです。

エンジンオイルを排出するためのドレンボルトは、概ね30~40Nmであることがもっぱらです。

アルミ製のドレンボルトの場合にはそれよりもやや低い20~30Nmに設定されているようです。

フタなどの締め付けに使われているボルトは15Nm以内がほとんどです。

測定範囲

プリセット型トルクレンチの測定範囲のうち、下限値と上限値の近辺では精度が少し落ちるため、余裕を持った測定範囲を選択することが推奨されます。

締付けたい箇所の指定トルクが、最大トルクの70~80%になるようなトルクレンチを選びます。

例えば40N.mのみの締付けを行いたい場合は、トルク調整範囲の最大値が50N.m程度のトルクレンチを選びます。


差込角

ソケット式のトルクレンチには「差込角」という規格があります。

これはトルクレンチとソケットをつなぐ接合部の規格で、6.3/9.5/12.7/19.0/25.4sq.のように表記されています。

単位のsq.は「square」の略で、たとえば6.3sq.の場合、四角の二面幅が6.3mm(1/4インチ)になります。

差込角の数値が大きいほど剛性が高まるため、より高い締め付けトルクに対応可能です。

差込角が異なるソケットをつなげられる変換アダプタも販売されていますが、その際の限界値は低い差込角のものとなるので要注意です。


緩め作業は不可

トルクレンチは、締め付けトルクを確認するための工具です。

大きな形状の上、ラチェット機構が備わっているので、ついつい緩め作業にも使ってしまいそうになりますが、測定性能に狂いが生じる可能性もありますので、緩め作業には使用しない方が良いです。


二度締め禁止

プリセット型ではカチッという音、デジタル型ではビープ音がすれば「規定トルクに到達」したことになります。

ここからさらに締め付けてしまうと、規定トルクを超過してしまうことになります。


保管時

使用後に、トルク値を使用した設定のままで保管するのもNGです。

内部のバネが本来の性能を出せなくなる事があり、測定トルクが狂ってしまいます。