自己導尿で出血がみられた場合、どのようなことが考えられるか


尿道損傷

自己導尿で出血がみられた場合は、尿道損傷が疑われます。

レントゲン撮影室で外尿道口(尿が出る出口)から造影剤を注入し、尿道を造影します。

尿道が損傷されていない場合は、尿道がきれいな曲線に造影され、膀胱まで造影剤が到達します。

しかし、尿道損傷がみられる場合は、損傷部位から造影剤が尿道外に漏れるため、尿道外に溜まりのように造影されます。

尿道損傷がみられた場合は、以下の3パターンに重症度別に分類されます。

尿道挫傷:尿道造影で造影剤の漏れがみられない(正常だが)が,症状や経過から尿道損傷が示唆されるもの

部分断裂:尿道造影で造影剤の漏れがみられるが、造影剤が膀胱まで達している場合(尿道に損傷はあるが、膀胱まで繋がっており造影剤は流れている)

完全断裂:尿道造影で造影剤の漏れがみられ,膀胱が造影されない場合(尿道が完全に断裂しており、膀胱と繋がっておらず膀胱まで造影剤が流れない)

重症度により、治療方針は異なります。

尿道挫傷:
尿道カテーテルという管を入れて留置した後に抜去します。これは管を置いておくことにより尿道が自然とくっつくことを期待した治療法です。

部分断裂:レントゲン室でリアルタイムでの撮影(透視)を行いながら、造影されている尿道に沿って慎重に尿道カテーテルを挿入・留置し、抜去します。これが困難な場合は、一時的に膀胱瘻(下腹部の皮膚から膀胱に管を入れること)を作り、待機的治療を行います。

完全断裂:一時的に膀胱瘻を作り、待機的治療を行います。

待機的治療とは、尿道と尿道を繋ぐ手術や、繋ぐ部分の間が長い場合は血管を足などから取ります。そして、血管を尿道と尿道の間に置いて繋ぐ手術を行います。

また、損傷により尿道が狭くなった場合は、尿道からカメラを入れ、狭窄部位を切開することや、バルーンで拡張する手術もあります。

導尿後にカテーテル内やカテーテル先端に血液が付着している場合は、カテーテルが尿道部分を刺激して出血したものと考えられます。

尿道口からの流血が続く場合は、偽尿道の可能性があるので専門医の受診が必要です。

カテーテルから排出された尿がすべて血尿の場合は、膀胱または腎臓に悪性の疾患があることも考えられるので、専門医の受診が必要です。

溢流性尿失禁

溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)で、尿が膀胱内に持続的に貯留していることから尿路感染症を起こしやすく、発熱、血尿が出ることがあります。

尿路結石

尿路結石には尿管結石、腎臓結石、膀胱結石があります。

全ての結石で血尿が起こりえます。

それは結石が尿管、腎臓、膀胱の上皮と接触することで上皮が傷つき出血するのです。

尿管結石は血尿と同時に激しい腹痛や腰痛も引き起こします。

腎臓結石は痛みは伴いません。

膀胱結石は残尿感や頻尿などの膀胱刺激症状を伴います。

原因として最も多いのは、強いわき腹の痛みを伴う尿路結石です。

これは、腎臓、尿管、膀胱など尿の通り道に小さな石が形成されることで起こります。

肉類などの動物性脂肪を取り過ぎたり、アルコールを飲み過ぎたりすると結石ができやすくなります。

尿管は細いため、結石が尿管内で尿の流れを妨げたり粘膜を傷つけたりすると、痛みや「血尿」の症状が出ます。

膀胱炎

トイレに行った後も残尿感を伴う時は、膀胱炎などの尿路感染症が疑われます。

体の抵抗力が落ちた時に膀胱に細菌が繁殖する急性膀胱炎は、尿に血が混じる「血尿」が見られることもあります。

熱は出ても微熱程度で、高熱になることはありません。

膀胱の中の表面は、柔らかい粘膜でできています。

膀胱炎になるとその内側の粘膜が炎症を起こし、ひどい場合は出血することがあります。

膀胱腫瘍

血尿を生じる癌は、膀胱癌、尿管癌、腎盂癌、前立腺癌が挙げられます。

この癌の中で最も多く血尿の原因となる癌は膀胱癌です。

膀胱癌は基本的に血尿のみの症状で痛みや発熱は伴いません。

尿管癌、腎盂癌も血尿の原因となりますが頻度は高くありません。

膀胱腫瘍のほとんどは悪性腫瘍、つまり膀胱がんです。

男性に多く、60〜70歳が発症のピークです。

膀胱がんの原因の1つとして喫煙が知られており、膀胱がんの7〜8割は、膀胱の内側表面にとどまる悪性度の低い膀胱が んです。

膀胱がんの最初の症状としては、目で見て分かる血尿が一番多く、血尿が持続するのではなく、しばらくすると止まることもあります。

痛みを伴わないため放置しがちですが、血尿を見たら医師に相談することが大切です

喫煙者で肉眼的血尿がある場合には、膀胱癌などの疑いがありますので、尿のなかに癌細胞が混じってないか尿細胞診という検査を行います。

また、痛みの少ないやわらかい電子スコープ(軟性膀胱鏡)を用いて膀胱の中を観察したりします。

今日の軟性膀胱鏡は従来の硬性膀胱鏡と違って検査時の痛みがほとんど無くなったので安心して検査を受けられます。

検査時間も短く、1-2分で終わります。

腎盂・尿管腫瘍

腎臓でつくられた尿は腎盂(じんう)、尿管を通って膀胱にためられます。

この尿路にできるがんを腎盂・尿管がんといいます。

原因としては、喫煙、化学物質、家族歴があるといわれており、男性に多い傾向があります。

最も多いのは、目で見て分かる血尿です。

尿の通り道がふさがることにより、腎臓に尿がたまってしまい、腰や背中、わき腹に痛みが起きることもあります。

また、検診で腎臓が腫れていることから、無症状のまま発見されることもあります。

基本的には外科的治療で腎臓と尿管を一塊にして摘出します。

尿管癌の場合も部分切除だと再発率が高いと言われているため、標準的治療は腎盂尿管を一塊にして摘出します。

手術後も腎臓は片側だけとなりますが腎臓機能は保たれ普通に生活することは可能です。

前立腺がん

男性のみにある前立腺にできるがんが前立腺がんです。

もともと欧米に多い病気ですが、日本でも患者数は増加しており、社会の高齢化や、食生活の欧米化により高タンパク、高脂肪の食事が増えたことがその一因と考えられます。

病気が進行すると、尿が出にくい、排尿時の痛み、夜間におしっこの回数が多いなどの症状がみられることがあります。

初期の特徴的な症状はほとんどありませんが、PSA検査という血液を採取する検査が普及し、早期のがんが発見されるようになりました。